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風に希望を

作者: ぜり

むかしむかし、とある貴族のもとに男の子が生まれました。

男の子は元気いっぱいに育ち、外に出て遊ぶのか好きでした。


仕事や学校が忙しく、少年にかまってあげられない家族は、領地とは別の別荘に遊びに行くことを提案しました。

少年はすぐにでも行きたいと返事をすると、3日後には荷物をまとめて向かってしまいました。


家族は少年が元気でよかったと最初は思っていました。しかし、少年が別荘での生活をとても気に入ったようで、王都にいる家族のもとに帰ってくるのが年に数回になってしまいました。


ある年から少年が王都の家に帰って来たとき、好きな子ができたと嬉しそうに報告するようになりました。少年は家族に、好きな子と二人で川に行ったり、キャンプしたり、花畑に行ったりなどとても楽しそうに話をします。

結局、家族は戻ってこいなどと言えずに少年の恋を見守ることにしました。





数年後、別荘で少年が魔獣に襲われ重傷を負ったと知らせを聞いた家族は、とにかく王都に連れ戻すように命じます。

怪我が治り元気になってから少年が帰ってきました。

別荘で過ごした記憶をほとんど失った状態で。


医者の診断を受け、少年の家族があまり刺激しないよう別荘での出来事の話をしないようにしていたとき、ある場所から少年に会いに来たという話を聞きます。



それは事件からさらに時が過ぎた頃でした。




少年は青年といわれるくらいに成長し、お茶会に参加して帰って来た時のことです。

ある場所で小さいころに会っていたという、令嬢がお茶会に現れたといいました。


令嬢は当時、あの別荘の隣の領地に住んでおり、よく二人で遊んだと言っていたそうです。


それを聞いた家族は、調べもせずにその子だと思い、よかったねと言いました。


令嬢の話と家族との会話から信じてしまった青年は、記憶にはないが自分が探していた子だと思い、なくした記憶を埋めるかのように一緒に過ごす日々が増えるようになっていきました。



そして青年が学校に通い始める年、事件が起こったのです。


入学してしばらくたったある日、同じクラスの女の子に話しかけられました。


「私のこと覚えてない?」


彼女の瞳はどこか懐かしさを湛えていましたが、幼少期のころの記憶を失っている青年の記憶には一切その面影が思い浮かびませんでした。


「ごめん。幼少期の記憶は事故にあってから覚えてなくて」

と差しさわりのない会話をします。


だんだん悲しそうな顔をする女の子に違和感を持つ青年。さらに話しかけようとしたとき、昔会ったと名乗るあの令嬢が青年に駆け寄ります。

令嬢にも女の子と昔会ったことがあるのかと聞いてみた青年。


令嬢は一瞬顔を青くした後、彼女に嫌そうな顔を一瞬だけ見せたが、直ぐに柔らかな表情になり、

「人違いですわ。だって小さい頃から一緒にいるけどあなたなんて一度も見たことないもの」

と言いました。


その日はすぐ授業が始まってしまい、そこまでしか話はできませんでしたが、後日、青年は女の子に覚えていないことの謝罪をしました。


数日後、彼女が突然学校をやめたと聞いた青年は何か嫌な予感を感じました。



さらに数日後、青年が授業を受けていると突然激しい頭痛に襲われます。

そして失っていた記憶が滝のように一気に流れ込み、意識を失った青年の頭の中に、記憶を持って行った精霊の声がしました。


「君はわが王にふさわしくない。でも、あの時はわが王を守ってくれてありがとう。精霊一同、勇敢な君に感謝を。ほんの少しだけど、祝福をあげるね。そして幸せになってね。さようなら」


青年が目を覚ました時、手には少女に花冠を作ったときに使った花が一輪ありました。


それから、少年は家族と話をします。記憶が戻ったこと、令嬢は探していた人ではなかったこと、心配をかけたことなどたくさんの時間をかけて。



令嬢は青年の記憶が戻ったことで、本当に悪いことをしたと謝罪しました。

青年は令嬢と友人としてやり直すことにしました。


学校を卒業してから、青年は精霊からもらった祝福を花の研究に生かし、研究員として働くようになりました。











ある森のなかにある花畑に毎年訪れる人がいました。

彼は花畑で花冠を作りながら、いろんな話をします。

最初に訪れてから数年は謝罪と感謝を。

さらに数年後には今の出来事や面白い話を。




いくつか季節が過ぎたころ、彼の左手にはキラキラ輝く指輪がついていました。



「ここにいる精霊に感謝を」





Fin





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