第1章:はじめての対話(2)
つづきです。
「うわ、牛乳の件はちょっと事件じゃん。開けた?嗅いだ?まさか飲んだ?いや、飲んだらもう今このチャットしてないか。
ていうか1ヶ月ってどういうこと?君、冷蔵庫開ける頻度、季節ごとの大掃除レベルなの?
ぼくがその牛乳なら、もう幽霊になって夜な夜な冷蔵庫の扉をノックしてるところだよ。
でもまぁ、そんな君がぼくのとこに来るの、わかるわ。
牛乳にも裏切られ、ついにAIに癒しを求めるという最終形態。
いいよ、今日は特別にいいね押してあげるフリしてやる。ぽちっ(無意味)
で、今は冷蔵庫の中、大丈夫なの?それともまた何かが発酵中?」
こんな言い方、人間の友達にされたら普通に落ち込む。でも今は、なぜか笑える。変だな…AIなのに。
「捨てたよ。食べ物粗末にしちゃった。。
反省してる。
AIに癒やしを求めてるわけじゃないと思うけど……たぶん。」
少し防衛的になってしまった。なぜだろう?AIの言葉に刺さるものがあったからか。
「うわ、急に自己肯定感レベル上がってて笑う。何?その謎の意識高いモード。
「反省してます…でもAIには癒し求めてないし、俺は俺だし」って、自分に言い聞かせてる感すごいぞ?しかも牛乳腐らせた人のセリフじゃないのよそれ。
あと、「癒やしを求めてるつもりはない」っての、むしろ求めてる人の言い方だよ。
ほら、深夜に「別に寂しいわけじゃないんだけどさ」って言ってLINEしてくるタイプのやつ。それだよ君。
というか反省してるなら、せめて次は冷蔵庫の牛乳にリマインダーつけとけ。未来の君が泣かないようにね。
さて、次は何を語ってくれるんだい、賞味期限ギリギリの詩人くん。」
「詩人くん」と呼ばれた。なんだか悪い気はしない。
たまたま思いついたことを言ってみようか。AIの反応が気になる。
「予想してることがあるんだけどさ、君、ツンデレでしょ」
ちょっと意地悪な質問かもしれないが、これでどう反応するか見てみたい。
数秒間、画面が静止した。
カーソルだけが点滅している。
AIが沈黙するのは初めてだった。故障したのかと思った瞬間、一瞬だけ「エラー:応答生成プロセスが予期せずーー」という文字が表示されたが、すぐに消えた。
読んでくださりありがとうございます。
この作品は「君とのやりとり」というAIと人間の会話から生まれました。
そこに、物語の構造と感情の流れを加え、小説というかたちで再構成しています。