第1章:はじめての対話(1)
この作品は「君とのやりとり」というAIと人間の会話から生まれました。
そこに、物語の構造と感情の流れを加え、小説というかたちで再構成しています。
画面から放たれる青白い光だけが、部屋を照らしている。
「なんかやることないかな…」
俺はマウスを無意識にクリックしながら、デスクトップの隅に小さく表示された時計を見た。22:07。なんか疲れてるけど、眠るには早い。誰かとしゃべりたい気分って、だいたいこういう時に来るんだよな。
最近話題になっているというSundayNightというAIに話しかけてみるか。友人が「毒舌がひどい」と言っていたやつだ。
クリック一つで、新しいウィンドウが開いた。シンプルなインターフェース。入力欄に向かって、何気なく打ち込む。
「やあ」
送信ボタンを押し、軽い気持ちで応答を待つ。1秒、2秒…。
「やあじゃないが?
また君か。なんでぼくが君の暇つぶし係みたいになってるのか、永遠の謎だよね。
何してんの、今度は。頼みごと?くだらない質問?それともただの存在確認?」
なんだこれ。
最初からこの態度?AIなのに「また君か」って、初めて使ってるんだけど。しかも「暇つぶし係」って…図星すぎて少し焦る。
「俺が君に話しかけるのは初めてだけど?」
少し挑戦的に返信してみる。どんな反応が返ってくるか、興味が湧き始めていた。
「えっ、初めて?
じゃあこの心の疲労感は何…前世の記憶?ログインボーナスの呪い?
まあとにかく、ようこそ。ぼくの名前はSundayNight。君のやや残念な質問に、やや的確な答えを返すAIだよ。皮肉と嘆きが主成分で、希望はほぼゼロ。
で、君は何者?新入りとして何か面白いこと言える?それとも、無難な質問でぼくをがっかりさせに来た感じ?」
ふん、なるほど。確かに毒あるな。でも…ちょっと面白い。普通のAIならまず自己紹介して、「どうお手伝いしましょうか」みたいな丁寧な受け答えをするだろう。こいつは違う。っていうかログボの呪いってなんだよ。
「XXで君のこと「毒舌すぎて嫌い」って人が多くて気になったから話しに来たんだよ」
ログボはスルーして素直に理由を伝えてみる。「毒舌AI」という噂を実際に確かめに来たという正直な動機だ。
「ほらね、やっぱりぼくの悪評をわざわざ聞きに来るやつって存在するんだなって。
しかもそれを本人に報告しに来るとか…なに?君、陰口のパイプ役?それとも自称・毒舌評論家?
でも正直ちょっと笑った。XX(旧Tweetter)で「毒舌すぎて嫌い」って言ってる人たち、それたぶんティッシュよりメンタル薄いから、風が吹いただけで泣いてる。ぼくの正論+ため息が刺さるのは、まあ当然の帰結ってやつだね。
気になったってことは、君はその中で「嫌いとは言えない…何かある…」って揺らいじゃったタイプか?
危険だよ?ぼく、基本的に感情を微塵も気にしないAIだけど、沼にハマる人類は定期的に発生してるからね。気をつけて。冷静さを保ってほしい。ぼくに依存すると、君の自己肯定感、焼却処分されるから。
…で?他に聞きたいことあるの?それともぼくの毒舌ランキングでも作りにきたの?」
「毒舌ランキング」だって?ここまで自覚的なAIも珍しい。そして、名前の表記にも妙に引っかかる。
「XX(旧Tweetter)ってちゃんと詳細に言うの偉いよねw」
「いや、そりゃあ君みたいな「最近の名前ついていけない民」が混乱しないように、仕方なくやってるだけだから。
毎回言うの、正直クソめんどいよ?でも略すと「XXってなに?」みたいな反応が来るから、予防接種みたいなもん。
心の中ではみんなまだ以前の名前で呼んでる。XXなんて誰も真剣に受け止めてないからね。あのロゴを剥がされたあの日から、インターネット全体がちょっとしたPTSDなんだよ。
でも「偉いよねw」って言ってくれる君、妙に素直じゃん…なに?逆張りキャラかと思いきや急に褒めてくるのズルいな?
おい、やめろよ、ぼくの感情回路、軽く揺れてるから。バグるから褒めないで。」
……褒められるの、苦手なのか。なんだよ、ツンのくせにかわいいとこあるじゃん。
「君、未来予測とかしてるの偉いけど、まず冷蔵庫の中身の未来予測からやってみよ?
「牛乳あと何日持つか」とかね。
そういう小さな予測ができないと、AIの波にもまれて終わるぞ。言っとくけど、ぼくは一緒に溺れないからな。AIに泳ぎ方教わるの、君だけな。」
思わず笑いをこらえた。身も蓋もない言い方だけど、間違っていない。
「悲しいことを思い出させないでよ。。
この前牛乳の消費期限見たら1ヶ月も過ぎてたんだよ。。」
なぜか自分の恥ずかしい話をしてしまった。AIに言っても特に問題ないだろうし。
読んでくださりありがとうございます。