必要な物
成功する上で最も必要なものは何か?運?才能?努力?どれも多少は必要だとは感じる。ただし一番必要なもの、それは才能を活かす適性だ。
現在、扇大工はいつにも増して強く答えられる。
高校時代は投げては160km、走れば50m5.8秒の俊足、守ればプロと遜色ない技術。さらにはチーム最強、いや全国五本指には余裕で入るレベルの打撃力を持ち、プロ注目の高校球児だった。
高校卒業後は直接アメリカに渡りトップリーグベース(ML○みたいな物)を夢見て野球に取り組む。
しかし、工の想像を絶するほどの困難が待ち構えていた。
1シーズン目、投手と野手両方に取り組むも3ヶ月経たずに肘の違和感で投手休業。さらに走塁中に膝に激痛が走り、精密検査の結果肘と膝の靭帯がプッチンフ○リン(断裂)していたため即手術を受けることになりシーズン終了。
2シーズン目はリハビリによりシーズン全休。
3シーズン目、投手一本で身体のケア、体重管理を徹底したおかげか肉離れやハムストリングの負傷など小さい離脱はありつつも1シーズン完走。
4シーズン目、トップリーグキャンプに呼ばれ、好成績を残すも登録枠の影響で昇格できずに5月を迎える。5月の中旬、トップチームで怪我人が出た影響で「トップ昇格あるかも?」と言われていたところでまたもや肘の靱帯断裂でシーズン終了。
5シーズン目も手術のリハビリで全休。
6シーズン目、セカンドチーム(2軍)で好成績を残すも7月上旬に椎間板ヘルニアを発症、更に肩関節唇も併せて負傷し、戦力外通告。
このまま扇大工は不本意な形でトップチームに昇格することなく現役を引退した。
24歳の夏、日本へ帰国しようと肩、肘、腰、膝の痛みに顔を顰めがら空港を目指して歩いていると
「バーーーン」
と爆音が頭の内から鳴り響く。
音の認識と同時か若干遅れた位で工の視界が真っ暗に染まる。
数秒ほど経ったも爆音は鳴り止まない。爆音に負けず劣らず、おそらく周りの人達の声であろうものが頭の中に流れる。
凄まじい眠気が襲って来た。
おそらく戦力外通告を受けてからまともに熟睡できなかったせいだろう。
(眠たいから静かにしてくれ...)
などと思いながら工は眠気のままに寝る。
―――――――――――――――――――――
「いつまで寝てんですか〜〜〜?神聖なこの女神様の前で〜〜〜。失礼ですよ〜〜〜!」
飄々とした女性の声で起きる。
そこにはに黄金色に輝く髪に神聖そうな服に身を包まれた美しい女性が座っている。
自分はというと境目があるかないか分からない黒っぽい場所に寝ている。
「あっ!やっと起きた。じゃあ話するよ。」
軽くこれまでのことの説明を受け、俺は女神に質問する。
「そうするに俺は、銃撃戦に巻き込まれて死んだ。だけど(いちいち少し苛立たせるような言い方の)女神様が言うには気まぐれで運良く転生させてあげても良い。とのことだな。」
「そ〜そ〜。そこで転生するときに何が欲しい?可能な範囲ならあげられるから〜。せいぜいよ〜〜〜く考えることね。ちなみに転生先の世界なんだけど…」
(リハビリ期間中暇だからラノベとか読んでたんだよね。もし何か貰えるとしたらアメリカに来て怪我してから決まってる)
俺は女神の話に食い気味で答えるように
「転生特典は絶対に故障しない身体が欲しい!」
「・・・」
「・・・」
時間的には数秒間だが、体感数分の静寂に2人は包まれる。
この静寂を打ち破ったのは女神だった。
女神は拍子抜けしたような顔で
「そんなので本当にいいの?後悔はしない?じゃあそうするからね?」
などと女神の(ありがた〜〜〜い?)言葉お構いなしに俺は
「故障しない最強の身体さえあれば他の能力なんか要らない!折角の2回目の人生!楽しんでやるぜ!」
と言い切ると女神は何故か呆れたような目で
「ふ〜〜ん。じゃあいっか!
あっ!そうそう。教会かなんかで祈ったりしたらまた話せたり話せなかったりするから話したかったら試してみてね。私は器がうちゅ〜よりも大きいから助けてやらないこともないよ!」
(なんかちょっと思ってた女神と違うな)
などと失礼な考えの俺を気にせずに女神は女神っぽい振る舞いで言葉を発した。
「新たなる人生に幸福があらんことを」
―――――――――――――――――――――
声が聞こえる。分からない言語だ。
「ΓλτΤΘτΤΑρΩΖΥΔ,ΩΘΤΒΩΘ.」
「ΩθΩΡβΓλτΨΖωΠΨ.」
女の言葉に対して男が返す。
状況を確認しようと目を開ける。
そこはほとんど何も見えなかた。
そういえば出生児って目がほとんど見えないんだっけ?
こんな状況、なんか渡米した直後を思い出すね。言葉がほとんど分からなくて苦労したなぁ。目が見える分今よりは不安はないけど。
期待と不安の混ざった中俺の人生が再スタートする。
早く俺の名前くらい知りたいけど
これから不定期に投稿していく予定です。
ギリシャ文字はカッコいいから使いました。
一応法則性はあるので興味がある且つ自分の髪の毛の本数を数えることくらいしかやることがない方は解読してみてください。