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第2話 深い眠りでみるのは愛しい人

こんにちは赤豆 蓮根です。


続きです、楽しんで貰えたら嬉しいです。


深い、深い深淵へ落ちていくよう。


何も聞こえない、何も見えない


自分が息をしているのか目を開いているのか


何も分からない。


ただ、感覚的に落ちているのだと身体に触れる風が教えてくれている。


不思議と恐怖は感じない……



まさか、夢?……私が…






『おい……き…ろ。…おい!』

低く響く声、大好きな声……


ハッと目を覚ます。


目を見開くと暖かな日差しがあり一瞬で目を細める。


体の周りから草木の香りがしているのでここは


よく遊んだ森の開けた僕達の場所だ



『…はぁ、やっと起きたのか』


寝転んでいる僕を覗き込み溜息を吐かれ


額を指で弾かれる。


あいてと額に手を置きあまり痛くないけれど痛い振りをする。


『…すまん、痛かったか』


焦った様に額を撫でてくれる。


綺麗なアメシストに見詰められるその目は優しい。


私はきっと悪い夢を見ていたのだ。


『…ほら、そろそろ戻るぞ

先生がきっと首を長くして待ってる』


ぱっと起き上がりこちらに手を差し伸べ


その手をとり立ち上がる。


気がついた彼が服に着いた草を払ってくれる。


『…行くぞ』


そう言って差し伸べた手をそのままに繋いでくれる。


この頃の()はよく転んでいた。


足元をしっかり見ないからそうやって転ぶんだ


そう言いながらいつも転びそうになると助けてくれたり


一緒に転げてしまったりそれでも仕方ないなと許してくれる。


怪我するからと呆れながらもいつも手を繋いでくれる。


僕達は何処に行くにも何をするにも一緒だった。




「先生、遅くなりました」


そう言って森の奥にある小さい学舎で


僕達は創造の神様になる勉強と()()()()になる勉強をしていた。


創造の神とはあらゆる世界を生み出し秩序を制定する者


そして生命の神とは新たな神を産み出す者


僕らがどちらかの役に着く事が決まっていた。


僕は生命の神に憧れていた


だって新しい生命を産み出す事は尊い事であり


いつも一人で居ようとする彼に僕以外の親しい人を


創ってあげることが出来る


これ程、素晴らしい役は無いと思っていた。


彼は創造の神に憧れている


何せ先生こそ創造の神、モーント様だ。


いつも穏やかで少し口の悪い彼でも先生は全く気にしない


サラサラの月色の髪を揺らし笑っていて


シトリンの目を細めて笑い元気だねって言ってる


僕達神には生物の様に親は居ない。


産まれると言う表現はするけれどどちらかと言えば


創ると言う方が正しい。


世界樹と言う数々の世界の情報が入った大樹がある


そして、その木に触れる事を許されているのも許可をするのも創造の神だけ。


そしてその大樹に触れて魂を型取り設定をして


器を創るそしてその器に魂を定着させて


新たな神として誕生する。


僕達の産みの親は原初の神であり生命の神


太陽の女神とも呼ばれるゾンネ様だ。


あの方は僕の憧れ


優しくて暖かくて、いつも僕たちを見守って


幸せにしてくれる


僕は彼女の事を人間達の様にお母様と呼んでいる。


彼女はいつもお日様の様な髪をふわふわさせていて


穏やかなファイアオパールの瞳を細めて笑う


緩やかな優しい声で言う。


『ふふ、貴方は甘えん坊ねぇ


毎日貴方やルドラークが来てくれるのが嬉しいわぁ。


貴方達は()()()()()()()()だと思っているけれど


皆、大事な神ですもの。


生命の神たる私は誰かを特別愛する事は許されていないのよ……


貴方もいずれ分かるかもしれないわね……』


母様の言ったことは難しくてよく分からなかった。


でも、そっと頭を撫でてくれる手は優しかった。



時は流れ僕達が少年姿から青年姿になった頃


成長しあらゆる知識を身につけた頃だった。


最終試験として産み出す力と世界を創造する力を使い


どちらが上手く作れるのかを見るというものだった。


この日は特別に世界樹に触れる事を許される。


母様と先生が見守る中『始め』の合図で


世界樹に触れ呪文を唱える。


そして、今回の生物(おだい)は烏だったので


形を創り、魂を設定し定着させる。


そして馴染むまで待ち、今度は世界を創る。


どんな世界にするのかを決め球体を作り


世界樹の真ん中にある大きな穴から球体を取りだし


支えとなる器状の基盤に載せれば完成だ。


あとは本当に設定どうりの世界になっているかを見て


その出来次第で決まる。


今回は時間を早めているので明日には約一千年分進んでいる事になる。


僕の産み出した烏は白く紫の瞳をしていた。


どんな性質にするかは自分で決められるので


烏にルドラークの性質を入れた。


ルドラークも烏が上手く産まれたようだった


彼の烏は黒く瞳は青の瞳をしていた。


僕と同じ事を考えていたのかな?と少し嬉しくなった


と、そこで母様がパチンと手を合わせて


『はい、そこまで。

二人とも上手く創れたみたいねぇ

とっても頑張って偉いです』


そう言って微笑んだ。


『うん、本当によく出来ているよ二人とも。

よく頑張ったね』


先生も嬉しそうに笑ってくれていた。


『あ、そうそう。

今日産まれた子達に名前を付けてあげて

これから貴方達のそばに居てくれる子供達よ』


僕達の手の中に居る烏の頭を撫でて言った。


初めての僕の子供!


「わぁ、嬉しいなぁ〜

僕が君のお母様だよ、名前何にしようか」


と、頭を撫でると


『……か…かぁ…さ、ま?』


と話し出した。


それを聞いたルドラークが驚いた顔をして


『はぁ?お前…烏が喋ってるぞ。

人間じゃないんだぞ、今回のお題は烏だろ?

なんで話してんだ、ミスったのか?』


と困惑したような顔で言ったので


「違うよこの状態が正しいんだよ。

初めて創った子だよ?一杯お話ししたいじゃない。

だから話せるようにしたんだよ。

それに烏がお題だけれど性質は好きにしていいって

言われてたでしょう?

なら、烏が喋るようにしたって良いじゃない」


ねーと烏の顎を擽りながら笑っていると


『そうね、それはいい事だわ。


創造と言うのは既存の世界を作り出すのではなく


考えて、考えてそれから新たに生み出す事よ』


ルドラークはフンと横を向いてしまう。


黒烏はルドラークの方にとまりじっと動かない。


怯えているのか少しふるふると震えていた。


『ふふ、君も可愛いねぇ。

お話出来たら良かったけれど、こちらの言ってる事は理解してくれてるね』


そう言って顎をスリっと撫でると指に頭を擦り付けてくれた。


もしかしたら人懐っこい性質なのかもしれない。


「名前どうしようかな」


そう言って2羽の頭を撫でていると


ルドラークがボソッと言った


『……フギンとムニン』


その言葉に目を輝かせて


『フギンとムニン!いいね

どっちがフギンでどっちが厶ニンなの?』


そう聞くと後頭部をかきながら照れた様に指をさして


『こっちの黒いのがフギン、そっちの白いのがムニン』


両手にとまった白と黒の烏達は嬉しそうに羽をパタパタと動かした。


ムニンが嬉しそうに飛び回り今度はルドラークの肩にとまり


『僕、ムニン!…兄弟フギン!お母様と、お父様!』


それを聞いたルドラークがぎょっとした顔で


『誰が父だ!』


とムニンの頭を指でコツンと刺していた


『…父様、叩いた!……酷い。…母様!』


そう言ってぽろぽろと涙を流しながら肩に戻り


首に頭を擦り付けるようにふるふると振っていた


ルドラークが舌打ちをして去って行こうとしたので


フギンが慌てて飛びルドラークの肩へと戻って行った





翌朝、世界樹の前に呼び出され僕達の世界の結果が発表された。


そして、出された結果は僕だけが合格した……


『……何故、ですか?

俺は確かに世界を創り出せたはずです。


それに、あの時()()()()上手く出来てるって言っていたではありませんか!』


普段の優しい瞳が翳り深い紫へと変えた瞳が


母様を睨みつける。


『……そうね、創るのは完璧。

インドゥーラよりもしっかりと完成されていたわ。

けれどね、これを見て頂戴』


そう言って布の被っていた球体を持ち上げ


僕達の前で布をとる。


母様の手にあった球体は驚く程に真っ黒だった。


『…どういう、事なのですか』


ルドラークが目を見開き聞くと


『……貴方の世界はたった一千年で滅んだのよ』


ルドラークは膝をつき崩れた黒髪に手を差し入れ


『……そ、んな。俺の設定が間違えていた…のか

たった……たったー千年で滅んでしまうなんて』


母様はルドラークをそっと抱き締めて言った。


『……ルドラークそんなに落ち込まないでこういう事もあるのよ。

……今回はたまたま駄目だった。

けれど、落ちてしまった事実は変えてあげられない

ごめんなさい。

けれど、新たに貴方の為の役について欲しいの……

それでは駄目かしら』


そこでルドラークは涙を流し拳を握りしめ


『……ゃ、だ。

嫌だ、俺…俺は。父様みたいになりたくて

だから、俺は創造の神になる為に努力してきたんだ

なのに、違う役にまわれって?

……ふざけるな…ふざけるなよ!!!』


母様を押しどけ胸ぐらを掴み


『……アンタはいっつもそうだ!

俺達の事なんて数いる神の一人にしか思って無いんだろう?


何が、()()()()()()初めての子供だ!


人間みたいな事言いやがって、気持ち悪いんだよ!


特別愛してはいけないって決まってるって言うけど


違うな、アンタは誰でも一緒だ!愛せてなんて居ない!


現に父様が苦しんでいてもアンタは何にも理解してないじゃないか!』


そこで先生がルドラークの頬を叩いた。


『……やめなさい、ルドラーク。分かっていないのはお前だよ。


私を使ってゾンネ様を傷つけるのはやめなさい

……不快です。


私達は望んでこの役に着いています。

それをお前の勝手な解釈で決めつけてはいけないよ』


叩かれた頬を手で覆い呆然と先生を見上げていた


先生はルドラークを見ること無く


母様に手を差し出し立ち上がらせて


肩を抱いて支え合うように歩いて行ってしまった。


どうしたらいいのか分からない僕は


先生と同じようにルドラークに手を差し伸べた


呆然としていたルドラークはハッとした顔で


差し伸べた手を払われてしまった。


顔を俯かせその表情は見えなかったけれど


一粒、涙の様なものがきらりと見えた気がした


走り去っていく彼を追いかけられなかった。



その晩、どうしても気になり彼の部屋へ行った。


ノックしても声を掛けても


開けてくれないし返事もしてくれない


だから、ドアの前に座り込んで今日の星は綺麗だよ


とか、明日は何して遊ぼうかとか


試験や先生達とは関係ない話しをしていた。


もしかしたら、本当に部屋に居ないのかもしれないし


聞こえていても無視しているかもしれない


だけど、このままにしておくのは駄目な気がした。


だから、話し続けていると段々眠くなってきて


言葉が上手く紡げなくなっていった時だった。


扉がすぅっと開いた。


僅かな隙間から覗いた彼の目は暗く翳っていて


目の下には泣いた跡が残っていた。


『……眠いなら、部屋へ戻れ』


そう言ってドアを閉めようとしたので


「…でも、君は眠れないんでしょ。

君が眠るまでここで話してから戻るよ」


とへらっと笑うと


無言で近ずいてきて僕の腕を引いた


いつもの彼らしくない少し強引な態度に驚いたけれど


大人しくついて行った。


そのままベッドへ彼が腰かける


何かを訴える様にいつものアメシストの瞳で


腕を掴んだままじっとこちらを見ていた。


どうしたらいいか分からない僕は固まって


同じ様に彼の瞳を見詰めた。


すると急に力を入れたかと思うと


彼の元へと引っ張られ彼の頭を抱き込む形で飛び込んでしまった。


勢いよくぶつかってしまったので痛くなかったかと


確認しようと慌てて離れようとすると


腰に腕を回されて両腕でぎゅっと抱きつかれた。


「……どう、したの?」


そう、訪ねると彼は頭をぐりぐりとお腹に擦り付けた


まるで甘えてる……みたいに。


もう、何も言えなくなって


ただ彼のサラサラな髪に触れて頭を撫でた。


暫くそうしていると彼が腕から力を抜き離れた。


それからまた腕を掴まれベッドの中へ引き込まれた。


引き込まれた僕は彼と同じ様に横になり


彼は僕の胸元に額を当て声を殺して泣いた。


それからポソポソと言葉を紡いだ


『…俺は、俺はなんの為に努力してきたんだ

どうして、どうして俺は失敗したんだ。


俺達は二人の跡を継ぐ者として産まれたのに

これじゃ、こんなんじゃ


俺が産まれた意味が無くなるじゃないか……』


彼をぎゅっと抱き締めた。


『……どうしよう、どうしよう。

俺は要らなくなったのか、俺の存在価値は無くなったのか

きっと父様は俺に失望したんだろうな』


もっと強い力でぎゅっと包み込んだ。


彼の冷えた身体が彼の心を表しているようで


温めてあげたい、その一心で彼を抱き締める。


『……なぁ、ドゥーラ。お前は離れたりしないよな

俺の傍から離れないでくれ。

……前みたいに好きだって言ってくれ』


僕の腕に縋り付くみたいに震える手で掴む。


「……離れないよ。ずっと離れない。

君が望むだけそばに居るよ、昔から変わらない。

ラーク大好きだよ、愛してる」


そう言って額にキスを送ると


彼は僕を抱き締めてそのまま眠った。



翌朝、目が覚めると彼はまだ赤い目で


おはようと言って窓際の椅子に腰掛けていた。


どうやら彼の中で整理がついたらしい。




ドアの音がなり母様に呼び出された。


どうやら、今日に僕達の就任の儀がされるらしかった。


用意された儀式用の衣装に着替えた


僕は純白の白く長い服を着せられ肩に青のマントをかけられ


ルドラークは真っ黒の軍服に真っ赤なマントを肩にかけた


僕達は手を繋いで案内人の後を続く。


彼の手は少し震えていた。



世界樹を前にズラっと神々が並び世界樹のすぐ近くに


母様と先生が寄り添うように立っていた。


僕達が到着すると母様に呼ばれその御前に跪く


寄り添っていた先生が母様の横で跪き宣言をする


『私、モーントは創造の神の席を降り

我らが太陽の女神ゾンネ様へとお返しします』


そう言うと先生の体が光だしそして消えた。


そして先生は立ち上がり後ろへと下がる。


母様が今度は僕の前に立ち


『表をあげよ

我が子インドゥーラよ、そなたを創造の神に任ずる。

新たな創造主として励みなさい』


母様の方へ顔を向け


「私、インドゥーラは創造の神の任を拝命し

今日、この日から創造主として励む事を誓います」


『…皆、よく聞け。創造はインドゥーラが行う。

だが、生命の神見つかっておらぬ。

暫くはこの任は私が引き続きつく。

そして、今日新たに役を置くこととする』


神々の方へ向きバッと手を広げ宣言する


『ここに居るルドラークにはその任に着いてもらう

これより秩序を守れないものには処分となって貰う事となった。

その処罰と世界の破壊をこのルドラークにしてもらう

今日から彼は破壊神の任に命ずる』


ルドラークは唇を噛みグッと何かを飲み込む仕草をした後


立ち上がり母様の方を向き宣言する。


『……我、ルドラークは破壊神の命を拝命します』


ざわざわとどよめくその場を母様は


持ち場に戻りなさい、その一言で終わらせた。




それから反対等がある中、破壊神はどんどんと秩序を制定して行った。


そしてお互いに任につき忙しくしていた頃だった。


夜に久々にこちらの部屋へやって来た彼は


何処か様子がおかしかった。


真っ黒な軍服に真っ黒なマントそしてフード


顔が見えなくてフードを外そうと近づいた時だった


腕を掴みあげられつま先立ちになり


いきなり何をするのかと口を開いた時だった。


まるで噛み付くかのように唇を奪われた。


口内に何かが侵入してきて息が出来ない。


胸をどんどんと叩くと離れ口からツゥっと糸がひいた


彼が唇をペロッと舐めた


あぁ、舌が入っていたのだと気づいた。


何が起こっているのか分からず問い詰めようとしたら


今度は肩を捕まれベッドへと押し倒される


もしかしたら何かに傷ついて


また抱き締めて欲しいのかと思い覆い被さる


彼の頭を抱きこんだ。


その瞬間、首に痛みが走った。


咄嗟に掴んでいた頭から手を離すと顔を上げた


彼の口元に血がついていることに気づき


私は噛み付かれたのだと気づいた。


彼は血の出ている首に吸い付いては今度は肩に噛み付く


「……っ、いた。痛い!…お願い……やめて」


泣いて懇願したけれど聞いて貰えない。


彼の肩を押し上げようとすると手を捕まれ何かで縛られる


「…や、だやだ、やだぁ……っん…んん」


頭を横に振り泣き喚くと顎を掴まれ口を塞がれる。


「…ん、んむぅ……はっはっ」


息も絶え絶えになり何も言えなくなった


いつもの優しい手は何処にもなくて


ヒンヤリとした手は痛む首に触れ鎖骨を掠め


服を脱がされ剥き出しの上半身が空気に触れる


ヒンヤリとした怖い手は胸に触れ


冷たさで硬くなった所をぎゅっと摘まれる


「…ぁ、い、たい」


と涙をぽろぽろ流すとその涙を舐められ


そして胸に吸いつかれた。


まるで赤子がお乳を飲むみたいな勢いで吸われ


そしてお腹に触れた手はスルスルと下へおりていき


僕のに触られる、誰にも触れられた事のない所


本当にどうなっているのか分からなくて怖くて怖くて


優しい彼に戻って欲しくてただ、彼を呼んだ。


「……ら、く。らーく…ラーク」


やっとこっちを向いた彼はやっぱり暗い眼をしていて


もう、僕が何を言っても彼のこの行動は止める事が


出来ないのだと理解した。


だから僕はもう抵抗せずに彼のしたい様にさせた。


そこからは舐められて、噛みつかれて痛くて怖かった


その内、意識も遠のいてきてもう何も考えられなくて


ただ彼がうわ言の様に僕の名前を呼んで縋ってた


『……ドゥーラ、ドゥーラ。俺の傍を離れるな』


夜が明けるまでずっと彼は僕を貪っていた。





翌朝に頭を抱えてルドラークはごめんと言って部屋から出ていった。


そして、たまに夜に現れては


あの日の様に僕を求めてやってきては


朝に後悔して帰るを繰り返していた。



彼が決まって言う離れないでが彼のあの行動の理由なのだとしたら


やっぱり僕以外にも増やしてあげれば良いんだと


思いついた僕は太陽の女神ゾンネ様に僕達の後継を創りたいとお願いすると


困った顔をしていたけれど良いわと言ってくれた。


そして、彼にそれを伝えると複雑そうな顔をしながらも了承してくれた。


そして二人で世界樹に触れ呪文唱え新たな神を創造した。


彼は浮かない顔をしていたけれど


産まれてきた子達に触れるとその瞳が一瞬


僕の好きなアメシストの瞳に戻った気がした。


「ね、僕達の子供達だよ。名前考えてよフギンとムニンの時みたいに」


『……そうだな…こっちの赤い方がアグニール

そっちの銀の方はバッガスはどうだ?』


良いねと返すと


子供達が俺達の指を握った、彼は静かに涙を流していた


僕は小さな彼等に祝福をと言って額にキスをした。



それからは昼間は姿を現さなかった彼が


頻繁に()()の前に現れるようになった。


『あ、父様!』とアグニールが嬉しそうに彼に抱きつく


けれどバッガスはゲッと言って私の後ろに隠れるようになった。


アグニールとルドラークが剣の打ち合い稽古をしている間


バッガスは『……あいつ本当に父さんの事好きだな…』


と言いながら私の足元にひっつき離れない。


ルドラークがお前も来いと言って襟を掴んで引っ張っていくと


アグニールが『…こいつは母様に引っ付くしか脳の無い馬鹿です。放っておいて下さい』


とフンと鼻を鳴らすと切れたバッガスが


『はっ!ファザコンに言われたかねーよ

つか、父さんに見てもらってるくせに

俺に勝てたことないじゃねーか。ザーコ』


ブチ切れた2人は剣を捨てて殴り合いに発展し掴み合い


取っ組み合い出した所でルドラークは拳骨を落とした


これはいつもの事で喧嘩するけれどこの二人は仲良しだ。


寝る時は三人一緒に寝るしルドラークが来れば四人で眠る。


この二人が来てからルドラークは落ち着いた様に見える。


暗い瞳が嘘の様に見なくなった。





そんな日々が続き二人が赤子から幼子、少年へと姿を変えた辺りからだった。


彼がまた不安定になりだした気がした。


理由を聞いてみても大丈夫だと言い


ほぼ毎日来ていたのが1週間置きになり


3週間、1ヶ月、半年と伸びていき遂にぱたりと来なくなってしまった。


アグニールは来なくなった父様を心配し、バッガスは怒っていた。


青年になった二人はそれぞれ違う役に着いた。


アグニールはルドラークを追いかけ彼の補佐になるのだと言って出て行ってしまった。


バッガスは私の傍から離れなかった。


この子は私の傍にずっと居ると言ってくれた。


流石、ルドラークの性質が入っているだけあって


面倒見が良いのだろう。アグニールもそうだけど。




バッガスが久々にアグニールに呼ばれたのだと


面倒臭いみたいに言いながら満更でもなさそうに


出て行ったので見送った後だった。


久々にルドラークがやって来た。


見るからにやつれた姿で目は暗いと言うより真っ黒


一体何があったのかと訪ねても何も答えない。


突然、首に噛み付かれた 慌てて肩を掴み押した。


前はビクともしなかったのに


よろけた彼はそのまま地面に崩れた。


「ルドラーク!」


慌てて駆け寄ると彼の目は焦点が合っておらず


虚ろな目でこちらを見て言った。


『…もう駄目だ、駄目なんだ。ドゥーラ

俺を消してくれ。この世からお前の記憶から』


そう言って涙を流していた。


『…もぅ、良いんだ。俺は頑張ったろ?

十分、働いたはずだ。もう、解放してくれ頼む』


俯きついた手を握り今度はぱっと顔を上げて


立ち上がり私の肩を掴んだ。


『……いや、違うな。お前も一緒だ……

俺の望まで一緒だと言ったな?なら、お前も死ね』


そう言って私の頬に両手で触れそして私の首を絞めた


「…や、め」


抗おうと彼の手に触れるだけで上手く力が入らなかった。


あぁ、私は死ぬのだと彼の虚ろな目を見た。


大好きだった彼の目は私を見ていなかった……


手を離し諦めた時だった。


バッガスがルドラークを蹴飛ばし


アグニールがルドラークを抑えた。


フギンとムニンが上で心配そうに飛んで回っていた。



アグニールと争っていたルドラークは正気を失っていて


アグニールを吹っ飛ばし切りつけた。


その瞬間アグニールの身体は崩れ落ち


それと同時に走り出したバッガスがアグニールを支え


傷を確認し、そっと下ろすと剣を取った


そしてルドラークに向かっていき


お互いに物凄い速さで打ち合っていた。


そして、ルドラークがバッガスの剣を弾いた時


私は咄嗟に大声でルドラークを呼んだ。


「止まりなさい!ルドラーク!!!」


そして、彼の元へ近づき


「止まって、ルドラーク。

分かったよ、ラークが望むなら……私の命をあげる」


そう言って彼の唇に口付け微笑んだ


そして彼の剣を奪い喉を切り裂いた。


それを見た彼は目を見開き私を呼んでいた。


『……ぁ、あぁ。そんな

ドゥーラ!!!違う、違うんだ…こんな』


彼は必死に私の首を抑え止血していた。


薄れていく意識の中彼の瞳はアメシストに戻っていた


あぁ、大好きな君に戻ったんだね。


その後のことは覚えていない。



次に目を覚ましたのはあの日から2週間がたっていて


太陽の女神であるゾンネ様が僕を助けて


力を使い果たし星となり(そら)へ還られた。


そして、モーント様はルドラークとの戦いにより消滅


ルドラークはアグニールとともに姿を消した。


意味が分からなかった。


どうしてこんな事になってしまったのか。


私は…僕はただ、彼に()()をあげたかった


なのにこの状況は何?


一体、何が残ったというの………


溢れる涙が止まらなかった。



次の日、私の机の中にひっそりとあった手紙には


こうあった。


『俺が最も愛したドゥーラへ

俺はもう、全てを失ってしまった。

何も無い、こんな事なら初めからお前と出会わなければ良かった。

この運命を呪う……俺の事など忘れるんだな

俺もそうするよ、じゃぁな』



私じゃ駄目だった。


私じゃ彼を孤独から救ってはあげられなかったんだ。


ひとしきり泣いて泣いて涙が枯れた頃


私は創造の神として、そして生命の神として


太陽の女神の代わりとなれるよう仕事に励んだ。








長い眠りから目を覚ますと久しぶりに涙を流していた。


もう、枯れてしまったのだと思っていた。


ベッドから起き上がり目を擦っていると


ドアが開いた。


『……起きましたか、インドゥーラ様。

貴方はあいつの事で泣いてばかりですね……』


そう言ってバッガスが目の下を擽るように指で撫でた


くすぐったくてふふっと笑うと


『貴方は笑っていた方が良い。あの男の事なんて忘れてください。…本人も望んでるんですから』


今度は優しく頬に触れ顔が近づいてくる


『お兄様!…大変なのです。

インドゥーラ様はお目覚めでしょうか!』


と慌てて入ってきたセレスフィアが説明する。


どうやら私が眠っている間にあっという間に15年たっていたらしく


送り込んだアマミヤ様を支える事も出来ず


放ったらかしでしまっていたらしい。


起きて早速、自己嫌悪したいがそんな場合では無いでしょう


できる範囲でセレスフィアがサポートしてくれていたらしい。


私はベッドから降り支度をして世界樹へと向かった。

読んで下さりありがとうございました。

今回は少し過激だったかもしれないです。


次回は送り込まれた転生者のお話しです

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