表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の寵愛を受けた男爵令嬢と受難の日々  作者: ひなゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/122

70 人を癒すのはただのおまけ


「フローラ様ぁ〜〜お帰りなさいませー!!アリアすっごくすっごく寂しかったですぅっ〜〜!!」


「ただいま、留守番ありがとな。遅くなってすまねかったなぁ」


「だからいい歳したおっさんが何言ってるのよ」


「あ〜ララ先輩っ!私はまだピチピチの二十一歳だっていつも言ってるじゃないですかぁ〜!!」



 レオのタウンハウスから寮へと帰宅したフローラとララを出迎えるアリアはすこぶる元気で、ちょっと違う気もするがこれがペットのいる癒し生活か…とフローラは謎の達成感を覚えた。



「あの人怖すぎるんでアンダーソン様の事情にまで首を突っ込む気はありませんけどぉ、ティア神様の頼まれ事がどうなったのかは教えて下さい〜〜!」 とアリアがキャンキャンと吠えている。


 仲間はずれも可哀想だと、フローラはイアフスをこの世に顕現させることが出来たことや、イアフスに聞いたルルーシュの話、レオがフローラの祝福の力を抑えてくれていることなどを、レオの事情をぼやかしてアリアに教えてあげた。


 そして話を最後まで聞いたアリアは可憐な侍女設定を忘れおもわず真顔になる。



「え…………。なぜお二人がそんなに落ち着いていられるのか理解に苦しむのですが、これってわりと大事な話だったりしません!?

 え、神獣であるルルーシュ様がフローラ様の存在に気付いちゃったら嫉妬でこの世界が滅んじゃうかもしれないってことでしょ!??

 は?え、一大事じゃないっすか!!!寮にいてる場合じゃないですよ!!

 アンダーソン様がフローラ様の祝福の力を抑えることが出来るって言うなら齧りついてでもお側に貼り付かなきゃ!!」


 リアルに迫る世界滅亡を前にアリアは一人危機感を募らせるが、フローラとララはのんびりとお茶の準備をしていてここの温度差がすごい。



「イアフス様の話だとルルーシュ様の目覚めまであと数年はあるみたいだから慌てる必要はねーだ」


 もちろんルルーシュの目覚めを知らないフローラは、ララが入れてくれたお茶を美味しそうに飲みながら答える。



「でもでもっ、それはただの予測ですよね!?」


「アリア落ち着きなさいよ、みっともない。例え世界が滅びようとフローラ様のお側にいれば私達は絶対に生き残れるから大丈夫よ」


 ララもイアフスの話を聞いた時はルルーシュが目覚め、愛し子の存在に気付いてしまったらどうなるのかと一瞬考えたが、結局のところフローラが側にいてくれれば何が起きようとも恐れる事など何一つないのだ。



 たとえドラゴンである神獣ルルーシュが暴れて国が崩壊しようとも、陽の光が一切届かぬ闇の世界が訪れようとも、作物の育たぬ不毛の地に成り果てようとも、フローラは弱き者を助けるため諦めることなく全力を尽くすのだから。

 ならばララはそんなフローラを信じて付き従うのみ。



「フローラ様のお側にいれば生き残れるって…それはフローラ様が愛し子だから、ですか?」


 一方まだ付き合いの浅いアリアは、ララのようにフローラに対し盲目的に信頼を寄せることが出来ずにいた。もちろんフローラのことは女神として信仰しているし強大な祝福の力も理解しているのだが、それはそれこれはこれというやつだ。



「それもあるわ。フローラ様の祝福はティア神の御力ですもの。まずフローラ様に物理の攻撃は一切効かないからドラゴンであるルルーシュ様に襲われたとしても大丈夫」


「え……?あ、そういえば私がナイフでフローラ様を斬りつけた時跳ね返されましたね!!

 ん?でもあれってどの祝福の力なんです?

 まだ教えてもらってない残り二つの祝福ですか?」


 あの時は鉄を斬りつけているような感覚しかせず絶望したものだ、とアリアは過去を振り返る。

 というか自分をナイフで襲ってきた人間をよくペットにしようと思ったものだな……いや、ペットにするという発想もどうかと思うが。



「ああ、あの力は『癒し』だべ」


「えっ!『癒し』ですか?」


 人の病や怪我を治す力と鉄壁の防御が同じ括りに入るとはとうてい思えず、アリアは首を傾げる。



「フローラ様の祝福の力はフローラ様を守るためのものであり、『癒し』の力の本質は他人を癒すことではないのよ」


「んだ…。ティア様はそもそもわたすが痛い思いや怪我をしないようにと『癒し』の力を身体の表面に張り巡らせ、物理攻撃を防いでくれてるだ。これは勝手に常時発動してるからわたすの意思で解除できねぇ。

 溢れるほどの癒し力で守られてっから、その漏れた力で他の人を癒してるだけだべ」


「つまり他人を癒す力はただの副産物よ」


「え……あの奇跡がまさかのついで…?」



 正しくはフローラの身体の表面を強い癒しの力で覆うことで()()()()()()()()()()()()()()のだ。


 つまりどんな攻撃を受けたとしてもちょっとでも肌に当たった瞬間から細胞の再生が始まるので、痛みや異常を感じる間もなく修復は完了する。

 これほどの力がフローラの身体の表面を常に無駄に流れて続けているのだ、エコの観点からしても漏れた力で他人を癒すことなど造作もない。



「だからなにかあればわたすの背中に隠れればいい、二人のことはわたすが絶対守るだ。安心してけろ」


「はぅっ…私の主が男前過ぎるっ……!!一生ついて行きますぅ…!!!」


 心の深い傷となっていた顔面の火傷跡や古傷を癒してくれた奇跡が副産物だろうがついでだろうが漏れた力のリサイクルだろうが、フローラに救われたという事実は変わらないのだからなんだっていいと、アリアは心の中であらためてフローラに忠誠を誓った。



「イアフス様のおっしゃる世界が滅ぶというのがどれほどの規模でどれほどの被害が出る話なのかは分からないけれど、私達に出来ることは何があってもフローラ様を側でお支えすることよ」


「はいっ、分かりましたぁ」


「またイアフス様に話を聞かなきゃならねーべなぁ。ティア様にも報告しなきゃならねぇし」


 ティア様が今日も夢の中に出て来て下さるいいなぁとフローラが考えていると、アリアが急に「あっ!」と声を上げる。



「ん?どした?」


「聞いて下さいっフローラ様ぁ〜!!また王家の影がこの部屋に張り付こうとしてたんですよっ」


「はぁ!?またなの!??」


 アリアの言葉にララの怒りはすぐに沸点を迎える。



「そういえば前も言ってたな。リアム様に確認しようと思って学園で会えなかったからすっかり忘れてたべ」


「今回もちゃんと追い返しておきましたぁ!」 


「ありがとな」


 フローラに褒められてぶんぶん振るしっぽの幻覚が見えるほどアリアは喜ぶ。

 案外自分には番犬の素質があるのかもしれないな…と加速する自身のペット化をアリアは素直に受け入れた。



「落ち着いて考えてみれば、なぜクソ…王太子殿下がフローラ様に影を仕向ける必要があるのでしょうか?

 殿下の様子ではフローラの様の祝福の力が公になることをよしとしていなかったように見えましたけれど…」


「たぶんですけどぉ、あれは国王陛下直属の影だと思いますぅ。

 国王の命令にのみ従い、どのような任務も必ず遂行させるというヤバい集団ですよ。

 前回も今回も引いてくれましたけどぉ、あれは完全にこちらの力量の様子見で全っ然本気じゃなかったでしたね!」


「『本気じゃなかったでしたね☆』じゃないのよ!

 フローラ様にどれほどの害を与えるか分からないのだからちゃんと息の根を止めなさいよ!!」


「ララ、物騒なこと言うのはやめてけれ〜」

 

 国王所属の影だろうがなんだろうがどうでもいいから見つけたら殺せと過激なことを言うララに、さすがに国王の駒を勝手に始末するのはまずいのでは?とフローラはまともなことを考える。



「明日リアム様に会えたら影のことを聞いてみるから、それまで手出しは不要だべ。

 あまりにも鬱陶しかったら魅了をかけて意思を奪えばいいだけなんだから、絶対に息の根は止めちゃだめだど?」


「はぁい…」


「……はぃ」


 どこか不満げな様子で返事をするララと軽く怯えた様子を見せるアリア。

 



 アリアは思った―――殺すなと言う割に主のやることの方が物騒じゃね?と………。


 

お読み頂きありがとうございます!! どのような評価でも構いませんので広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、 ポイントを入れてくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ