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女神の寵愛を受けた男爵令嬢と受難の日々  作者: ひなゆき


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36 “絶望”のはじまり

後半レオ視点です。


 フローラは優しい子だが単純な性格でうっかりしたところのある女の子だった。





 優しくあるが故、レオが周りに嫌われているということ、そのことにレオが心を痛めていることを知り放っておけなくなったのだ。


 モグモグとお弁当を食べながら「レオ様のどこに嫌われる要素があるんだべ?」と考える。




 レオはいい匂いがするし優しいし穏やかだし、偉ぶったところのない好青年だ。


 あれこれ考えている途中でレオに「リアムのことが好きか?」と尋ねられたので否定の言葉を即答する。





 フローラはリアムが衰弱死の危機から脱すれば婚約者の座を降りるつもりだった。フローラにしてみれば婚約も人助けのうちの一つ。


 リアムが困っており、何かフローラに助けてほしいことがあるというから手を差し伸べてあげたに過ぎない。




 それよりも今はレオのこと。



 なんとかしてあげたいだ…。



 自分は嫌われ者だと話した時の諦めたように微笑むレオの顔は、フローラの庇護欲レーダーを刺激しブンブン揺さぶった。





 その時、創造の力で創ったフローラの眼鏡が「こいつぅ!!ティア様から祝福を貰っていないぃ!!?ティア様の怒りを買ったやべぇ奴か!??」とレオの鑑定結果をフローラに告げる。



 大袈裟眼鏡が鑑定した内容を知ったフローラは「ティア様から祝福を授かってない?どういうことだべ?」と首を傾げた。



 イルド王国で暮らしてにいながらティアに祝福を授からないことなどあるのだろうか。




 分からない……だけどレオを助けてあげたい。







 その一心でフローラは口にした。



「レオ様が嫌われてるって言うのは祝福を貰ってないこととなにか関係があるだ?」、と………。







 フローラは優しい子だが、本当に単純な性格で、本当にうっかりしたところのある女の子だった……。





 その場に沈黙が落ちる。






 レオは恐怖を顔に張り付かせカタカタと小刻みに震える手をギュッと握りしめることで精一杯だ。



 なぜ………  なぜ、両親にすら……、誰にも話したことのない真実をフローラが知っている………?



 レオは震える手で口元を覆い七年前の十歳の誕生日、祝福の儀のことを思い返した。








***


 side レオ






 今日はレオ十歳の誕生日。


 

イルド王国の人々にとって祝福を授かることが出来る十歳の誕生日は、人生最大のイベントと言っても過言ではない。



 レオも十歳の誕生日に行なわれる祝福の儀を何年も前から楽しみにしていた。



 将来公爵家を継ぐ自分には誰よりも素晴らしい祝福が与えられるのだと、信じて疑っていなかったから。




 レオはこの頃、傍若無人とまではいかないが高位貴族の子どもらしい傲慢さや気位の高さを持っていた。 


 それを大人のいるところで面に出して自身の評価を下げるような愚かな振る舞いはしなかったが。





 レオは自分に相応しい最高の祝福が与えられる日を今か今かとの待ち侘びていた。












「女神ティアに永遠の感謝を捧げます。我に祝福をお与え下さい」


 レオは王都の教会の一室、高位貴族だけが祝福の儀を行うことが許された特別礼拝室にて祈りの言葉を捧げた。




 母から「祈り終えるとすでに祝福を授かっているのよ」と言われ、ワクワクしていた。



 父から「ティア神から力を与えられると最初から手にしていたかのように祝福の力を瞬時に理解し、使いこなせるようになる」と言われ、早く自身も体感したいと思っていた。







 だが………………






 イルド王国民ならばすべての人間に当たり前に与えられるというその祝福の力が…………………






 いくら待っても、





 ―――自分には、与えられなかった。









「祈り終えると祝福はすでに授かっている」? 


 そんなの嘘だ。




 「最初から手にしていたかのように」?


 何も感じない。




 「どのような祝福か瞬時に理解し使いこなせる」?


 嘘だ………嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!






 なにも……何も分からないじゃないか!!!!!





 レオは祈りを終えてしばらく待っても、何も……手にすることは出来なかった。








 その後、どうやって公爵家に帰ったのか覚えていない。



 記憶は曖昧だが両親には祝福を授かったと、ちゃんと嘘はついたようだ。


 そして私は上機嫌な両親や親戚、友人達に囲まれて自身の誕生日を祝うパーティーに参加した()()()


 というのも、私の意識がはっきりし出したのがパーティーもお開きとなり就寝の準備もきちんと済ませた頃合いだったから。






 輝かしいものになると信じて疑っていなかった私の十歳の誕生日は消えてなくなりたくなるほどの惨めな絶望を得て、終わった。







 その夜、私はバルコニーに出て跪き夜空を見上げティア神に謝罪した。





 ティア神様………私は何か悪いことをしてしまいましたでしょうか?



 他者に対する傲慢で思いやりのない態度がお気に召さなかったのでしょうか?



 ならば改めます。


 身分を傘に着た言動は今後一切致しません。この国の民の為にこの身を尽くすと誓います。


 ティア神様が愛して下さったこの国を、私にも護らせて頂きたいのです。




 だから………だから、どうか私にも祝福を授けて下さいませんか!?

 



 どうすれば私は貴女様の許しを得ることが出来ますか………!?







 レオは夜通し祈り続けたが祝福を与えられることはついぞなく、朝には熱を出してぶっ倒れた。



 バルコニーで発見されたレオに両親は「一体何があった?曲者か!?」と騒ぎ、一時公爵家は騒然とした。




 ベッドに寝かされたレオは高熱で朦朧とする頭で自身の今後について考える。





 ティア神がすべての国民に祝福を授けて下さるこの国で祝福を授からなかったなどと知られれば、自分は一体どうなってしまうのだろうか。



 熱のせいか恐怖のせいなのか分からない、ブルブルと身体の芯からわきあがる震えが止まらない。 





 人格に問題があるのでは?


 ティア神の怒りに触れる禁忌を犯したのか?


 イルド王国に住むに相応しくない人間という烙印を押されたのでは?と……大変な騒ぎになることは間違いないだろう。





 ……そもそも祝福を授からなかった人間に公爵家を継ぐ資格はあるのだろうか。


 私の身分剥奪で済めばよい話だが、祝福を授からなかった人間を輩出した家門として降格、もしくは取り潰しの処分を受けるなんてことになってしまったら……もう両親にどのように詫びればいいのか分からない。





 これはきっと、決して大袈裟な話ではないのだ。




 ここは女神ティアに守護された世界で唯一の国。



 ティア神が「国民のことも守護してあげたい」と慈悲をかけて下さったのが祝福のはじまりと言われている。



 そしていまだかつてイルド王国に所属しておきながら祝福を授からなかった人間など―――一人もいない。




 祝福を授からなかったということは、ティア神が「守護する価値なき者」と判断した事と同位。





 東方の国では「魔女狩り」と呼ばれる大勢と異なる少数の“特別”を迫害する非道が横行していた過去があった、という文献が遺されている。



 イルド王国民全員が祝福を授かる中でたった一人祝福を授からなかった異質な自分が魔女狩りの被害に合った者達と同じ目に遭わないという保証など―――どこにもないのだ。


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