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17 キラキラ男、再び


 翌朝、フローラは清々しい気持ちで登校した。



 群れのトップであるボスに、ララを伴い学園に通う許可は得ている。これほどの正当性はなかろう。



 今までも周囲が囀る(さえず)悪口に心を痛めたことなど一切なかったが、やはり多少煩わしくはあった。

 仕留めた獲物にハエがたかった時に感じる程度の煩わしさだったが。



 だが、今日からはそんな周囲も静かになることだろう。





 ルンルン気分でララが開けてくれたドアを通ると、わいわいとお喋りに興じていたはずのクラスメイト達がシン…と静まり返る。



 そんな空気をもろともせず、ララの手を借りフローラがいつもの定位置に着席すると女帝アマンダが仲間三人を引きつれてやってきた。



「フローラ様…。どういうことかしら?まさか我がイルドラン学園生徒会の警告を無視なさるおつもり?」



 すかさずララがフローラの前に立ち塞がる。


「ウィルソン公爵令嬢様、おはようございます。生徒会の警告、とは何のことでございましょう?」


「だからなんで毎回お前が答えるのよ!」



 フローラに話し掛けると毎度毎度しゃしゃり出てくるララに、アマンダは額に青筋を立てる。



「我が主は極度の人見知りゆえ。フローラ様にはわたくしが代わりに返答する許可を頂いておりますのでご安心を」


「お前ね…っ。男爵令嬢の許可の前に公爵令嬢であるこのわたくしにっ!口を開く許可を得なさいよ!この無礼者!!」


 激昂したアマンダが扇子を持った右手を大きく振りかぶったので、あわやララは殴られる…かと思われたが、大自然で培ったさすがの動体視力でアマンダの動きを見切ったフローラがトンッと手の甲で軽く扇子を弾き、その勢いのままアマンダの眼前へピッと一枚の紙を差し出した。


「…は………?え…………?」 

 

 一瞬何が起こったのか分からなかったアマンダは呆けるが、目の前に突きつけられた用紙に書かれた内容を読むにつれどんどんと顔色が変わる。



「なぜ…、殿下はこのような…」



 呟かれたアマンダの言葉にフローラは思った。


 殿下がなんだべ?、と。




 アマンダの仲間達も紙を覗き込み、「こんなのおかしいですわ!」だの「ちょっと!文書偽造は犯罪よっ!」だの、やいのやいの言い出したがフローラにはもう関係ない。



 許可証を丁寧に折り畳み懐に仕舞ったフローラは、再度ララに引いてもらった椅子に優雅に腰掛ける。

 と、今度は教室の入り口付近からどよめきが起こった。



 今度はなんだべ?とフローラが騒がしい方へ目を向けると、昨日のキラキラ男と眼鏡男が教室に入ってくるところだった。



「やぁ、悪いね。少しお邪魔させてもらうよ」


 リアムは安定の外面バージョンで爽やかに女子の歓声に答えながら、フローラの机の前までやってきた。



「おはよう。ブラウン嬢」


「…おはようございます。キラキ…リアム様」


 フローラは仕方なく立ち上がり完璧なカーテシーで挨拶をする。フローラの体幹はめちゃくちゃ強い。



「ちょっと貴女!リアム様のお名前を勝手にお呼びするなど…っ」


「アマンダ嬢、別に構わないよ」


「リアム様…っ、ですが…」



 アマンダは公爵令嬢という高貴な血筋であり、リアムとも幼少期からの顔馴染みであった。


 それでも名前で呼ぶ許可を貰えたのはつい最近のことであり、リアムからの扱いがポッと出の田舎娘と同列だなどと面白い話ではない。



 フローラは「痴話喧嘩か?他所でやってけれ」と、どこまでの他人事のようになんか怒っているアマンダをシラーっとみつめていた。




「ブラウン嬢、私は君に用があって来たんだよ?」


「えっ?」


 フローラの私関係ありませんという視線を的確に見抜いたリアムが釘を刺す。




「話がある。そうだな…今日のお昼休憩の時間にまた生徒会室に来てほしい」



 じゃあ、と爽やかな笑顔を振り撒きキラキラ男は帰って行った。


 

 フローラはまたまた呼び出された理由も分からなかったし、クラスの女子全員からものすごい顔で睨まれている理由も分からなかった。



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