15 祝福その三
「はー…。もういい。とにかく明日から学園に侍女を連れてくるなよ。制服の着こなしに関しては…打つ手無しだ。お前は全体的にダサすぎる。以上、帰れ」
リアムがソファの背もたれにドッと身体を預けたかと思えば、長い足を組みこちらを見ることなくしっしっと犬かなにかを追いやるように手を振る。
なんか雰囲気が変わったような…?
フローラは興味のない対象にはとことん興味がなかったので、百八十度変わったリアムの態度にも曖昧な感想しか抱けない。
「ブラウン嬢……。重々承知しているとは思いますがここで見聞きしたことは決して口外することなく記憶からも消去して下さいね…?」
「はぁ?」
トーマスはリアムの本性を言いふらされては困る、と据わった目でフローラに言い聞かせるが、これも勿論フローラには伝わらない。
「トーマス、もういい。こいつは正真正銘のアホだ。ほっとけ」
「しかし…」
キラキラ男と眼鏡男がなにやら話し合っているが、そんなことはどうでもいい。
フローラが一番気にしなければならないのは、明日からララを伴い学園に来てはいけない、と群れのトップのボスに言われてしまったことだ。
フローラの生命線、ララ。
ララがいなければフローラの学園生活は……詰む。
よって、あまり使いたくはなかったが祝福の力を使ってこの場を乗り切ることにした。
祝福、『言霊』の力を使って。
「キラキ…、リアム様。私は侍女を、伴わなければ、学園生活を送ることは出来、ません。『侍女を伴うことを許可して下さい』」
「わかった。……っ!?」
「殿下?」
「許可する、と『一筆書いて下さい』」
「……っ!??」
リアムは近くにあった紙にサラサラとフローラの侍女同伴を認める旨を書き、署名の横にハンコまで押した。
「!!!????」
リアムは信じられない思いでハンコを握る右手を呆然と見つめる。
「ありがとう…存じます」
フローラはサッと許可証を奪い取り、丁寧に折り畳んだそれを胸元のポッケに仕舞う。
「では、失礼致し、ます」
フローラはススス、と音も立てずにドアの前まで移動したかと思えば、大声で「ララぁぁ!!」と叫んだ。
そして、扉前に控えていたであろう侍女がサッと扉を開けた瞬間、一瞬でその姿が消えた。立ち去るのが尋常じゃなく早かった。
フローラは廊下で「うまくいったべ!祝福のことがバレることなく許可証を手に入れただ!!」と自慢気にララに話していたが、そんなわけはなかった。
生徒会室に残されたリアムはいまだ呆然としながらも優秀な頭脳をフル回転させる。
「あの女……何者だ?」
「殿下……。先ほどのやり取りは一体…?」
「あいつに、操られた」
「えっ…!!?」
フローラの祝福は秒でバレていた。
「人を操る祝福、だと…?そんな祝福は聞いたこともないし、王家に報告もない…」
「人を操るなど、そんな…。でも確かに先ほどの殿下の様子はおかしかった……」
恐ろしい事態にトーマスの顔は青褪める。
「…おい、トーマス。まだ誰にも、お前の親父にもあの女のことは報告するなよ」
「ぅえぇ!!殿下っ、それは…」
「うるせぇ。報告は俺の祝福であの女の力を確かめてからだ」
リアムは今までにないほど高揚していた。
自分の意思とは関係なく身体を勝手に動かされた不快感はあったが、それよりもっと別の感情に支配される。
―――面白い……!
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