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12 イルド王国王太子 sideリアム


「………あー、うっせ…。耳おかしくなった。くさいだけじゃなく公害レベルでうるさいとか、あいつら一体なんのために存在してるわけ?」 


「!?」


 突然リアムから吐き出された暴言に、隣を歩いていたトーマスは慌てて周囲を見渡す。



「殿下、人目のある場所でそのお言葉使いはまずいですよっ。部屋に戻るまでお口チャックでお願いしますねっ!」

  

 リアムの側近、というかお目付け役を任されているトーマスとしては、爽やかな好青年で通しているイルド王国王太子の本性が、腹黒毒舌男だとバレるのは困るのだろう。小言が毎回鬱陶しい。



「…ちっ。…別に誰も聞いてねーよ。周りのやつらはみんな俺の顔と地位とそれに付随する金しか見てないからな」


 毒のあるセリフとは裏腹に、向かいから歩いてきた女子生徒二人組がペコリと頭を下げるのを見て、リアムは片手を挙げて爽やかに微笑む。



 リアムは、外面がたいへん良かった。



 女子生徒達は「「きゃあっ」」と嬉しそうな声を上げ顔を真っ赤にしてパタパタと立ち去って行く。



「あと……身体か?」


「殿下ぁ!!はしたないですよ!!」







 リアムは何もかもが面倒だった。



 リアムのイルド王国王太子としての地位は盤石だ。


 輝く金髪にエメラルドグリーンの瞳、整った顔立ちに引き締まった身体、王族でありながら奢らない性格(表向き)、これらすべてが人々の関心を惹きつける。


 いずれ国王として国のトップに立つだけの実力と資質もある。


 優秀がゆえに勉学も運動も公務も卒なく熟す。


 授かった祝福もリアムに相応しいものだった。





 だから、面倒になった。



 つまらないのだ、なにもかも。





 色気づいた香水くさい女どもにギャアギャア騒がれるのも、二年生になりほぼ強制的に任命された生徒会会長の立場も面倒くさい。



 そもそもなぜ王子だからといって生徒会に所属せねばならない?こんなもの暇なやつがやれよ。




 しかも生徒会の仕事と言っても雑用ばかりだ。



「クラスの輪を乱す令嬢をなんとかしてほしい」とかなんとか、しょうもない案件をわざわざ署名付きであげてきやがって、どいつもこいつも頭湧いてんのか。




 ああ、くだらない。




 だが、この国の責任ある立場でいる限り、期待される以上の成果を上げ続けなければならない。



 それが王族として生きる者の義務だ。




 リアムは面倒くさがりな性格だし口も態度も悪いが、根は真面目だった。



 なので、面倒だなんだといいつつも生徒会に提出された意見書にもきちんと対処する。




「はぁ…。それにしても何してくれてんだ、この女は。学園に侍女を伴うのは王族女性だけの特権だとアホでも分かるだろうが」


「フローラ・ブラウン男爵令嬢…。聞いたことないですね」


 リアムの持つ意見書を覗き込み、トーマスは「ブラウン男爵なんていましたかね?」と訝しむ。



「隣国オーリアと接する辺境に領地を持つ男だ。辺境といっても戦が起こることは未来永劫ない平和ボケした小さな領土だからお前が知らないのも無理はない」




 リアムは腐っても王族なので僻地に住む貴族であっても一応把握している。


 といっても、ブラウン領は村一つ分の領土しかなく村民が自給自足で生活しているようななんの旨味もない領地なので、リアムも名前くらいしか知らないが。



 そんなところの娘が入学二ヶ月目にしてなにやら揉め事を起こしているらしい。




「あー…めんどくせ…」



 その問題児令嬢の侍女に放課後生徒会室に来るよう伝えたが、リアムはすでに放課後が面倒になっていた。


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