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1 傲慢令嬢

連載を始めました。

よろしくお願い致します!!


「見て…フローラ様ったら、また召使いにノートを取らせているわよ」


「まぁ…。田舎の男爵令嬢ごときが、何様のつもりなのかしら」


「くすくす、そのようにおっしゃっては可哀想よ。あのような僻地に領地をお持ちのご令嬢は礼儀どころか言葉すらご存知ないからノートなんて取れないのよ」


「ふふっ、確かに!あの方ぼそぼそ話されるから何をおっしゃっているのかさっぱり分からないのよね」




 おほほうふふ、と敵意が込められた蔑笑が放課後の教室に響く。


 そのことに、まだ教室に残っている他のクラスメイト達は納得こそすれ咎める者は誰もいない。





 それは、そうだろな…。


 フローラは分厚く重たい眼鏡がずり落ちそうになるのを右手で押さえつつ、うんうんと他人事のように納得する。



 教室の一番後ろ、窓際の目立たない席に座ったつもりだったが、ジロジロと値踏みするような視線がいくつも突き刺さるのはいつものことだ。




 なんせわたす()は『傲慢令嬢』らしいかんなぁ。

 






 自他ともに認めるド田舎に領地を持つ男爵令嬢フローラ・ブラウンは、学園に通う歳になったので領地から馬車を乗り継ぎ片道七日かけてのんびり王都にやってきた。


 十五の歳になれば王都の学園に入学することは我が国、イルド王国に住むすべての貴族子女の義務である。 



 フローラの通う学園、イルドラン学園は歴代の王族もここに通う慣習があるほどの名門中の名門で、いまだにフローラはなぜ自分がこの学園の入学試験に受かったのか不思議でしょうがない。




 フローラはありふれた茶髪を二つに分けておさげにし、顔の半分はあるデカくて分厚い眼鏡をかけている。


 キョロキョロオドオドしている様は田舎もん丸出しで、本来は洗練されているはずのハイブランドの制服を着てもなぜか絶妙にダサく見える。



 ひょろりと背は高いが完全な幼児体型、かつどこにでもいる平々凡々以下な容姿、派手さなど一切ない全体的に地味なフローラが、入学早々「傲慢令嬢」という不名誉なあだ名で呼ばれることとなったのには理由がある。




 それは―――





「あら、ご覧になって。召使いがやっとノートを書き終えたようよ」


「たったあれだけの黒板の文字を書き写すのにどれほどの時間をかければ気が済むのかしらね」



「召使いに椅子をひかせて、鞄を持たせて、ノートを取らせて、ドアを開けさせて……ねぇ!フローラ様!ここは学園でしてよ!わたくし達高位貴族でさえ侍女を伴うことなく自分のことはすべて自分でしておりますの。なぜあなたのような下級貴族が召使いを伴っているのです!

 王族の方々にだけ許された特権を乱用するなど、傲慢にも程がありますわ!!」



 苛立ちが込められた一人の令嬢の言葉が、今まさに主の鞄を持ち扉を開けた侍女の後ろから教室を出て行こうとしたフローラの背中につき刺さる。



 フローラは一瞬身体をびくっとさせたが、蚊のなくような声で一言「……ごきげんよう…」というと俯いたまま教室を辞した。



 扉を押さえていたフローラの侍女は、主が通り過ぎると教室にいる生徒達をギロリと睨みつけ「ふんっ!!」と怒りを込めた手つきで乱暴に扉を閉める。




 呆気に取られたのは教室に残る生徒達だ。




「な、な、なんですの!あれは!!」


「主があれなのです、下女に礼儀を求めても無駄だというもの…。ですが、些か許される範囲というものを超えていますわね」


 このクラスの女帝的存在、公爵令嬢のアマンダ・ウィルソンが目をスッと細めてフローラが出て行った扉を見つめ呟く。



「あの芋くさい女とクラスメイトとなり早二ヶ月っ…。もうこれ以上我慢黙出来ませんわ!!」


「そうですわね……。クラスの署名を集め、あの御方達に意見書を提出することに致しましょう」


「きゃあっ!!よろしいのですか!?

 あの御方が直々にわたくし達のクラスに事情を聞きに来てくださったりするのかしら!」




 廊下を歩くフローラの耳に、教室から突如異様に盛り上がった歓声のような声が聞こえ、「な、なにごとだべ…?」と訝しく思ったが、早く寮の自室に帰りたかったので侍女と共に足早にその場を離れた。


一話あたりのお話が20話まで短めなのでサクサク更新致します!!

明日からは朝昼晩で3話更新☆ 

21話から文字数を増やしましたので、21話以降は1日1回の更新を予定しています(;・∀・)

それまでは1日3回更新予定です。

楽しく読んで頂けると嬉しいです!!

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