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第35話 魔人、レイン

 今回は、閑話でちょくちょく姿を見せていた白髪碧眼の荷物持ち「レイン」視点でのお話です。

 生きとし生けるものにはみな、すべからく役割がある。


 ()()魔の()パ者。

 人でも魔でもないコウモリのような嫌われ者。

 魔の者の間で「陰湿最悪(スニーキー・バッド)」と呼ばれ馬鹿にされている俺、レインとて例外ではない。


 役割。

 

 俺に与えられた役割とは──。


 ゼスティア王国の王都カイザスにある孤児院。

 その地下に封印された『死者の王デスサルコー』を解放すること。


 封印を施したのは、かつての賢者クレイブ・グレゴッド。


 正体不明、消息不明。


 魔族、魔王、魔に連なるもの。

 それらが今一番恐れているのが──。


『クレイブ・グレゴッドが次は自分たちに牙を向けてくるんじゃないか』


 ということだ。


 さいわい、クレイブはデスサルコーを封印した後、姿を消した。


 だが、ゆえにわからなくなった。


 奴はどうやってデスサルコーを封印したのか。


 どれほどの力を持っているのか。


 そして、やつの目的は?


 謎は波紋となって恐怖という輪郭を広げる。


 そして魔の者たちは一つの結論にたどり着いた。


「わからぬのであれば、知ってるやつに聞けばよい」


 そう。


 封印されしデスサルコーを復活させ、賢者クレイブ・グレゴッドについての情報を得る。


 しかしカイザスに張られた結界。

 孤児院を中心にいまだ広がり続けているクレイブの置き土産。

 その影響は強く、純然たる魔の存在はカイザスに近づくことすら出来ない。

 そこで白羽の矢が立ったのが──。


 人と魔の中間。


 混じり物。


 半端者。


 コウモリ野郎。


陰湿最悪(スニーキー・バッド)


 俺、レインだ。


 皮肉にも俺のスキル『美味蒙昧(ウィッシーワッシー)』は潜入にうってつけだった。


 存在感を薄くし、認識を阻害させるスキル。


 地味で陰湿。


 半端者の俺にぴったしのスキルだ。


 けど、それがちょうどよかった。


 俺は時に冒険者の荷物持ちとして。

 時に下っ端の盗賊として。

 時に物乞いとして。

 デスサルコーを復活させる方法を探った。


 そして得た結果は──。


「わからん」


 わからん。

 まったくわからん。


 色々手は尽くした。

 けどわからん。

 盗賊ギルドの頭の悪い女ボスを(そそのか)して孤児院を潰そうともしたこともあったが、上手くいかなかった。

 使えるかと思い、出稼ぎに来てる砂漠の王族に王位簒奪(おういさんだつ)を吹き込んだこともあったが、ありゃ完全に的外れだった。

 なんにしても、俺の立ち回りは全部()()

 外れだ。


 だから。


 物量作戦でいくことにした。


 魔物大量暴走(スタンピート)


 (いざな)いの宝珠(オーブ)を魔界からカイザルに向けて順に設置した。

 時間はかかるが、(じき)に狂った魔物たちがここカイザスを目がけて突っ込んでくるだろう。


 そうだ、ぶっ壊せばいいんだ。


 俺を半端者扱いし。


 (ないが)ろにし。


 (はずか)め続けてきた。


 魔の者たちに特攻させて。


 んで、混乱が起こってるうちに俺はドロンってな算段よ。


 ……チッ。


 また()()()()()


 コウモリ。

 魔の者からの使い。

 それが俺の肩に止まる。


『おい、クズ! どうなっている!? なぜワイバーンがカイザスに向かった!? しかも仕留められただと!? 貴様、よからぬことを(たくら)んではおるまいな!?』


 口うるさいお目付け役の機嫌を損ねないよう、精一杯の丁寧さをもって答える。


「ちょっとしたイレギュラーが発生しただけだ。たまたま狂化(バーサク)したワイバーンがやってきて、たまたま腕のたつおっさんが居合わせてやっつけた。それだけのこと。気にするようなことじゃない」


『おっさん? そいつは何者なんだ?』


「もう調べはついてる。ケント・リバー。昔にちょっと()()()()冒険者らしいが、すでに仕留める準備も整ってあとは実行するだけだ。弱点だって把握済みだ、心配することはない」


『失敗は許さぬぞ! なんせ貴様は混じり物の半端者、落ちこぼれの「陰湿最悪(スニーキー・バッド)」レインなのだからな!』


「わかってる。ごちゃごちゃ言うな」


『これからもずっと貴様のことを()()()()からな! ゆめゆめそれを忘れぬことだ!』


 ボンッ!


 捨てぜりふを吐いてクソコウモリは消滅。


 はぁ……。


 やるせねぇなぁ。


 さっさと全部ぶっ壊しちまいたいなぁ。


 しかもなんか最近は。


 チビの女騎士に目をつけられるし。


 よぼよぼのジジイに肩は貸す羽目になるし。


 ニラとかいうくっせ~草の入った肉まんなるものを売ってる露店で子持ちの女店主にこなかけられるし。


 はぁ……調子が狂う……。


 これも全部、あのケントとかいうおっさんが現れてからだ。


 ってことで。


 さっさとあのケントとかいうおっさんを消して。


 それから孤児院もぶっ壊して。


 その混乱に乗じて。


 魔の者からも人間からもおさらばだ。


 そんで、どっか気楽に暮らせる場所(とこ)でも見つけよう。


 この忌まわしい魔と人の混血。


陰湿最悪(スニーキー・バッド)」こと俺。


 半人半魔のレインが静かに暮らせる場所を。

 読んでいただいてありがとうございます!

 ここまで毎日五話ずつ更新してきました!

 次からは毎日一話更新になりますが『新章ダンジョン探索編』が始まります!


 武功を上げたいエルくん兄弟と狩人コビット。

 恩赦を勝ち取りたい盗賊テン。

 テンの監視役キング副団長。

 宝珠(オーブ)を見つけた場所にパーティーを案内する、スキル『幸運(ラック)』持ちのジャンヌ女騎士団副団長。

 ケント暗殺を目論む荷物持ちレイン。

 そしてな~んにも考えてないおじさんケント。


 の八人が洞窟探索に向かいます。

 少しでも「楽しみ」と思われた方はぜひ『★★★★★』や『いいね!』で応援お願いします。

 それでは、また次の話でお会いしましょう~。

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