表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

実は一番マシな人

「こんばんは。あなたを導くダークプリースト、琴吹あやめで~す」

 今日は待ちに待った、いや、逃げに逃げた初配信日。私――琴吹あやめもとい、田中結実はネット社会にその第一声を上げた。

 緻密な装飾が施された黒一色の修道服とは対照的な白い肌。目元はくっきりとしたくまができており表情も少しやつれている。見ればコメント欄も声への反応よりもこの見た目への反応の方が多い。


:声低くてかっこいい!

:顔色ヤバない?

:導く側の人が天に昇っていきそうな顔してる

:声と見た目が妙にマッチしてる

:ガチで心配になるレベル

:くまついてる子っていいよね


 数か月前、朝霧遥香からスカウトを受け、デビューの日を死に物狂いで引き延ばしてきたが、とうとうこの日が来てしまった。

「今言った通り私は聖職者なので今後は配信を通して、視聴してくれている皆さんとって救いとなるようなひとときを提供できたらなと思っています。配信ではゲームや雑談はもちろん、お悩み相談もやっていきます」


:ママ枠だ

:ついにハルカにママ枠が

:一期生は四音様を除いてやべーやつしかいないから常識枠が増えるのはうれしい

:楽しみにしてます


 何がママ枠だ。イラストに騙されてんじゃねーぞ。私は昨日まで社長のすねにかじりついてた29歳だぞ。

「さて、今日はお試しでハルカで用意してくれたお悩みに応えていきたいと思います。……なになに、『私は極度のコミュ障です。人と目を合わせるだけで慌ててしまいうまく話せません。どうすれば人とうまく話せますか?』。あー、これは私もよくわかります。実は私も人と関わるのは苦手でして。では、私が実際にやっていた方法を紹介しますね」


:あー

:リアルだな

:これ解決出来たら本物だぞ

:俺は酒の力借りる


 様々な意見が流れる中、私は生涯において変わることのないだろうその答えを言う。


「コミュ障は一生治らないのでネットの世界に逃げましょう」


:!?

:!?

:あ……

:これは……

()()()()だったかー

:清楚な時間は5分で終わった

:逃げるな卑怯者ー!


 んーと、ここからは台本なしで好きにやっていいって言われてたよね。んー、緊張する。

「あれれ~コメント欄が荒れてますね~。ネットではリアルとは違いなりたい自分になれるんですよ! このクソみたいな社会のなかで私を支えてくれた憩いの場! それを否定するものは誰であろうとぶっ〇す!」


:草w

:誰だこんな奴連れてきたのは!

:四音様の負担がまた一つ増えたなw

:仮にも聖職者がこんなん言っちゃダメだろw

:これだよこれ! これがハルカだよ!


「なんですかみんなして! 私はですね、人が堕ちた姿が大好きなんです! 現実から逃げて堕落した姿! 他人から傷つけられて泣きじゃくる姿! とーっても好感が持てます。あっ、想像しただけで濡れてきちゃうぅぅぅぅぅ!」


:誰かこいつを止めろwww

:もう終わりだよ……

:信じられるか? こいつ聖職者なんだぜ

:〈白雪桜真〉同族きちゃぁぁぁ!


「もう私は止まりませんよ。すべては私をスカウトした社長の責任! ハルカを潰すつもりで好き勝手やらせてもらいますからね‼」

 ドンッといい終わると同時に机を拳で叩いた。すると、机はメリメリと音を上げ、真っ二つに割れてしまった。上に置いていたパソコンその他もろもろも崩れ落ちる。…………やば。


:ん? 今すごい音しなかった?

:なんか壊れた?

:今の音ヤバくない?

:どんだけ強く叩いたんだよw


「…………経費って……落ちないですよね?」


:落ちるか!w

:草草の草w

:喧嘩売ったばっかの相手に泣きつく聖職者がいるってマ?


「うるさいうるさいうるさい! とにかく私は自分の欲望を満たすため、ハルカで暴れまわってやりますから! 次の配信まで全員震えながら待っているといいですよ! あーはっはっはっはっはっは!(泣き)」


:セリフがもう悪の女幹部なんよ

:なんかもう落ちが読めたぞ

:初日から隠し切れないポンコツ感

:ハルカは何でこんな子入れたんだか……


 こうしてハルカChaos四人目、琴吹あやめは誕生した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ