『ケイオス』なメンバー
初めまして、月田きいろと言います。この度は『人気Vtuber事務所、斜め上のヤバいやつらをデビューさせる。』のページを開いてくださりありがとうございます。この物語はVtuberを題材にし、話を作っていますが、僕自身は自信を持って「Vtuberには詳しい!」と言えるほどの知識はありません。生配信は数えるほどしか見たことがなく、気になったアーカイブや切り抜きを見る程度です。Vtuberにはまってからも日が浅く、2023年の正月、27番からです。そのほかの知識についても不安なところがあります。なので本作品には現実と比べて違和感のある場面があるかもしれません。それでもいいと言ってくれる人はぜひ、楽しんでいってください。
投稿頻度は安定しませんが最後まで書き続ける予定です。
「はい、ということで、ご視聴いただきありがとうございました~。ばいば~い」
……ポチッ。
「…………はあ」
配信を終え、俺—加藤秀康はため息をつく。
「あー、これほんとどうしよう」
現在俺は新設して間もないVtuber事務所『ハルカ』に一期生五月四音として所属しているVtuberだ。
事務所が設立して八か月。早くも二期生デビューの話が進んでいる。今うちの社長がスカウトしたメンバーの一覧を確認しているんだけど……これほんとどうしよう。
「もしもし遥香? 今例のメンバー確認したところなんだけど。いろいろ聞きたいことがある」
「んーヒデー? いいよいいよ、何でも聞いて」
今電話の向こう側にいるのが『ハルカ』の社長、朝霧遥香だ。自身の人望と経験、そして何より才能を活用し、競争が激しいVtuber界隈の中、たった半年ちょっとで『ハルカ』をトップクラスへと成長させた天才。
「まず、ここに書かれいることは全部ほんとうのことかな?」
「大事な資料に嘘なんか書かないよ」
「それはそうなんだけど…………ね~……」
資料に載っている候補は5人だ……いやこれを5人と言っていいのか? とにかく、うちに人数が増えることはいいことだ。現在、『ハルカ』のライバーは俺を含めて3人。企業としてはまだまだ少ないし、人数を増やしたいとは俺も思っていた。でもこれはさすがに……。
「俺は危険だと思うよ、この二期生。一企業が抱えていい人材じゃない」
「え~私はやってみたいけど。あ、あと二期生じゃなくて『ケイオス』だから」
「はい?」
「ほら、あるでしょ? 何とか期生じゃなくてチーム名みたいのでデビューするの。それそれ」
「あーなるほど。混沌……『ケイオス』か。名前はぴったりだ。でも」
「やるよ? 私は」
「……じゃあ俺に相談する意味あった?」
「ん~、ヒデが百パー反対したらやめてたけどそうでもないんでしょ?」
「まあ……ね」
朝霧遥香は天才だ。ここで彼女を一方的に否定したら彼女の可能性を閉ざすことになる。そんな愚かな真似はしない。それに彼女が俺を信頼してくれているように俺も彼女を信頼している。学生時代、彼女が夏休みすべてを使って無人島生活をしたいといった時も、サンタクロースを捕まえると言って外に飛び出し警察に職質された時も、俺は朝霧遥香について行ったのだ。