ラフ雑談 殺虫剤を持ち歩く話
僕は殺虫剤を一本常備している。
個人的には箱ティッシュと同じ感覚で、数学記号白手提げカバンの中に入れて持ち歩いている。
しかし改めて指摘されてみると、自分以外に殺虫剤を持ち歩いている誰かを、薬局帰りの買い物客以外で見たことがない。確かに。
誰かは忘れてしまったが、漫才内で存在しない事物の例えとして使われていたぐらいである。
常備するぐらい必要な一番の理由は『人生の進行が物理的に詰む瞬間を打開出来るアイテムだから』である。
昔から僕は、何故かやたらと虫に好かれる。
熟睡している学生もいるようなピロティで、菓子パンを半分だけ食べると、その間にズボン末端と靴下間のエリアの足を三ヶ所蚊に喰われていた。
幼い頃からただ只管に蚊に喰われ続け腫れまくった一生であったが、その結果シーズンの最初以外は痒さを全く感じなくなった。
毒を少しずつ摂取して自らの身体を強化する漫画的修行を一項目達成してしまった。毒耐性獲得。
挙げ句の果てには、チュウニズムというリズムゲームの旧13初理論値が『害虫』という名前の楽曲になったりもした。
他にも色々触って狙っていたが、間違ってミラーのまま選曲してしまった害虫がそのまま決まった。
終わったこと自体は自分でも不思議であったが、なんか妙にシックリは来た。
それ以外にも誰にでも雑談出来る物からそうではない物まで、虫程夥しい数とまではいかないが多くの虫エピソードが存在する。
有りがち言われがちな対策は、数多の大衆が提案してくる似非対策まで全て遂行してみたが、効果はあまりなかった。
恐らくは基礎代謝の高さが原因なので、自力での調整は相当困難である。
ならばやむを得ない。
虫々よ、私の前に立ちはだかるならば勝負だ。
全力で排除させてもらおうぞ。プシューーっ。
とはいえ道端で不意にブチ掛けることは殆どない。殺虫剤も無料じゃないねん。
主な使用場面は、夜帰宅した時に扉付近に存在している虫の駆除である。
家賃を払ってくれる虫ならば一緒に帰宅しても良いが、捕まえようとした時に目の前で小虫を捕獲してみせた蜘蛛をアルバイトとして雇用していた僕も、生憎まだ出会ったことがない。
両者のルールがダブルブッキングしていて意思疎通が出来ない場合、発生するのは何時だって何処だって何とだって戦なのである。
因みに、音ゲー用の撮影台が磁石で張り付けられて管理し易くなるから、という理由と使用場面もある。
手提げカバンユーザーにとって、所持ついでに内容物の位置を固定出来るというのは魅力的な要素である。
尚、中身は勿論殺虫剤である。
何かの時用に詰め替えて過激物質に、なんてことはしていない。念の為に補足しておく。
昔一度市バスにウッカリ落としてしまったスプレー缶が、無事処理されたことを願いつつ……。




