2024 4/25 三分間で武器三つ
その日は、鬱々としていた。
日常も変革もコケっぱなしで、より一層世界と自分がモノクロームになっていた。
用を終え帰宅した僕は、玄関に座り込んで棚の壁面を虚ろに眺める。
暫く経ち、ポケットの中のスマホに目が行く。画面には自動戦闘モードのドラクエウォークの様子が映し出されている。
そういえば散々引いて手に入らなかったメタルキングの剣が復刻していたんだったなあと思いつつガチャ画面を覗くと、復刻ガチャのバナーがメタルキングの剣だけハミ出ていてあたかも強調されているかの如きデザインである。
運営は全て分かった上で闇鍋ガチャにしている。
今となっては殆どのプレイヤーが所持しているであろうメタキン剣は、メタル系モンスター出現時に確定で先行出来るという破格の性能を持つ強武器である。
しかし他のラインナップがスクラップ揃いである為、メタキン剣の為だけに引く程の価値はこの復刻ガチャには無い。だから配布分だけにしておこう。
という過去の思考と判断を画面の明滅を朦朧と眺めながら振り返っている——つもりが気が付いた時には10連ふくびきのボタンを連打していた。
次の周年武器用に貯めていた六万ジェムがみるみる復刻防具に変わってゆく。
虹箱は出ているが武器は一本たりとも姿を見せない。平たく言うと引く程ハズレている。
しかし何も感じない。身も心も凪いでいて無。
頭のネジが吹き飛び感情のゾーン状態に入っている僕は、惨敗しても尚復刻ガチャに淡々とジェムを注ぎ込み続け、スタンプカードの限定武器確定まで来てしまう。
が、そのまま次の10連も何の躊躇いなく連打し、四分の一を乗り越えてメタルキングの剣を引き当て、そのまま指の勢いで二種類の新ガチャも10連ずつ引き、両方共限定武器を引き当てている。え?
一体何が起こっているんだ?というか何故そんなに10連を引いてしまっているんだ?
最後のたった三分で三つもの限定武器が雪崩れるように流れ込んで来た衝撃で目に光を取り戻した僕は、いつも通り手を洗いスマホをウェットティッシュで拭いてからもう一度手を洗い活動を再開するのであった。
今回の衝動的浪費は結果論的には成功に終わったが、何も当たらなかったら悲惨であるし、事実その可能性も大いにある。
ムニムニ期間の自分の制御の効かなさと、自分と課金やギャンブルとの相性の悪さを再確認するのであった。