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雑談集『◼️』  作者: ∀Z
概念
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概念 死を希う大衆へ捧ぐ思考

 今この瞬間、死を希う貴方に最後に一つだけ問いたい。

『貴方は本当に死んでしまいたいと思っているのであろうか?』


 シンキングタイム用の小空行を置き、ハッキリと声高らかに結論を述べる。

「貴方は死にたいとは思っていない。ただ生きたくないだけである」

 大衆が抱くその気持ちは、大抵の場合錯覚及び勘違いである。本心では、貴方は死を望んでいない。

 僕も貴方は生きるべきであると思う。




 人間の魅力の一つとして多様性を提示する身としては、人間や大衆が抱える問題が多様であることを多少は理解しているつもりである。

 従って、希死の念を抱いている各個体の具体的問題を、たった一つの雑談でマルっと解決してやろうなどという傲慢な意図は持ち合わせていない。無理な物は無理である。

 そしてそもそも、希死という主題は短い雑談で完結するような代物ではない。

 本能層に「生きること=善」という方程式が刷り込まれている生物が何故死を望むのか。実行に移す個体とそうでない個体の差は何か。希死の念に存在する種類の詳細。

 この種の雑談がゴロゴロと転がっており、それぞれが他の要素と絡み合っている。これらは別の雑談にて認める。




 本雑談では一先ず簡単な思考実験を提示したい。

「もし勝手気ままに希望が通るならば、どんな貴方であれば幸せな一生を送れるであろうか?」


 貴方という存在は生まれた時から様々な経験を経て今に至る。成功も失敗も積み重ね、好ましいことも嫌なことも発生し、現在困難に直面していたりもする。

 そういう枷を全て取り払って、真っ新で無条件な状態で思考して欲しいのである。

 生まれた瞬間から全く別の環境を選択しても良い。今の一生の途中から道筋を変化させても良い。現在の自分に資産や能力を付け足したって良い。自分の好きな誰かみたいな一生を送りたいと指定したって良い。目障りな存在を消し飛ばしても良い。魔法のような現象を発生させたって良い。

「貴方という存在をどのように仮定すれば、一生という問の解が幸福になるか」




 シンキングタイム用の大空行を置き、シットリと声低めに雑談を続ける。

 複雑で難しい問へのアプローチとして、極端な例を思考するという手段は度々効果を発揮する。今回の思考実験は、それを大衆にもやって貰う為の手段である。


 本問において、どのような仮定を施そうとも正解不正解は特には存在しない。当然貴方の自由である。

 しかし一つだけ強調しておく。

 上記の思考実験の問と説明において、僕は人間という単語を一切用いていない。

「もし貴方が人間種の範疇で思考していたならば、貴方はその仮定に近付けるように今直ぐ努力し始めるべきである」

 貴方は死にたいのではない。感情に振り回されているに過ぎない心情の現状を希死と錯覚したり、目前に迫る問題の整理が出来ていないだけの思考の現状を希死と勘違いしているだけである。

 貴方の現状の解決において、死は必須要素ではない。つまり貴方は『死を希っているのではなく生を避けているに過ぎない』のである。

 そういう場合、自分には見えていない容易な努力が少なからず存在する。

 まずはその存在を意識し、使える事物は惜しみなく恐れなく全て使い、思考実験の解へと歩み始めることを推奨する。

 貴方は生きるべきである。




 真に死を希う人間には、解が幸福になる仮定など存在しない。例えやりたい放題であろうとも。

 似非希死は本物に失礼なので、幸福を目指してキッチリと生き切って欲しいと、希う。

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