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優の決断と新たな出会い

 優は大会の2か月前に右足を練習中に疲労骨折していて、大会前には完治していてが


「どうしても、大会に出たい」と言っていた優に、陽子さんが、


「大会に出ても調整が出来ていないから良い成績は出せないでしょう。それに、もし何かあったら2度と大会には出られなくなるのよ。

 あなたの目標はオリンピックで優勝する事で、オリンピックに出場する事じゃないでしょう。

 お父さんと約束をしたのでしょう」と言って、


優は、オリンピックの出場を、断念していた。



選手村に着くと、陽子さんと綺麗な外国人の女性が私達を迎えに来てくれていて、

陽子さんに,マリヤのお母さんで私の母とも友達のアリスさんだと外国人の女性を紹介してもらった。


選手村に入る手続きをすませ、陽子さんとアリスさんと別れて3人で選手村の中に入ると、

 車椅子に座って居る人、義足を付けた人、白い杖を突いている人、その人達に付き添っている人など大勢の人がいて、少し驚いた。



選手村の日本人選手の集まる場所に行き、3人で座って話をしていると


部屋の入口の近くに立っていた白い杖を持った女性が隣に居る付き人の女性と何かを話して、白い杖を突きながらこっちに歩いてきた。


 座っていた私達の前まで来ると、


「あなたが中谷歩さん」と聞かれ、私は少し驚きながら「はい」と答えた。


 白い杖を持っている女性が、強い口調で


「あなたは良いよね、マスコミに注目されて。

 周りからもちやほやされて、私は目が見えなくてどれだけ苦労してここまで来たか」と、言ってきた。


 私が何も言えなくて下を向いていると、隣に座っていた優が


「あなたは生きているのでしょう。走る事も出来るのでしょう」と、強い口調で言いかえしていた。


 私は優の亡くなったお父さんや、春菜さんの事を一瞬思い

「もう、いいよ」と、優をとめた。


 白い杖を持っている女性の付き人が

失礼な事を言って、駄目じゃない」と白い杖を持っている女性に言って、白い杖を持っている女性の腕をつかんで

「失礼な事を言って、ごめんなさい」と私達に頭を下げて、どこかに言った。



 私は優達と別れて一人で部屋に入り、体の不住な人、そうじゃない人など、沢山の人達が居るけど、みんな苦しいこと辛いこと悲しい事などがあり、それぞれの人生を強く生きて来ているのだと初めて心から思った。



 パラリンピック女子マラソンの大会の前日に母が来て、


 陽子さんと優、アリスとマリアと私が選手村の入り口に母を迎えに行っていた。


 母が私達を見つけ驚きながら近付いて、マリアに向かい「久しぶりだね」と言って抱き合い、ハグをした。


 母は陽子さんを見て、笑いながら

「どうしてマリアが来てることを言ってくれなかったの」と言って、陽子さんともハグをした。


 

 私達は選手村の中にある食堂にいって、飲み物を貰いテーブルの席に着いた。


 優が昨日の白い杖を突いていた女性の事を話すと、陽子さんが

「たぶん山田純子さんの事だと思う。目が見えなくなって凄く苦労をした見たいだけど、すごい選手なのよ」と言った。


 私の母が、優に「辛い思いをしてきた人、辛い思いをしている人は沢山いるからね。

 あなたも今回、オリンピックに出れなくなって辛い思いをしたのでしょう。

 辛い思いや挫折をすれば、きっとその分、強くなれるから。

 あなたも少し、強くなったと思うよ」言い、


 優は少し、涙を堪えながら「うん」と頷いた。


 

 パラリンピック大会当日、グランドでスタートの合図を待っていると隣に山田純子さんがいて、男性の付き人と1つのロープの両端を2人で持って何かを話していた。


 何を話しているのだろうと思っているとスタートの合図がなり、みんなが一斉に走りだした。


 

 私のタイムは悪かったがパラリンピックで優勝出来て、山田純子さんは3位だった。


 陽子さんは日本マラソン会の会長をしていたので忙しく、グランドにはいなかったが母と優が出迎えてくれて、すごく喜んでくれていた。


 山田純子さんの方を見ると、初めて話しかけられた時にいた付き人の人と何かを話ながら涙を流していた。



その日の夜に選手村の食堂で陽子さんと優、アリスとマリヤ、母と私6人で話をしていると、


 山田純子さんが付き人の人とこっちに来て頭を下げながら

「この前は失礼な事を言って、ごめんなさい」と言ってきた。


 私が「もう、良いよ」と言って、付き人の人の方を見ると

「純子の母です」と、お辞儀をしてきた。


 陽子さんが

「いろいろ有ったと思うけど、今のあなたは凄い選手なのよ」と、優しく言い。


 純子さんは下唇を噛みしめ涙を堪えている様に見え、


 純子さんのお母さんが、そっと肩に手を置いた。


 私の母が「どうぞ、座って」と言って、


 2人は席に着き、話をはじめた。

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