3人での楽しき計画
1学期が終わり、夏休みに入って2目の日に優からメールがあって
[近いうちに歩の所に遊びに行こうと思っているのだけど、春菜さん、一緒に行かない。]と、書いてあった。
医学部、歯学部、薬学部、獣医学部は他の学部と違い6年生で
「1年の時は比較的事業内容や事業時間は厳しくなく、2年からはとても厳しくなる」と、父から聞いていて
私は2年の事業が終わり3年に上がる時にある編入試験を受けて合格していたので、浪人ではなく3年生からの編入生として学校に通っていて事業内容や事業時間もかなりハードだったが、どうしても行きたくてメールの事を母に話し、行く事に決め、優に
[私も、絶対に行きたい。]と、メールを送った。
2時間位してからメールの返信があって
[1週間後だけど、少し早くて朝の6時30分に東京に付く予定で、7時35分発の飛行機で、釧路空港まで行こうと思っているのだけど、どうですか。
もちろん飛行機の空席情報は調べていて、席はあいているので。」と、書いていた。
私は母に許可を取り
[わかりました、絶対に行きます。何拍位する、予定ですか。」と、メールを返した。
翌日、メールの返信があって
[朝早くに着くので、2泊する予定です。
飛行機のチケットは、こちらで取りました。
6時40分に国内線ターミナルで待ち合わせしましょう。空港に付いたら、携帯電話に電話をします。
あと、歩が【会えるのが楽しみ】と、メールを送ってきました。]と、書いていた。
優がロスから羽田に着き、2人で釧路行きの飛行機に乗った。
9時30分頃に釧路空港に着くと歩と春香さんが迎えに来てくれていて、空港を出て駐車場に向かうと、軽のワゴンタイプの白色の車が合って、春香さんがカギを取出し運転席に座り、私と優は後ろの席に座った。
春香さんが車を運転しながら「あなた達、お腹は空いていないの」と聞いてきて
優が「朝が早くて、機内食も出なくて」と笑いながら言って、私も「朝が、早くて」と言った。
春香さんは笑いながら歩の方を見て「じゃあ、幸だね」と言い、歩が頷き「そうだね」と言った。
優が、歩に向かって「幸って、なに」と聞くと、歩が笑いながら
「私達がよく行く、うどん屋で、美味しいから」と言って、私達はそこに向かった。
大きな看板が見えてきて、看板には【讃岐うどん幸】と書いていて、その下に【営業時間10時から3時頃、売切れ次第終了します。】と書いていた。
私達が店の中に入ると奥で男の人がうどんを切っていて、その男の人が手を止め1度こっちを見て「あ、ちょっと待ってな」と言って、またうどんを切り始めた。
店の中を見渡すとお客さんはまだ誰もいなく、私達一番奥のテーブル席に行き、歩と春香さんが奥側に、私と優が手前の席に座った。
優がメニューを見始め、春香さんが「今日は夕方から叔父の家でバーベキューをするから軽いもので良いのじゃない。私は、ざるうどんにするね」と言って、歩の方を見た。
歩は頷きながら「そうだね。私も、ざるにする」言い、私と優もざるうどんを食べる事にして春香さんに言うと、春香さんが大きな声で「ざるうどん、4つな」と、男の人に向かい言った。
優が春香さんの方を向いて「関西弁」と驚きながら言うと、歩が笑いながら「母は大阪出身で、母が釧路に来る前から大阪出身のおっちゃんがここでお店していて、ここに来ると母は大阪弁になっちゃうんだよ」と言った。
優がすかさず「おっちゃん、て」と聞くと、
歩が「子供の頃からここに来ていて、おっちゃんに、おじさんって言ったら『おじさんと違うおっさんや。本間はお兄ちゃんやけどな』と怒られて、それを見ていた母が『お兄ちゃんは無理があるやろう、おっちゃんにしとき』と私達に言って、それからおっちゃんと呼ぶ様になったの」と話してくれ、私達もおっちゃんと呼ぶ事にした。
おっちゃんがざるうどんを持って来てくれて、驚きた。
通常の白いうどんでは無く、おそばの様な黒っぽい色をしていた。
優がそれを見て「おそば」と言うと、おっちゃんが
「違う、香川県産小麦を石臼で挽いたやつや。皮ごと挽いてるから色が黒っぽいねん。
横に少しだけ置いてる白いうどんがあるやろう。まず、出汁に付けずに白いうどんを食べてから、出汁に付けずに石臼挽きのうどんを食べたらうどん本来の味と香りがよう分かるわ。
今、国内のうどん屋で使っている小麦粉はほとんどがオーストラリア産で国産の小麦粉はほとんど使われてない。オーストラリア産の小麦粉はタンパク質の量が多いから、もちもちとした触感が出やすいんや、その分、味と香りは弱いけどな。うどんで使われてる国内産の小麦粉は、ほとんどが北海道産小麦で、これもタンパク質の量が多いからや。
俺は讃岐うどん屋とゆう看板を出してるから、小麦粉は香川県産小麦を香川県から取り寄せてる。
もちもち間は少ないかも分からへけど、味は美味いと思うから。ま、食ってや」と言って、厨房に戻って行った。
私はうどんを真剣な顔をしながら見て、白い方のうどんを箸でつかみ口の中に入れ噛みしめた。
ほんのり甘く少しだけ小麦の香りがして、美味しいと思いながらこんどは黒っぽいうどんを箸でつかみ口の中に入れた。
噛みしめると口の中から小麦の香りが鼻に抜けて、甘みあり何とも言えない小麦のうま味が口の中で広がった。
「凄く、おいしい。」と優が言って、みんなを見た。私が
「家の近くに美味しい手打ち讃岐うどん屋さんが在って、うどんは少し透明で凄くもちもち、つるつるしているけど味はぜんぜんなくて、こっちのうどんは、もちもち、つるつる、と言うより少し硬いと言う触感で、うどんに強い香りと味があって、私はこっちのうどんの方が遥かに美味しいと思う」と言った。
カウンター奥の厨房で、おっちゃんが私の話を聞いて
「そのうどん屋は、たぶん小麦粉にデンプンか強力粉を交ぜてると思う。もし交ぜてなかったら小麦粉をうどんの形にしてから長時間熟成をさせてるんや。
デンプンを入れて作るうどんは冷凍麺用として開発されていて、一般には出回って無かったんやけど、誰でも簡単に機械で、もちもち、つるつるしたうどんが出来るように出回るようになって、今ではほとんどのうどん屋がそれを使ってる。
デンプンとか強力粉入れたら、もはやうどんと違う。中力粉だけを使うのが本来のうどんやと俺は思う。
あと、讃岐うどんは打ち立てや。本来は、小麦粉をうどんの形にしてからは、あまり熟成はさせへん。
石臼挽きのうどんは限定10食や。このうどんは、打ち立てじゃ無かったらお美味くないからな。」と言って、笑いながら
「それから『手打ちうどん』って言ってたけど、たぶん違うと思う。[手打ちうどん]って書いてる店も、ほとんどが機械でやってるからな。まぁ、[手打ちうどん]って書いとって、機械で作ってたら俺は食の偽造やと思うで。お客さんを騙しているわけやからな。
ほかにも食の偽造は、いっぱいあると思うけどな。」と言いって、おっちゃんは、をはじめ
私達はうどんを食べ終わり、歩の家に向かった。