密室のお菓子とお味噌汁と鏡
「ねえ、あなたのお菓子もちょうだいよ。」
「やだ。」
「なんでよ。けち。」
「おんなしだけ持ってるでしょー?」
「でも、そっちのもほしいの!」
「だめったらダメ!」
「はーあ。」
大きくため息をつく。
「お腹すいたのに。」
「自分の食べればいいじゃない。」
「食べたらなくなっちゃうでしょ!!」
「私のだってなくなるよ!」
「そうだけどさ。」
少し抗議するような、口調になった。
「でも。ちょうだいよ。」
「ダメだよ。」
「むー…」
そう言ったまま、少し沈黙が続いた。
「っていうか、あげられないのわかってるでしょ?」
「…わかってるよ。」
また少し沈黙が続く。
「食べたら、なくなっちゃう。」
「そうだね。」
「なくなっちゃうよ。」
「そうだね。」
「なくなったらさ、そのあとは、どうするの?」
顔をあげる。年にしては色の悪い頬のこけた幼い顔がそこにはある。その顔の後ろには、荒れた部屋が見える。同じ光景がある後ろは、振り返りたくはなかった。実際に見なければ、ないものとできるかもしれない。
「どうしたらいいんだろうね?」
うっすらと笑いかける。暗い鍵のかかったその部屋で、その顔は少し動いただけだ。
「次はいつになるのかなあ。あったかいお味噌汁、飲めたらいいのに。」
ほんのりと温かいものが頬を伝う。それを舐めると少ししょっぱい。目をつぶって、お味噌汁だと思うことにした。ますますそのお味噌汁はあふれでる。




