ミミック会②
50.5階層【魔獣窟】
本日のミミック会はタマテが選ぶ“和食処・五尾”の和食居酒屋だ。
「流石はタマテさん、オシャレな店だ~!」
「ふふ…ここの日本酒は…とても美味ですよ…」
店内は人間文化の“和”を重んじた、独特な雰囲気の装飾が施されている。囲炉裏に畳に提灯…どれもよく分からないけど、なんだかお洒落な雰囲気が漂っている。
「お待ちどう。だし巻き卵、チーズの味噌漬け、炭火焼きさんま、なすの煮びたし、椎茸のみそ焼き、天ぷらの盛り合わせです」
「おお…渋いのだ」
出される料理は装飾にも拘っていて、色鮮やかで美しい。
そしてどれも美味しそうだ。
「それでは…かんぱ~い…」
「「「かんぱーい」」」
今日はタマテがオススメする日本酒の熱燗を注文した。
味は………うん、一口で火か点くな。
「なすの煮びたし、たまに食べるといいな」
「天ぷらサクサク~」
「チーズの漬物、初めて食べるのだ」
「やっぱり…さんまは炭焼きですね…」
どの料理も普段は食べないものばかりだ。
僕たちの好みはバラバラだけど、旨いものは旨い。
魔獣窟はモンスターだけで発展した集落だけど、人間文化のいいところが詰まった住みやすい拠点になっている。人間は愚かなことばかりしているけど、生み出した酒と料理は旨い。
「そういや前に僕の討伐目的でやって来た勇者がいたんだけど」
酒の肴として前の出来事を三人に話した。
「え、大変ではないか!?」
「よく平気でしたね~流石はパンドラさん~!」
ヒウチとシュレがパチパチと拍手している。
戦ってはないんだけど。
「みんなも恨みを買わないよう気を付けるんだね。特にヒウチ、お前の標的である商人はがめついから」
「う…やはり飲み込んだ人間は消化したほうが」
「知性あるミミックがそんな鬼畜なこと繰り返したら、伝説の勇者がミミックを殲滅しに来るぞ」
「パンドラなら勝てるのでは?」
「仮に勝てたとしても、そんなミミックが生息するダンジョンに誰が来てくれる?」
ダンジョンのパワーバランスは守らないといけない。
強いからといって好き勝手していると、僕は居場所が失ってしまう。楽しく生活するには最低限のルールってやつが必要だ。
「パンドラ…やさしい~…ふへへ~」
「珍しい…タマテが潰れてる」
タマテが顔を真っ赤にして僕にすり寄ってくる。
好物だからといって強い日本酒を飲み過ぎたな。
「心配しなくても…ミミックの心証は良好ですよ……私が噂を流してるので…」
「噂?なんだよそれ…」
「その内…パンドラの耳にも…噂が届くと思いますよ~…」
どんな噂を流したんだ?
タマテのすることは油断できないからな…