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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
7/50

勇者パーティー




 30階層【幻覚の迷宮】



 本日の獲物がダンジョンにやって来た。

 良い装備をした剣士、魔法使い、僧侶の三人パーティーだ。これは持ち物に期待できるぞ~


「………」


 いきなり戦闘態勢に入る三人。

 なんだこいつら、僕をミミックだと見抜いた?


「いたぞ…標的のミミックだ」


「やっと見つけたわね」


「ただのミミックですが、油断しないように」


 …どうやら僕の討伐が目的らしい。

 僕もいろいろ恨み買ってるからね…でも盗るからには盗られる覚悟も出来てる。さぁ、かかって来いよ。


「…待て」


 魔法使いと僧侶はやる気満々だが、剣士が二人を静止させた。


「なによ?」

「ど、どうしたのですか?勇者様」


 勇者…すごく強くて勇気ある者の称号だ。

 そんな大物がミミックごときに何の用だろう。


「相手が悪すぎる」


「相手って…たかがミミックよ!?」


「ただのミミックではない。ステータスが測り切れない…しかも賢者だけがもつユニークスキルまで習得している。伝説の勇者が相手でも倒せるかどうか…」


「なっ!?」

「そんな…!?」


 勇者の言葉に側近は狼狽する。

 もしかして鑑定スキルで僕のステータスを覗いた?失礼な奴だな…次からは鑑定されないようにステータスを偽装しようかな。


「…そこのミミック!賢を有するなら人の言葉は伝わるな!?」


 勇者が話しかけてきた。


「隠れても無駄だ、姿を現せ!」


 何が無駄なんだよ。

 無視してもいいけど…どうしよ。


 ………


「なんだよ」


 僕は宝箱を開けて姿を現した。


「うわ、ほとんど人間じゃない…」


 僕の姿を見て魔法使いは驚く。

 綺麗な人の姿に成長するミミックは稀だからね。


「俺たちの依頼人は、恋人がミミックに食い殺されたと嘆いていたぞ」


 勇者は動じることなく話を続ける。


「恋人?」


「獣人族の娘だ、覚えはあるか?」


「……ああ、いたね」


 前に解放した獣人奴隷のことか。

 ってことは依頼者はあの主人だな。


「獣人の娘を食ったな?」


「………だったらなんだよ」


「俺たちはお前の悪事を許さない」


「…」


 またこの手の勇者か。


「はぁ…勇者も落ちたものだな」


「なに?」


「モンスターは悪、人間は正義。その固定観念のまま無心に自分の力と正義を振り回して勇者面するんだから。僕が何を思っているか、獣人の娘が何を思っているのか、そう考える発想にも至らないだろ」


「…!?」


 この手の勇者は自分のしていることを深く考えない、正しいんだと信じて疑わない。上っ面だけで判断して物事の本質を理解しようともしていない。


「この思考停止野郎、ずっと無自覚のまま暴れてろ」


 知能の低い奴は権力者に体よく利用されていることにも気付かない。こんな程度の低い人間が勇者を名乗っているなんて…あの賢者が嘆くわけだ。


「この…モンスターのくせに言わせておけば!」


「よせ!」


 魔法使いはやる気だが、勇者からはまだ戦意を感じない。

 こんだけ煽ったのに戦わないの?


「まさか…獣人の娘は生きているのか?」


「…さてね」


「生きていたとして、なぜ依頼主の元に帰らない?」


「なんでだと思う?その娘はケモ耳、美人、巨乳だぞ」


「………奴隷だったのか?」


「正解、よくわかったね」


「依頼主を見た時から不審には思っていた。異種族の奴隷は法で禁止されているのに…」


 意外と場数を踏んだ勇者だな。

 もう真相に辿り着こうとしている。

 

「その獣人の娘は何処にいる?」


「知ってどうする」


「我々に保護させてはくれないか?」


「……ケモ耳奴隷を仲間にしたいの?この変態」


「ち、違う!誤解するな!」


 僕の冗談に慌てる勇者。


「ミミック討伐依頼は破棄する、仇である娘が生きているのだからな。無論、奴隷から解放された娘を依頼主に帰すつもりもない。お前に言われて頭が冷えたよ…」


 ほう…反省できる勇者は良い勇者だ。

 獣人奴隷の居場所なら千里眼ですぐ見つけられる。


「居場所、教えてあげるよ」


「ありがとう。責任をもって保護するよ」


「獣人奴隷も勇者ハーレムに加わった方が幸せだろうしね」


「だから違うと言っているだろ!お前らもそんな目で見るな!」


 側近の女子が勇者を睨んでいる。

 やっぱりハーレムタイプの勇者だったか。


「今なら僕もハーレム要因に加えていいぞ」


「………」


「嘘だよ、悩むなよ」


 あいにく僕はそんなにチョロくないよ。


「勇者!!」

「勇者さま!!」


「違うんだぁぁぁ!」


 面白い奴だな、この勇者。

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