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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
5/50

ミミック会①




 50.5階層【魔獣窟】



 ミミック会。

 それはミミックだけが集まるミミックのためだけの集会だ。ダンジョンでの出来事やミミックならではの体験談など、ダンジョン生活に役立つ情報をみんなでシェアしている。


 とは言っても参加者は女子四人だけ。

 酒と食べ物を囲って愚痴を話し合うだけの飲み会だ。


 ここは知性を得るまで成長したモンスターが集まる隠れ街、魔獣窟。本日の店は僕が指名した居酒屋“酒池肉林”で集まっている。


「それじゃ、今日もお疲れさま~」


「「「かんぱ~い」」」


 まずはキンキンに冷えたビールを一気飲み。


「っは……うま~」


 この一杯のためにミミックをやっている。


「お待たせしやした~枝豆、三種の漬物、シーザーサラダ、ピリ辛ポテトフライ、チーズ唐揚げ、刺身の盛り合わせで~す」


 注文した料理が次々と運ばれてくる。

 僕らミミックの金の使い道は食べ物だけだ。物欲は買うのではなく冒険者から奪って満たす、それがミミックの習性なのだから。


「相変わらずパンドラさんの飲み会は女子力低いですね~」


 対面にいる桃髪のミミック、シュレがビールを呑みながら苦笑する。


「僕はジャンルに特化した店より、メニュー豊富な定番居酒屋のほうが好きなんだよ」


「確かにメニューが豊富だとワクワクしますよね~」


 そう言いって唐揚げを口に含むシュレ。

 

「ねぇねぇ聞いてほしいのだーパンドラー!」


 左隣からハイテンションで騒ぐ赤髪のミミック、ヒウチが僕の肩を揺らす。


「宝箱だとベテラン冒険者がかかってくれないから、今日は器を壺にイメチェンしてみたのだ」


「へぇ、どうだった?」


「アイツら迷わず壊しにかかってきたのだ!」


「そりゃそうだ」


 何故か知らないけど冒険者は壺を見つけると、覗くのではなく割る。高く売れる豪華な壺を使って誘惑しても確実に割る。

 冒険者の不思議な習性だ。


「壺を割るのも冒険者の使命なんですかね~?」


「なんだそのサイコパスは!?たちが悪いのだー!」


「私のターゲットは初心者なので、小細工なしでも面白いくらい引っかかりますよ~」


「余は商人のような大物を釣りたいのだ!何とか新しい作戦を考えねば…」


 ミミックによってターゲットはそれぞれ、シュレやヒウチも狙いを定めている。各々の実力に合わせて階層を決め、程度に合った冒険者を捕まえて生活費を稼ぐ。

 僕は特にターゲットを決めてないからランダムでスポーン階層を決めてるけど。


「パンドラは…どんな冒険者を狙っているのです…?」


「ん?」


 右隣の黒髪ミミック、タマテが漬物をポリポリと食べながら僕に問いかける。


「パンドラなら…誰でも食べれるでしょう…だから、どんな人がターゲットなのかと…」


「気分だよ。冒険者なんて世界に溢れてるから、気まぐれで目についた冒険者を捕食してる」


「実は前に、妙な噂を冒険者から聞きまして……ミミックが暴漢から助けてくれたとか…ミミックのお宝で母親が救われたとか…ミミックが奴隷の鎖を噛み砕いてくれたとか…」


「…」


「この世には…お優しいミミックもいるんですね…」


 タマテは僕を見て、お上品に手で口を覆いくすくすと笑っていた。お見通しか…まったくどうなっているんだ、タマテの情報網は。


 僕らモンスターは人の敵。


 そんな僕が何故哀れな冒険者に情けをかけるのか。それは、とある約束が僕の中に残っているからだ。

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