パーティーの荷物持ち
28階層【オークの根城】
今日はステルスモードでダンジョンを徘徊中。
誰かいないかな~
「おい!さっさと歩け!」
「は、はい…!」
早速、パーティー集団と遭遇する。
最近よく見るな、パーティーの荷物持ち。
他にもっと良い仕事を探せばいいのに…
「俺たちはボスを討伐してくる、テメェは責任もって荷物を守ってろよ!」
「…はい」
強そうな連中はボス部屋に挑戦し、荷物持ちは一人で留守番。
ボス戦に同行させてやれよ…
同行するだけでも経験値や報酬のお零れが貰えるんだぞ。これじゃ荷物持ちが何のためにここまで付いて来たんだか。
「………はぁ」
そりゃため息も出るよ。
「我慢だ…少しでもお金を稼いで、お母さんの薬を買わないと…」
母親の病気か…けっこう定番な薄幸少年だな。
こんな生活を続けてもジリ貧だろうに。
「ブルル……」
「…!モンスター!?」
パーティーの荷物持ちはモンスターと遭遇してしまった。
なんでボス部屋近辺の掃討をしてないんだ、あのパーティーは。
「…守らなきゃ」
震えた手で剣を構えるパーティーの荷物持ち。
相手は大型のオーク、戦力差は圧倒的だ。
………
悪く思うなよオーク、今日は豚肉が食べたい気分なんだ。ダンジョンは弱肉強食なんだし文句なんてないよな?
“捕食”
「ブモオオォォ!?」
ばくん!
捕食完了。
僕レベルのミミックになれば、相手が宝箱に触れずとも捕食することが可能。実力者には通用しない技だけど、オーク程度なら余裕だ。
後で焼いて食べよう。
「………あれ?モンスターは?」
急にオークが消え、少年はキョロキョロと困惑している。
恐ろしく速い捕食。
勇者じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「…宝箱だ!あのモンスターが落したのかな?」
おっと、うっかりステルスを解いちゃった。
「あ、開けてみようかな…」
パーティーの荷物持ちはボス部屋の扉をチラチラ見つつ、恐る恐る僕の宝箱を開けた。
「わぁ……すごい大金だ」
前に奪った金、そういえば奥にしまうの忘れてたっけ。まぁ金なんて有り余ってるし取られちゃってもいいか。
「これだけあれば、お母さんの薬だけじゃなく治療も…!」
曇っていた少年の表情が晴れる。
若者の未来はキラキラと輝いてていいな。