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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
28/50

魔力測定




 50.5階層【魔獣窟】



 今日は拠点で冒険者から奪ったアイテムを整理している。

 いろんな異世界のいろんな冒険者から手に入れた戦利品、時々倉庫整理しないと何が何やら分からなくなる。


「威力9999の魔剣…これもいらないな」


 チート装備はなるべく回収してるけど、すぐに処分する。これは努力を嫌う矮小な冒険者を脳死させるイカサマ、思い上がった神が生み出した低俗で粗悪な凶器。

 チートで救われるものなんて、神々が用意したご都合主義だけだ。こんなものがダンジョンや正当な異世界に出回ったら、瞬く間に秩序が崩壊し世界は破綻する。


 まったくチートは度し難い。

 ありのままの自分で世界を楽しめよ。


「パンドラ…見てください」


「ん?」


 隣でアイテム整理をしているタマテが水晶のような玉を差し出す。


「何それ?」


「魔力レベル測定器です。これに触れるとレベルが測れるのですよ…」


 タマテが水晶に魔力を込める。


“レベル142”


 水晶に数字が浮かび上がった。


「ああ、鑑定をアイテム化させたやつか」


「面白いでしょう…?」


 広い世の中にはいろいろなアイテムが存在する。だからこそミミック活動は楽しい。


「余もやるのだー!」


 ヒウチが横から測定器を奪い取る。


“レベル158”


 お、タマテよりちょっと強い。


「私はどうかな~」


 シュレも魔力測定をする。


“レベル105”


 シュレは初心者しか相手しないから、こんなものか。


「う~ミミック四天王では私が最弱ですね~」


「別にレベルなんて…」


「次はパンドラさんの番です」


 シュレが僕に水晶を渡す。


「…」


 仕方ないな…

 僕は水晶に魔力を込めた。


 パリーン


 ………


 魔力測定器の水晶が割れた。


「測定不能ですね…」


「ごめん、壊しちゃった」


「流石です…パンドラ…」


 タマテが嬉しそうに水晶の残骸を拾う。

 僕も手伝おう。


「ふふー!どうやら余がミミックの中で最強のようだな!パンドラは例外として…」


 ヒウチが嬉しそうに腕を組んでいる。


「レベルなんかで強さを判断しない方がいいよ。僕らミミックにとって、レベルはそこまで重要じゃないから」


「そうなのか?」


「ミミックが持つ“強制捕食”は相手のスキルを無効化できるけど、捕縛できるかは力勝負になる。ミミックはそこまで力の強い種族じゃない。成功率を上げたいならレベルよりも、各々が持つ“固有スキル”を磨いた方が有効だ」


 ミミックの三人はそれぞれ、固有のスキルを習得している。


 シュレは“空猫”

 ヒウチは“絶火”

 タマテは“老化”


 そのスキルを有効活用すれば、レベルによる筋力勝負よりも効果的に相手を捕縛できる。


「現にヒウチよりタマテの方がミミックとしての功績は上だろ」


「ぐぬぬ…確かに」


「逆もまた然り、数値に惑わされて獲物を選ぶと痛い目に遭うぞ」


「むうー」


 ヒウチは反省している。

 ダンジョンの世界では慢心して得することなんて一つもない。


「パンドラの固有スキルって…どんなのですか…?」


「え?」


 タマテが僕の顔を覗き込む。


「今まで一度も見たことがないので…」


「…」


 僕が固有スキルを使う機会は滅多にない。

 ()()の時に少し使うくらいだ。


「僕は“強制捕食”だけで十分だから、他のスキルは使わないよ」


“修復”


 拾い集めた水晶の残骸に魔法をかけ、元の綺麗な水晶に戻す。


「あら…」


「とにかく、こんな道具で測る数値なんかに惑わされたらダメだぞ」


 レベル測定…面白いけど、玩具の域は出ないよ。

 レベルで測れるのは数値だけ。


 数値だけでは生物の価値は測れない。

 信念、知識、哲学、経験、人望、スキル、その他もろもろ…それらを磨いてこそ、生物は価値を高められるんだ。

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