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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
27/50

王道パーティー




 62階層【結晶の丘】



 ダンジョンに五人編成の盤石なパーティーがやって来た。


 パーティーはミミックの天敵だ、一人を捕食しても他の仲間が攻撃して袋叩きにされるからだ。もっともソロでこのダンジョンに潜り込んでくる阿呆は稀だけどね。

 もちろん僕には対抗策がある、開けたらまとめて無力化してやろう。


「宝箱か…」


「ミミックかもしれないぞ、気を付けろ」


 パーティーが僕を見つけて警戒態勢に入る。

 ダンジョン上階の冒険者なら、慢心してすぐ開けちゃう奴も多いんだが…慎重派なリーダーだな。


「魔法を頼む」


「はい」


 魔法使いが僕に向けて魔法を放つ。


“ファイヤーボール”


 ドォン!


 ミミックを刺激しつつ宝箱が壊れない絶妙な威力、経験豊富な魔法使いのようだな。相手が僕でなければお見事だよ。


「……大丈夫そうですね」


 魔法を食らっても僕は動じない。

 さぁ…開けに来い。


「いや、待て」


「え?」


 リーダーが仲間たちを静止させる。


「妙だ…宝箱に傷どころか焦げ目もついていない、硬すぎる」


「確かに…」


「高ランクのミミックである可能性がある、警戒しろ」


 そういう見破り方もあるのか…

 レアスキルの鑑定に甘えるマヌケとは違う、経験で僕の正体を見抜いた。


「そういえば最近、妙な噂を耳にした。ミミックの上位に大ボスすら凌駕する隠れボスがいるとか」


「あれがそうだってのか?」


「確証はないが、警戒は怠るな」


 ぐぬぬ…情報収集も抜かりない。


「だが上位のミミックなら倒せば報酬は期待できる」


「…」


「強敵と戦う準備は出来てる。どうするリーダー」


 好戦的な奴がパーティーに混じっているな。


 僕にはミミックとしてのプライドがある。

 自分から出てって冒険者を襲ったりはしないし、宝に興味もなく襲い掛かる戦闘狂とかは無視してる。勇者パーティーみたいに討伐目的で来る奴は、ちょっと力の差を見せてお引き取り願ってる。


 だが無暗に宝箱を開ける奴は容赦なく捕食するし、ミミックの内包した宝を狙って挑むなら完膚なきまでに潰す。

 つまり…挑むなら受けてやるぞ。


「………引くぞ」


 リーダーが決断した。


「俺の直感だがあれはダメだ」


「なんだ、無敵のリーダーが弱腰だな」


「俺が無敵なのは、勝てるかどうかを見定められるからだ。あの宝箱を開けると…世界が滅ぶレベルで危険だ」


「マジか…」


「無視して先を急ごう」


「わかったよ、リーダー」


 むむむ…


 経験豊富で警戒心の強いリーダー。

 主張は強いがリーダーを信じて従う仲間。


 やはり統率のとれたパーティーを騙すのは難しいな。

 僕も何か対策を考えないと。


 今回は僕の負けだ…

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