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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
22/50

無自覚チート




 23階層【妖精の森】



 ここは綺麗な自然が魅力的な森。

 そんなダンジョンのはずなのだが…


「…なんだこれ」


 美しい自然は焼かれ、地面に巨大な穴が開いている。地形もめちゃくちゃ…幻想的な世界観が台無しだ。


 これはモンスターの仕業じゃない。

 誰がこんなえぐいことしたんだ?


「あ、パンドラ!大変なのだ!」


「ヒウチか」


 ミミック仲間のヒウチがいた。

 ボロボロだけど、何かと戦ったのか?


「何かあったの?」


「急に変な人間が現れて、大魔法でモンスターも自然も地形もめちゃくちゃにして去って行ったのだ!余はなんとか魔法範囲外に逃げ込めたのだが…」


「…」


 そんな非常識なことをする人間は…奴らだけだ。


「無自覚チートの仕業か」


「………なんだそれ?」


「努力なしで力を手に入れ、それを自覚していないイカれた人間のことさ。こうやって好き勝手に暴れてモンスターを蹂躙していくんだ」


 自分が何をしているのか微塵も自覚しないで破壊行為を繰り返す、この世で最も非常識な人間。神々の悪戯で生み出された災害のようなものだ。


「パンドラー!そんな非常識な奴ら駆除してくれー!木々たちも妖精たちも悲しんでいるぞ!」


「やだよ、知性の無いサルの相手なんかしたくない」


 僕としても無自覚チートとは関わり合いたくない。

 チートだから無駄に強いし。


「だがこのままではダンジョンの生態系が…」


「安心しろ。それに害獣駆除は僕らミミックの役割じゃない」


「?」


 チートがいるとダンジョンの秩序を乱れる。

 その秩序を誰が守っているのか、僕は知っている。





 後日、僕とヒウチは再び妖精の森に箱を運んだ。


「綺麗になってるのだ…」


 ヒウチが周囲を見渡して呟く。

 地面に開いた巨大な穴はなくなり、木々は全て復活していた。妖精たちも嬉しそうに羽を広げて踊っている。


「因みに例の無自覚チートは死んだよ」


「パンドラがやったのか!?」


「僕じゃない…96階層【世界樹の森】の大ボス“世界樹人(エルダートレント)”はダンジョン全ての自然と感覚を共有している。ここの自然破壊に怒って無自覚チートを排除したんだ」


「なんと…」


「荒らした自然も元通り…言っただろ?僕らミミックの出る幕じゃないって」


「そうか、階層90代の大ボスは頼もしいな」


 ダンジョンの91~99に生息する大ボスは、このダンジョンを気に入っている。秩序を乱しながら暴れる生物には容赦しない。余所の異世界ならいざ知らず、この正当なダンジョンでは無自覚なんて知能がない生き物は真っ先に淘汰される。


 それにチート、チーター冒険者なんてバグは修正されて然るべきだし。


 …僕はどうなんだって?

 ミミックだからいいんだよ。


「これでダンジョンも平和だな!」


「どうかな…神共は無自覚チートが大好きだからな。止めどなく量産して異世界に放ってる、今後も第二第三の無自覚チートが生まれるだろう」


「………………………」


 ヒウチは言葉を失っていた。


 悲しいけど最近の異世界って、どこもそうだから。

 モンスターの生きづらい世の中だよ。

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