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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
21/50

ミミック会➄




 9.5階層【つどい亭】



 そしてやってきたミミック会。


 店はもちろん“つどい亭”だ。

 人間とモンスターが行き来する酒場は本日も大盛況。なのに従業員は一人と一匹、ミミックのモンスターであるツヅラと人間の少年ナナだけだ。


「…」


 ナナは慎重に飲み物を運んでいる。


「料理が出来たぞ~」


 この店の調理担当はもちろんツヅラだ。

 しかもツヅラは異空間魔法が得意だから、料理の給仕も自分の力だけでこなせる。目の前に開いた黒い穴から次々と料理が運ばれていく。


 対してナナの非効率といったら…

 どう見てもナナは役に立ってはいない……のだが。


「大丈夫か?あのウェイトレス」

「見ててハラハラするぜ」

「がんばれ少女!」


 他の客はナナの頑張る姿を見て一喜一憂している。

 人間はナナの性別を勘違いしてるな…


「これはこれで、つどい亭の花になりそうですね~」


「ふふ…可愛いですよね…」


 シュレとタマテもお酒を飲みながら楽しそうにナナを観察していた。


「一人前になるにはほど遠いな」


「元々ツヅラの能力だけで切り盛り出来てるし、問題はないだろ」


 ヒウチと僕はナナの頑張りには興味がない。

 僕らは花より団子派だ。


「…」


 ナナが追加の酒を持ってきた。


「………」


「……ん?」


 お酒をテーブルに置いた後、ナナは去らず僕の顔をジッと見ている。


「なんだよ…」


「…」


 相変わらずナナは喋れない。


「パンドラ…ナナは褒めて欲しいんですよ…」


「なんで?」


「がんばって…働いてるんですよ…?」


「従業員なら酒を運ぶくらい普通だろ」


「も~…」


 タマテが呆れている。

 なんだ、僕が間違ってるのか?


「他の客にもこんな感じなのか?」


「ナナがそんなことするの、パンドラが初めてじゃぞ~」


 遠くからツヅラの声が飛んでくる。


「やっぱり拾ってくれたパンドラさんが特別なんですね~」


 その様子をシュレは和やかな顔で眺めていた。

 ただ拾っただけなんだけど…しょうがないな。


「その調子でがんばれよ」


「!」


 適当に褒めて頭をぽんぽん叩くと、ナナは嬉しそうに店の中へ消えて行った。


「可愛いですね…」


「いいな~私も懐かれた~い」


「まるで親子だな」


 周りからは好評みたいだけど、なんともやりずらい。

 少し通いずらくなったな…

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