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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
20/50

看板娘になる少年




 9.5階層【つどい亭】



 隠しダンジョンにあるツヅラが開いた酒場の名前は“つどい亭”と呼ばれている。本日もつどい亭は様々な客で賑わっていた。


「それじゃ、少年ちゃん。食器の片づけ頼むぞ」


「…」


 可愛らしいメイド服を着た少年が、恐る恐る空になった食器を片付けている。その様子を他のお客さんが不思議そうな目で眺めていた。


「なんだツヅラさん、随分と可愛い店員を雇ったな」


「うむ。知り合いのミミックに押し付けられてな…」


「にしても……危なっかしいな」


 小さくて非力なウェイトレスは、大ジョッキに注がれたビールを運んでいる。


 ガシャーン


「あぶな!」


 少年は案の定、足を踏み外しジョッキが宙に浮く。

 近くに座っていた人間の客が慌てて空中に浮いたビールを回収し、モンスターの客は転ばないようウェイトレスの少年を支えてくれた。


 ツヅラはパチパチと拍手する。


「ナイスフォロー」


「じゃなくて、危なっかしいよ!」


「大丈夫、ウチの客は凄腕じゃからフォローしてくれる」


「店員のフォローを客にさせるのかよ!?」


「別に助けなくてもよいぞ。見棄てられるならな」


「…」


 助けられた少年は、申し訳なさそうに助けてくれた二人に頭を下げていた。その一生懸命な姿を見てしまったら誰も責めることが出来ない。


「………成長を見守るのも一興か」


「………ま、それも面白そうだ」


 人間とモンスターの客は生暖かい目で少年の頑張る姿を見守った。





 ………


 千里眼で見るかぎり、上手くやってるみたいだな。


「パンドラ…あの子の名前はどうします…?」


 タマテが僕に聞いてきた。


「名前?」


「パンドラが拾ったのなら…パンドラが名付けるべきです…」


「なんでもいいよ、もう僕には関係ないし」


「身寄りのない少年です…名付け親になってみては…?」


「…名付け親か」


 改めて思うと僕と子供って、僕と賢者の関係に似てるな。だからといって特別な感情なんてないけど…名前くらい付けてやるか。


「ナナ」


「へぇ…由来はあるのです…?」


「七階層で拾ったから」


「雑…でも可愛いと思いますよ」


「ふん」

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