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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
2/50

見習い冒険者 □




 1階層【始まりの迷宮】



 コツ…コツ…コツ…


 薄暗いダンジョンに響く足音。


 僕は最強のミミック、パンドラ。

 本日の獲物がダンジョンにやって来たようだ。今日はどんな冒険者が僕の餌食になるかな?


「えっと…こっちであってるのかな?」


 松明を片手に持つ軽装備の少女。


 うーん…どこをどう見ても見習いの冒険者。どうやら今日の僕がいるダンジョン階層はかなり下の階みたいだ。


「あ、宝箱!」


 見つかってしまった。

 初めての宝箱発見なのか、冒険者はキラキラと目を輝かせている。


 …初めての宝箱がミミックだなんて、ちょっと可哀そうだよね。僕の宝物コレクションに余った魔石があったっけ。


「何が入ってるかな~」


 見習い冒険者はなんの警戒もなく僕の宝箱を開けた。


「これ…魔石だ!やったー!」


 宝箱の中にある魔石を手に入れ大喜びしている。

 魔力がいっぱい詰まった便利な石、魔石。それもけっこう上位冒険者から奪った魔石だから魔力濃度も十分、初心者でも用途はいくらでもあるだろう。


 こんな初心者を捕食しても大した物は奪えないし、トラウマになってダンジョンに来なくなるのも困る。これからも精進して僕が狙うに相応しい立派な冒険者に育つんだぞ。


「お、上位魔石じゃねぇか!寄こせ!」


「あ…」


 すると通りすがりの冒険者が横から割って入り、見習い冒険者から魔石を奪っていった。


 ………なんだこの野郎。


 横取りするとはいい度胸してんじゃねえか。僕の宝に手を出して、ただで済むと思うなよ。


“強制捕食”


 これはミミックだけが保有するユニークスキル。

 “宝箱を開けた者”“宝物に触れた者”を対象として、対象がもつ全てのスキルを無効化して捕食する絶対強制捕縛スキルだ。


 ばくん!


 条件を満たした横取り冒険者をあっさりと捕食した。


「ぐわあああ!ミミックだったのかよぉー!?」


 どれコイツの所持品は……へぇ、生意気にも大金持ってんじゃん。こうやって初心者狩りを繰り返してせこい金を稼いできたんだろう。

 有り金の半分は残してやるよ。


 ペッ


「ひ、ひいいいいい!」


 吐き出した横取り冒険者は涙目になって立ち去って行った。


「これがミミック…どうして私の時は反応しなかったんだろう?」


 見習い冒険者は不思議そうに僕を観察している。


 結局、怖がらせちゃった。

 さっさと落ちている魔石を拾って帰りな。


「………」


 見習い冒険者は魔石を拾い、宝箱である僕に頭を下げた。


「ありがとうございます!」


「………」


 宝箱に礼を言うなんて、変わった冒険者だ。




挿絵(By みてみん)

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