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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
16/50

隠しダンジョン




 9階層【生きる大森林】



 今日スポーンしたダンジョンは自然があふれる階層だ。

 ちょっと徘徊して森林浴でも決め込むか。


「…ん?」


 この草むらの先、偽装魔法がかかってる。

 僕の魔眼は魔力を見抜く。偽造されてても痕跡の魔力が漂っていたら逆に目立つんだよね。


 気になるし…ちょっと行ってみるか。


 ………


 自然と魔法に隠された先には、洞窟があった。


 これは…あれかな?

 隠しダンジョンってやつかな。


 どれ、このダンジョンの隠し要素がどれほどのものか覗いてみよう。





 そんな洞窟の先には、酒場があった。


 ………想像してたのと違う。


「お、新しいモンスターが迷い込んできたぞ」

「ミミックか、店長と同じだな」

「へぇ…けっこう可愛いじゃん」


 店内は多くの客で活気にあふれていた。


 しかも、人間とモンスターが仲良く酒を飲んでる。

 人間陣は僕を見ても恐れる様子もなく、むしろ歓迎ムードで迎えてくれた。


「あのミミック……まさか、パンドラさん!?」

「マジで!本物!?」

「え…どうなんのこれ…?」


 逆にモンスター陣は僕を歓迎せず困惑している。

 なんでだよ…

 

「なんだ、知ってるミミックなのか?」

「モンスターの中で最強とうたわれるミミックだ」

「そんなに強いの?」

「ここのダンジョン最上層ボス、古龍様と同等かそれ以上って噂だ」

「マジか…」


 すぐに僕の噂が店内を飛び交う。

 すると、店の奥から僕と同じミミック種の女がやって来た。


「おお、ついにバレたか」


「……なんだ、ツヅラじゃん」


 そのミミックは僕の顔見知り、ツヅラだった。

 戦闘能力がないタイプだから、狩りには出ず魔獣窟で商人をやっているミミックだ。そういや一人で店を建てるって前に言ってたっけ。


「店を開くとは聞いてたけど、魔獣窟の外で開いたの?」


「そうなのじゃ~魔獣窟に建てても面白くないじゃろ」


「それはいいけど…なんで人間まで混じってんの」


「実は店を開店した第一号の客が人間でな、酒を交えて話しているうちに意気投合してしまった。そこから変に噂が広まり、このありさまじゃ」


 なるほどね…

 ダンジョンは冒険者とモンスターが行き来する。ダンジョンに建てた酒屋だからこそ出来る異種間酒屋だ。


「でも大丈夫なの?人間嫌いなモンスターに知られたら潰されんじゃない?」


「その時が来たら、諦めるのじゃ」


 見切り発車だな…

 だが、魔獣窟の外でも酒が飲める隠れ家があるのは僕としても喜ばしい。


「この店、僕が保護してやろうか?」


「え?」


「因縁を付けられたら僕を呼べ、黙らせてやるから」


「それはありがたいが…よいのか?」


「無償とはいかないよ?一杯くらいは無料にしてほしいなぁ」


「………ふふ、等価交換じゃな」


「そゆこと…ほら、この店自慢の酒を用意しな」


「承知」


 ツヅラは不敵に笑い店の奥に消えて行った。


 僕は適当に空いている席につく。

 今日は真面目にミミックしないで飲んで食べる日にしよ。


「パンドラといったな、どうやって強力な力を得たんだ?」

「強いミミックってレアアイテム持ってるよね、何か交換しない?」

「70層以上の階層に行ったことあんのか?」


 人間たちが僕の元に集まって質問攻撃を仕掛けてきた。


 保護すると言った手前だけど、不用心だな…

 でもツヅラの酒場ルールなら、店内では人間とモンスターの敵対関係は無しだ。郷に入っては郷に従え、此処にいる連中はただの飲み仲間なのだから。

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