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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
15/50

戦闘狂




 40階層【行き止まりの迷宮】



 武道家みたいな奴がダンジョンを歩いている。

 今日はこいつをターゲットにしようかな。


「見つけたぞ、ミミック」


 …あれ?

 もう正体がバレた?


 今回はステータスは偽装したし、擬態も完璧なはずなんだけど。


「茶色い箱…只ならぬ気配。お前だろ?勇者でも勝てないミミックってのは」


「…」


「俺は強者に飢えている…戦おうぜ」


 …戦うことが目的で僕を探してたのか?


 私怨でも依頼でもない、僕が強いという噂に興味をもった戦闘狂ってところか。鑑定スキルなしで僕を見抜いたのは、感覚とセンスで戦うタイプ特有の直感スキルによるものだろう。


「はぁ!」


 ドオォン!


 戦闘狂は僕の宝箱にかかと落しを仕掛けた。その衝撃は宝箱を通して、ダンジョンの地面に大きな亀裂を走らせる。


「………かてぇな」


 そんな打撃じゃ箱は壊れないよ。

 逆に反動で足を痺れさせる戦闘狂。


 うーん…弱いなコイツ。


「おい、いいかげん殻にこもらず姿を現せよ。俺一人で盛り上がって馬鹿みたいだろ」


 ………まいったな。


 逃げてもいいけど、しつこいんだよな…この手の奴は。

 仕方ないから僕は姿を現す。


「なんだ、メスだったのか」


「…」


「だが手加減はしないぜ!」


 はぁ…今日は厄日か。

 適当に力の差を見せつけて帰ってもらお。





「はぁ…はぁ…はぁ…」


「…」


 僕は何もしてないけど、攻撃を続ける戦闘狂は異様に疲弊している。もしかしてこいつ、攻撃する度に代償を払う自爆攻撃スキルを使用してるな。


「クソ…どこもかしこも柔らかいのに、砕けない…引き裂けない!」


 悔しそうに呻く戦闘狂。

 通常のミミックなら宝箱が殻で中の本体が弱点なんだけど、僕の肉体強度は宝箱の百倍以上だ。宝箱も壊せないで僕本体にダメージを与えられるわけない。


「まだやるの?」


 もう力の差は分かっただろう。


「ようやく口を開いたな……まだだ、お前はまだ俺に攻撃をしていない!」


「お前、ミミックの生態を知らないの?」


「知らん!」


「…」


 馬鹿だ………戦闘馬鹿だ。

 ミミックは力で相手を組み伏せるモンスターじゃないっての。


 もういい、殴る。


“転移”


“打突”


 転移魔法で戦闘狂に懐に潜り込み、腹に拳をぶつける。


「ぐ…!」


 威力は戦闘狂が放つ最大威力の十倍くらいに調整したから、この拳を食らえば嫌でも力の差を理解するだろう。


「げほ…」


「これで満足?」


 戦闘狂は膝をつく。

 どのみち限界のようだな。


「生まれて初めて負けたぜ……勝てる気がしねぇ」


「僕と戦うには早すぎたね」


「…くくく、まったくだな…ここで終わりか」


 力なく笑う戦闘狂。

 このままだと死にそうだな。


 ………


 ポーションくらいはくれてやるか。

 それ、だばぁ~


「…おまけに助けられるとはな」


「僕に挑みたかったら今の百倍以上強くなって、神器クラスの武具を固めてから来い。弱い上に丸腰なんて普通は相手にもしないんだぞ」


 何か奪おうにもこいつ、まともな装備を一つも身につけてない。

 どんだけ脳筋なんだよ。


「いい目標が出来た。次は負けねーぞ、ミミック」


 そう言って戦闘狂は立ち去って行った。


 時間を無駄にしたような気がするけど、アイツが武神クラスに成長してお土産を持って再戦に来るなら大歓迎だ。

 期待しておこう。

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