裏切られた回復士(少年)
24階層【毒沼の湿地】
少年が倒れてる。
…
“鑑定”
うわ、また死にかけの回復士だ。
ちょっと捨てすぎじゃないか?
こいつも覚醒しなさそうだな…仕方ない。
「げほ…!」
一人助けたなら二人も変らない。
エリクサーも安くないんだぞ。
「う………よくもあいつら…復讐してやる…!」
意識を取り戻した少年はそう呻く。
ほう…今度の回復士は復讐の意思があるぞ。
「目を覚ましたか」
「モンスター…!?」
少年は僕を見て警戒するが、まだ完治していないから起きれない。動けない少年は徐々に冷静さを取り戻し自分の現状を理解する。
「まさか……モンスターが、俺を助けた?」
「何か感想はある?」
「…礼は言わないぞ」
「求めてないからいいよ」
つんけんした少年だな。
「復讐したいの?」
「………モンスターには関係ないだろ」
そう言いつつも、復讐に目覚めた少年の瞳は本気だ。
…ちょっとからかってみるか。
「僕は復讐を応援するミミックさ。復讐に燃える君にこれをあげよう」
宝物コレクションからアイテムを取り出し、少年に渡した。
「なんだ、この杭は…?」
「対象者と使用者を呪うアイテムだ。使えば相手もお前も絶対に幸せにならないぞ」
効果は折り紙付き、最上級の呪いアイテムだ。
「…」
だが少年は杭を受け取ろうとしなかった。
「何か不満でも?」
「…!」
どうせ、自分も呪われるデメリットが気になるんだろう。
「まさか復讐を覚悟しといて、自分の保身を得ようとか考えてる?そりゃ筋が通らないだろ」
「なんだと…?」
「ミミック界隈の名言を教えてあげる。「騙される方が悪い」だよ…復讐は自分の欠点を棚に上げた自己満足に過ぎないんだから、高い代償を払うのは当然さ」
復讐とは自分の一生を全て捨てた、幸せを感じられない苦難の道。そんな復讐を終えても得られるものは、一時の快楽と虚無だけだ。
「……上等だ」
少年は呪いの杭を受け取った。
「俺は復讐に生きる…愚かだと笑うか?」
「応援してるって言ったじゃん。復讐劇は見る側からしたら楽しいからね」
「ふん、変わったモンスターだな」
「最後にアドバイスをあげるよ」
僕は前に助けた回復士の少女を思い出す。
「似たような境遇の回復士を前に助けたんだ。そいつは憎悪を強い意志で抑え、希望を求めて前に進んだ」
「…!」
「この世界には希望がある。まぁ、過去を貪る復讐者には関係ないがな」
「………」
「あと、そのトゲのある態度は直した方がいい。それじゃパーティーに嫌われて当然だ」
「…ふん」
傷が癒えた少年は杭を持って立ち去った。
さてさて、あの杭をどう使うかな。




