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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
12/50

裏切られた回復士(少年)




 24階層【毒沼の湿地】



 少年が倒れてる。


 …


“鑑定”


 うわ、また死にかけの回復士だ。

 ちょっと捨てすぎじゃないか?


 こいつも覚醒しなさそうだな…仕方ない。


「げほ…!」


 一人助けたなら二人も変らない。

 エリクサーも安くないんだぞ。


「う………よくもあいつら…復讐してやる…!」


 意識を取り戻した少年はそう呻く。

 ほう…今度の回復士は復讐の意思があるぞ。


「目を覚ましたか」


「モンスター…!?」


 少年は僕を見て警戒するが、まだ完治していないから起きれない。動けない少年は徐々に冷静さを取り戻し自分の現状を理解する。


「まさか……モンスターが、俺を助けた?」


「何か感想はある?」


「…礼は言わないぞ」


「求めてないからいいよ」


 つんけんした少年だな。


「復讐したいの?」


「………モンスターには関係ないだろ」


 そう言いつつも、復讐に目覚めた少年の瞳は本気だ。

 …ちょっとからかってみるか。


「僕は復讐を応援するミミックさ。復讐に燃える君にこれをあげよう」


 宝物コレクションからアイテムを取り出し、少年に渡した。


「なんだ、この杭は…?」


「対象者と使用者を呪うアイテムだ。使えば相手もお前も絶対に幸せにならないぞ」


 効果は折り紙付き、最上級の呪いアイテムだ。

 

「…」


 だが少年は杭を受け取ろうとしなかった。


「何か不満でも?」


「…!」


 どうせ、自分も呪われるデメリットが気になるんだろう。


「まさか復讐を覚悟しといて、自分の保身を得ようとか考えてる?そりゃ筋が通らないだろ」


「なんだと…?」


「ミミック界隈の名言を教えてあげる。「騙される方が悪い」だよ…復讐は自分の欠点を棚に上げた自己満足に過ぎないんだから、高い代償を払うのは当然さ」


 復讐とは自分の一生を全て捨てた、幸せを感じられない苦難の道。そんな復讐を終えても得られるものは、一時の快楽と虚無だけだ。


「……上等だ」


 少年は呪いの杭を受け取った。


「俺は復讐に生きる…愚かだと笑うか?」


「応援してるって言ったじゃん。復讐劇は見る側からしたら楽しいからね」


「ふん、変わったモンスターだな」


「最後にアドバイスをあげるよ」


 僕は前に助けた回復士の少女を思い出す。


「似たような境遇の回復士を前に助けたんだ。そいつは憎悪を強い意志で抑え、希望を求めて前に進んだ」


「…!」


「この世界には希望がある。まぁ、過去を貪る復讐者には関係ないがな」


「………」


「あと、そのトゲのある態度は直した方がいい。それじゃパーティーに嫌われて当然だ」


「…ふん」


 傷が癒えた少年は杭を持って立ち去った。

 さてさて、あの杭をどう使うかな。

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