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ミミックの日常  作者: 本の繭
パンドラ編【短編】
11/50

裏切られた回復士(少女)




 22階層【グールの墓】



 少女がダンジョンで倒れてる。


 …


“鑑定”


 …ふむ、MP切れの回復士か。

 役割を終えてパーティーに捨てられたのだろう。別に珍しいことじゃないけど、酷い末路だよね。


「…けほ」


 まだ生きているが、毒状態で後がないぞ。


 さてどうなる?

 都合よくスキルでも覚醒するかな?


 ………


 そう都合よくはいかないか。


 毒もあるからエリクサーを使おう。

 ほら飲め飲め。


「けほけほ」


 よし、後は回復を待つだけだ。


 ………


 何してんだろ、僕。

 前に自重するって決めたばかりなのに。


「う…………生きてる?」


 回復士の少女が目を覚ました。

 まだ体は起こせないみたいだけど。


「毒……は…?」


「もう解毒したから安心だよ」


「あなたは…だれ?」


「僕は恐ろしいミミックさ」


「……モンスターが、助けてくれたの?」


 少女は目を丸くしている。

 正しい反応だ、モンスターが人を助けるなんてありえないからね。


「どうして…?」


「理由はないよ」


「そんな、貴重な薬なのに…」


「消費期限が切れそうだったから捨てただけだよ」


「………」


 少女は無言になる。

 納得できないといった様子だ。


「…この後どうすんの?」


 僕は好奇心で、この見棄てられた少女に問いかける。


「え…?」


「棄てられたんだろ、元パーティーに復讐でもするか?」


「…ううん、しない」


「憎しみはないの?」


「そうじゃないけど…耐えて、前に進みたいから」


「ふーん…」


 パーティーに捨てられた者は復讐するのが定番なんだけど、この子はそうではないのか。それもまた正しい生き方だ。


「過去と他人は変えられない、変えられるのは未来と自分だけさ。次はもっといい仲間を探しな」


「…」


 僕の言葉を聞いて小さくうなずく少女。

 あ、通りすがりに冒険者を発見。


「助けが来たぞ」


「あ、あの……ありが…」


 少女が何かを言い切る前に、僕は宝箱に潜んだ。

 そして少女を襲うフリをする。


 がぶがぶ


「大変だ!少女がミミックに襲われているぞ!」


 がぶがぶ音に気付いた冒険者が駆け出し、僕にハンマーを振るう。


「くらえ!」


 思いっきりハンマーで叩かれたけど大丈夫、箱は傷つかない。


「あ、まって…」


「あぶねえぞお嬢ちゃん!はやく逃げっぞ!」


 屈強の戦士に抱えられ、少女は僕の元を離れた。


 過去の憎悪に捉われず未来の希望を求めた回復士の少女。

 果たして報われるのだろうか。

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