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月乃と弁当 1話

 

 朝の告白劇が終わってからというもの、休み時間になる度に誰かしらに囲まれるという状況が続いていた。


(予想以上にだるいな)


 返答は全部『ああ』だの『おう』だのと生返事にしているのだが、それでも勝手に盛り上がって騒ぎ出すのだ。


(月乃の方はもっと大変そうだな)


 ま、俺の知ったことではないがなと付け加えて思うと、ちょうど授業が始まる鐘の音がした。


 次の授業は、四限の数学IAだ。

 ゆるゆるの授業をすることで有名な田形の授業なので、ノートと教科書を出すだけ出してぼけーっとしていた。


(いつもの三倍は疲れたな……)


 しかし、昼休みは無事に抜け出せるのか?と思っていると、スマホが軽く振動した。

 ちらっと確認してみると、月乃からのメッセージだ。


『お昼、教室じゃダメそうだね』

『そうだな』


 昨日の予定では昼までには落ち着いてるだろうと思って教室で食べるつもりだったのだが、この状況では無理そうだ。

 他人の恋愛にそこまで興味があるもんなのかね……


『屋上は空いてなかったけど、どこかいいとこ知ってる?』

『知らん』

『私も』


 そもそも、今まで教室で一人飯していた俺が知るものか。

 って言ったら向こうも毎日教室でたくさんの人に囲まれてそうだけどな。ソースは俊平。


『屋上の入口のところとか?』

『あんな埃っぽいところで飯は嫌だ』

『だよねー』


 一緒に飯を食うってだけでもこんなに大変とはな。人気者ってのも辛いねぇ。

 ──って他人事じゃねーか。


『別に食堂の隅っこでいいんじゃねーか?』

『食堂かぁ』

『飯買う必要はねーし、授業が早く終わった方が終わったら席とっとくってことで』

『りょーかい』


 その後、何かのキャラクターが了解!とやっているスタンプが送られてくる。


(こんなんが好きなのかあいつは)


 俺は親か俊平くらいとしかやりとりをして来なかったので、持っているスタンプは初期のものだけだ。

 華やかな高校生はこーゆースタンプを買っとかないとやっていけないのかなーとか最近の若者事情に思いを馳せたのだった。


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