表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/34

五十嵐月乃との出会い 7話

 

 朝の教室。

 俺が来た時にはまだ誰もおらず、暇を持て余してスマホを弄っていた。

 最近暇つぶしに始めたスマホゲームをプレイしていると、扉が開かれる音がした。


「あれ?後藤くん早いね。おはよう」

「おう」


 こいつは……名も無きクラスメイト。

 暫くすると、また誰かが来る。


「佐藤さんおはよー」


 それを皮切りに、数人が教室へと入ってきた。

 あと、さっきの人は佐藤さんだったのか。


(あいつは……いつ来るんだ)


 出来れば早いうちに来てくれ……と願っていると、月乃からメッセージが届いた。


『もう来てる?』

『来てる』

『じゃあ、今から行くね。人が多すぎると恥ずかしいし』


 来た。てか来る。

 落ち着け……落ち着け俺。

 俺の仕事は『はい』と答えるだけだ。

 あとはなるべく無表情を貫いて……いや、少しくらいは照れた方が自然か?

 やべ、どうしよう。ちょっと緊張した感じで『は、はい』とかの方がいいか?それともクールに『よろしくな』とか?ちょっとゲームしてる場合じゃねえ。

 慌てて返事を考えていると、扉の開く音がした。


(来たか!?)


「あ、いた。おーい陸ー!今日は早かったね」

「俊平かよ……」


 誰にも聞こえないくらいの音量で呟く。

 すると、俊平の後ろから月乃の顔が見えた。


「浅田くん、ちょっといいですか?」

「ん?なにかな?」

「後藤陸くんっていますか?」


 え?月乃が敬語喋ってる?俺には最初からタメ口だったのに?


「えっと……陸に何の用があるの?」


 俊平お前がそれを聞くのか!?

 お前は俺の保護者かよ!ってそういやあいつ俺の保護者扱いされてたな……


「それは……やっぱり本人に直接言いたいです……」


 うわ。既に恋する乙女の顔を演出してますやん。


「えーっ!?五十嵐さん、嘘ぉ!?

 え、五十嵐が後藤に!?」


 すると、更にその後ろから咆吼ほうこうが聞こえた。

 この騒がしさ、間違いなく平田だ。


「……」

「えっ、えっ、ちょっと後藤!」


 照れ顔で俯く月乃と騒ぐ平田。

 お前は月乃の爪の垢でも煎じて飲んでろ。

 気だるそうな感じを演出しつつ、三人に近づいていく。


(いつもなら本当に面倒にしか感じないのに、なんか調子狂うな……)


 残念なことに俺はハーレム野郎の俊平と違って女の子耐性が高い訳では無いので、内心では結構緊張してしまう。

 いや、むしろこの月乃とのダミー恋人を経て女の子耐性をつければいい気がしてきた。つまりこれは必要経費。OK?


 三人のそばまで来ると、平田が嬉しそうに俺の背中を叩いた。


「五十嵐さんが後藤に話があるんだって!」

「おう……なんだ?」

「ちょっと後藤、空気読みなって。ほら、ここじゃなくて人のいないところでさ……」


 ここで話を進めようとする俺に、平田がダメ出しをしてくる。

 しかし、それを月乃が止める。


「えっと……平田、さん?私はここで大丈夫ですので……」

「えっ!?五十嵐さん、大胆だね……

 って、あれ?私の勘違いとかじゃないよね!?」

「えっと……その……私……」


 月乃が喋り出すと、天下の大騒音・平田も流石に口を閉じて月乃を見守る。


「その……少し前から、後藤さんのことが気になってて……」


 ちょっと待て。言いたいことがある。

 まず月乃、こいつ誰?ってレベルで昨日と違くない?何その上目遣い。昨日なんて基本『無。』って感じの目してたよね?

 あと俊平。お前何でそんな怖い顔してんの?

 平田はニヤけすぎ。

 なんか逆に冷静になってきたわ……


「それで……後藤くんさえ良ければ、私とお付き合いしてくれませんか!?」


 月乃がそう言い切ると、教室中から悲鳴が上がった。

『キャー!』だの『嘘ー!?』だの『なんであいつなんだ!?』だの。

 さっきもそうだったが、周りを見てみると嫌でも落ち着いてくるものだ。今この教室で一番冷静なのは俺かもしれない。

 みんなが鎮まってきたころ、俺は簡素に返事をした。


「はい」


 これが、俺の平穏が崩れ去るきっかけの出来事である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 俊平は陸取られると思っているのかな(((*≧艸≦)ププッ次回も楽しみに待ってます( =^ω^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ