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五十嵐月乃との出会い 3話

 

 帰りのHRが終わると、俺はさっそく屋上へと向かった。

 俊平が部活の日だったので、帰りに誘われなかったのが不幸中の幸いってやつだ。あいつ部活がないと絶対誘ってくるからな。

 ちなみに、俊平はサッカー部。俺は料理部だ。

 どこかしら部活に入っておかないと俊平からしつこく誘われるので、とりあえず入っといたのが料理部になる。


 俺は両親の都合で一人暮らしをしているので、料理も普通に出来るからという理由で選んだ。のだが、周りが女子だけだったのでなんか気まずくてたまにしか行っていない。

 具体的に言うと、晩飯のメニューを決めるのが面倒な日とかにお世話になっている。

 このご時世、男だって料理を覚える必要があると思うんだがなぁ…


 そんなことを考えながら階段を上がっていく。

 四階の先が屋上だ。俺達一年は三・四階が教室となっているので、屋上に一番近い。

 放課後に階段を上がっていくやつなんて普通はいないので、屋上が近いのはあまり目立たなくて助かったところだ。


 しかし、屋上へと辿り着くと別の問題が待ち構えていた。


「……空いてねえ」


 屋上の扉に鍵がかかっていたのだ。

 扉には堂々と立ち入り禁止と書いてある。

 どうしたものかと立ち尽くしていると、誰かが階段を上ってくる音が聞こえた。


「あ、もう来てたんだ」


 振り返ると、そこには確かにかなり可愛い女子が立っていた。

 口ぶりからしてこいつが五十嵐だろう。


「屋上入れねーぞ」

「え、そうなの?じゃあここでいいや。ちょっとそこの影に隠れる感じで」


 俺達は、角になっている死角部分へと身を潜める。


「で?」


 俺は不機嫌なのを隠そうともせずに接する。


「私と付き合ってほしいの」

「ごめんなさい」

「ダメ」

「……」


 いやいや。

 そりゃないっすよ姉御。


「ちょっと横暴すぎだろ」

「まあまあ、話だけでも聞いてよ」


 それから、五十嵐のプレゼンが始まった。


 まず、付き合うというのは半分本気らしい。残りの半分は利害関係の一致だとか。いわゆるダミー恋人だ。

 選考理由は、この関係で調子に乗って変なことをしなそうな人。この提案を断って言いふらしたりできなそうな人。その中で、一番好みな人を選んだらしい。


「お前の言い分はわかった。利害関係ってのは?」

「私の方は告白されなくなること。最初の頃はまだ良かったよ。相手も本気なんだなって伝わってきたから。

 でも最近私に告白してくる人なんて、殆どがお試しとか罰ゲームとか、そんなふざけた理由ばかりなの。もううんざり」

「そりゃご苦労だな」


 告白されたことのない俺にはよくわからんが、たしかに大変そうだ。

 え?今の状況?こんなん告白にカウントしないだろ。


「あなたの方は、この私と付き合えることよ」

「図々しいわ」


 おっと思わず心の声が……


「流石に傷つくんだけど」

「……」

「いや、確かにその通りなんだけど……ね?」


 ね?じゃねーよ。

 学校のアイドル様がこんなやつだったとは、まさに偶像アイドルってやつか。いや、これがあざと可愛いってやつなのか?よくわからん。


「というわけでよろしくね」

「いや待て。俺はまだ納得してねえ。

 だいたい、俺とお前じゃ釣り合わんだろ。そんなんで付き合っても裏があるってバレバレだぞ」

「そうでもないよ?あなたの評判って『話してみると気がいいのにぼっちで、何故か浅田くんと仲がいい人』だから。浅田くんのおかげでそこまで悪くは言われてないよ」

「……そうか」


 自分の評価を聞くってなんか照れるな。


「というわけでよろしくね」

「断らせる気ゼロだろ。……はぁ。もういい。抵抗するだけ無駄だわ」


 これが権力の暴力か……と思いながら返事をすると、五十嵐は更にとんでもないことをぶち込んできた。


「うんうん……じゃあ、さっそく明日の朝教室で告白するからOKしてね」

「……は?」


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