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勉強会の忘れ物 1話

 

 結局その日の勉強会は無事に終わった。

 トイレから帰ってきた麗奈は相変わらずもじもじとしていたが、なんとか上手くスルーできた。と思う。多分。そうであってほしい。


 二人を外まで見送ってからスマホを確認すると、またメッセージが届いていた。

 発信者は名も知らぬ女子で、料理部のグループに書き込まれたメッセージだった。


『休日なのでお昼ご飯を作ってみました!』


 そしてその画像。

 料理部のグループチャットは土日になると誰かしらはこういった報告をしていて、結構頻繁に動いていた。

 このグループの影響で俺のスマホの通知量が跳ね上がったのは言うまでもないだろう。


 俺はというとグループに入った時に一回挨拶をしたきり何も発言したことはなく、空気と化していた。


(俺も一回くらい何か報告するべきか)


 部長が普段から料理してる人の云々と言っていたし、お手軽レシピでも紹介しておこう。

 さすがに、なんでも丼レベルのズボラ飯を紹介する訳ではないから安心してほしい。


 メニューはスーパーで考えることにして買い物に出かける準備をする。


(あれ?財布どっかいったな)


 普段はリビングの入口らへんに放り投げている財布が、どこか別の場所へと移されていた。

 恐らく月乃が掃除する際に別の場所に避難させたのだろう。


(それとも床に落ちたとか?)


 ふとそう思ってリビングの床をチェックする。

 すると、机の下に財布には似ても似つかないものが落ちていた。


(なんだ?)


 見覚えのないそれを拾い上げる。

 それは白色の薄い布のようなもので、何やら生暖かい───


「ってパンツじゃねえか!」


 思わず口に出してるツッコミを入れる。

 慌てて放り投げてしまい、パンツは机の上に着地した。


 ……。

 …………。

 ………………。


 いやいやいや。

 どこからどう見ても女もののパンツですやん。

 なんで?あいつらのイタズラか?いや、そういえば……


 今日の出来事を思い出す。

 俺が最初にリビングに戻った時のことだ。

 あの時、麗奈は倒れたコップの水が掛かっていた。それも下腹部に。

 つまり、これは麗奈が仕方なく脱いだものが荷物から落ちてしまったとかそんなとこだろう。


(なーんだ、麗奈のか。危ねーな)


 何故か麗奈のものだったことに安堵を覚えながら、麗奈にメッセージを飛ばしておく。


『パンツ忘れてんぞ』


 配慮の欠片もない文である。

 しかし、既読こそは一瞬でついたものの返事はなかなか帰ってこなかったのだった。


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