表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

勉強会 6話

 

 リビング以外の掃除を済ませてからリビングに戻ると、二人は神妙な顔で勉強をしていた。


「お前ら大丈夫だったか?」

「陸くん!あのね、あれは……」

「あーいや、わかってるから。水こぼしたんだろ?」

「そうそう……って、わかってたの!?」


 ガバッと立ち上がる月乃。

 そんなに驚くことか?


「月乃さん!?」

「……あっ」


 慌てて座り直す月乃。

 ……いったい何だってんだ?


「あの……やっぱり月乃さんは……」

「……ううん。私が悪いんだもん」


 何やらひそひそ話をする二人。

 よくわからんが、よくわからんことはよくわからんままでいいやってのが俺の信条だ。


「んじゃあリビングも掃除機かけてっていいか?」

「はい。ホコリは落としときました」

「さんきゅー」


 ぶおおおおおんと掃除機を鳴らしながらリビングを回る。


「……」

「……」

「……」


 なぜかこちらをじっと見てくる二人。

 ふと振り返ると、慌てて目を逸らされた。


(なんでこんなに見られてんだ?俺、何かしたっけ……)


 ダメだ。心当たりがなさすぎる。

 さっき少しいじわるはしたが、そんなの日常茶飯事だしなぁ。けど、何かあったとしたらさっきのだよな。確かにちょっと下感はあったが、こんなピリピリするか?


 結局どれだけ考えても答えは出ず、聞くわけにも行かないので忘れることにした。

 二人も努めて平常を装っているようだったのでそっとしておこう。


 掃除を終え、俺も席に着く。

 すると二人はピクりとして、先程より重めの緊張が走った。

 気にしない気にしない。


 そのままスマホを弄っていると、急に麗奈が立ち上がった。


「ちょっとトイレ!」


 そして勢い余って、椅子に足をぶつける。


「あだっ!」

「ちょっ!?」


 麗奈は体勢を崩し、机の上のコップは倒れかけた。

 ギリギリのところでコップの方は防げたが、麗奈は盛大に転けていた。


「〜〜っ」

「お前なあ……」

「麗奈ちゃん、大丈夫……?」


 仕方ないので麗奈に手を貸す。


「りっくんありがと」

「気をつけろよ?」

「うん……」


 麗奈は腕から転けたようで、そのまま腕を抑えながらトイレに消えていった。

 さすがに気にしない方が無理な話になってきたので、今のうちに月乃に聞いておこう。


「月乃、結局なんなんだ?」

「な、何が?」

「いや、何かあったんだろ?あからさま過ぎるぞ」

「えっとー、まあそれはそうなんだけど……ごめん。内緒にさせて?」


 月乃からも話せないことか。


「わかった。けど、無かったことにするならちゃんとしてくれ……よそよそし過ぎて見てられん」

「……頑張ります」


 うん。この様子じゃダメそうだな。

 麗奈も多分テンパってるだろうし、俺が気合入れて無視するしかないか。

 ……まさか、スルーすることに力を入れないといけない時が来るとは。


 この時の俺はそのことに意識を割きすぎて、月乃の表情にまで気が回ることはなかったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ