表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/34

勉強会 2話

 

 昼飯が終わってすぐに再開というのも気が滅入るので、昼飯後は三人でゲームをするのが恒例となってきている。

 今日も例に漏れず、マルチプレイ型の格闘ゲームをやることになった。


 月乃は家にゲームがないらしく、どんなゲームをやってみても操作がたどたどしい。

 現に今も麗奈とタッグを組んでコンピューターと戦っているが、実質麗奈一人のようなもんだった。


「月乃さん、何やってるの!?」

「えっと……」


 時限式の爆弾アイテムを持って歩き回る月乃。


「早く敵に投げないと!」

「何ボタンだっけ!?」

「A!」

「A……」


 その場でAボタンを押す月乃。

 爆弾は月乃の手前に落ち、月乃を豪快に吹き飛ばした。


「もっと前に投げないと!!」

「どうやるの!?」


 うーん。絶景かな。

 しかし、月乃にゲームをやらせるとキャラが変わって面白い。焦ったりテンパったりすると叫ぶタイプのようだ。


「……陸くん、チェンジで」


 ニヤニヤしながら眺めていると、むすっとした月乃からコントローラーを託された。

 これもゲームをやらせてみてわかったことだが、月乃は上手くいかないと拗ねる。可愛いやつめ。


「よーしりっくん、月乃さんにあたし達の愛の力を見せてやろー!」

「よし、任せろ!」


 先程月乃があくせくしていた爆弾アイテムを麗奈に投げつける。

 行ったーーーー!!これは大きい!場外ホームランだーーー!!


「りっくん!!!」

「俺の愛はお前には重すぎたか……」

「なにをー!?」


 それを皮切りに麗奈も俺に向かって攻撃をしだし、ゲームは修羅と化した。

 しかしこれは協力モード。味方には攻撃できない為、勝負の鍵は爆弾アイテムが握っている。次に爆弾アイテムがポップする場所を予測して……


「陸くん」


 不意に月乃に話し掛けられる。


「なんだ?」

「好き……だよ」

「!?」


 月乃の耳打ち声。

 こんな暴力に屈しない男などいるはずもなく、悲しいことに俺も思わず月乃に夢中になってしまった。


「陸くん……」


 俺の顔をとろけたような表情で見つめる月乃。

 そんな月乃に見とれていると、俺の手に激しい振動が伝わってきた。


「はっ!?」


 俺はいったい何を?

 なんて思い出す間もなく、俺の操作するキャラは場外へと吹き飛んでいった。


「「「……」」」


 沈黙。

 俺は残機がなくなり、麗奈はやけくそのように投身自殺をして最後の残機を失った。

 残ったのは、敗北画面の前に消沈する三人だけだった。


 耳まで真っ赤にして俯く月乃。

 無の表情でこちらを見ている麗奈。

 先程の月乃が脳裏に焼き付いて離れない俺。


 それぞれ失ったものは大きい。だが、我々は生き残った。失ったものを胸に刻み、前を向いて───いや、俺は何も失ってないな。


「……月乃さん」

「……なに?」

「……ありがとうございました」

「……うん」


 あれは麗奈が仕向けたものだったらしい。

 皆さん、爆弾はゲームの中だけにしておかないと大変なことになりますよ。以上、後藤陸の本日の教訓でした。


「そろそろ勉強再開しよっか」

「そうだね……」

「俺は皿洗いと掃除してくるわ」


 なんとか黄泉の国から帰ってきた月乃と麗奈は、先程の出来事から逃れるためか勉強を再開した。

 そしてまた、俺も気まずさから逃れるために二人から離れて皿洗いを始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ