部活に行くような放課後 1話
今までより少し騒がしい日常を送り、季節はもう七月に入った。
七月半ばからは期末テストがあり、それが終わると夏休みだ。
期末テスト期間の一週間前からは部活動がなくなるので、なんとなく今日は料理部に顔を出していた。
「あ、後藤くん」
「おう」
部活に行くと、月乃の影響なのかやたらとそんな感じの挨拶をされた。
今までは目が合った人には挨拶をされるくらいのものだったのが、今日はあちらから挨拶をしてくる。
(っつっても、今まで絡まれなさすぎて名前わかんねーわ)
そう思ってると、今度は唯一名前がわかる人が挨拶をしてきた。
「後藤くん、ちょっといい?」
「なんすか、部長?」
それは、上原縁部長だ。
まあ、文字通り名前しか知らないけど。
「あのさ、部活のL〇NEグループに入らない?みんなで作った料理とかレシピを教えあっているのだけど」
「そんなんあったんすか」
「ええ。正直な話、後藤くん以外女子でしょ?だから誘うべきなのか迷っててね。みんなで話し合ってたんだけど……ほら、後藤くん彼女出来たでしょ?」
「はい」
「こう言ったら気を悪くするかと思うんだけど、それで後藤くんが女の子目当てじゃないってみんな納得したからさ」
「あー、そう思われてたからいつもあんな感じだったんすね」
「ごめんね?」
「まあ、仕方ないっすよ」
女子軍団の中に男は俺一人だけだったので、そう思われても仕方ないだろう。
そしてそんなにやる気があって入ったわけでもないので、たまにしか部活に行ってなかったのも原因の一つになってたはずだ。これに関してはこちらにも非がある。
「それでその後藤くんの彼女さんから話を聞いた人が、後藤くんは家で料理してるって聞いたらしくて。普段から料理してる人の料理は参考になるから……どう?」
「まあいいっすけど、投稿するのは気が向いた時だけでいいっすか?」
「うん。それでいいよ」
とりあえず暇な時に投稿しておけば、部活にあまり顔を出さなくても部活仲間としては認識してくれるだろう。
毎回このなんとも言えない雰囲気になるのは流石に面倒なので、俺にとっても都合のいい話だった。
「ありがとね」
「いえいえ」
しかしグループに入っただけですぐ受け入れられるわけはなく、今日の部活はいつも通り微妙な空気が流れていた。そう感じていたのは俺だけだったのかもしれないが。
その日の夜に俺の友達登録数は一気に何倍にも跳ね上がったのだった。




