月乃と対策 2話
『話があるんだが』
俊平の妹──浅田麗奈にそうメッセージを送ると、一瞬で既読がついた。
「こわ」
思わず声が漏れる。
麗奈は常にスマホを弄っているような人なので、珍しい俺からのメッセージに飛びついたのだろう。
『りっくんからメッセとか珍しいじゃん』
『お前、まじでうちの高校目指すのか?』
雑談をするのも面倒なので、いきなり本題から入る。
『もち!』
『勉強は?』
『……』
『だろうな』
『だってお兄ちゃんが教えてくれないんだもーん』
お兄ちゃん。
つまり俊平のことなのだが、あいつは麗奈に厳しい。
甘えすぎるとダメだとか言って、厳しく接するように心がけているのだとか。
それには理由があって、昔俊平が麗奈を可愛がりすぎた結果、麗奈は完璧なブラコン妹に育ってしまったのだ。
それに責任を感じた俊平は、妹をいい方向に導くべく頑張っているらしい。
麗奈がうちの高校を目指す!と言った時、俊平は自分で勉強して合格出来たなら文句は言わないということに決めていた。
ブラコンを卒業させるために違う高校に行ってほしいが、あまり突き放しすぎてもダメだと思った妥協点だとか。
ちなみに突き放しすぎるのを恐れるのにも理由がある。
それは、いきなり突き放した時に麗奈はギャル化してなんにもいうことを聞かなくなってしまったという事件だ。
それどころか、何故か俺にベッタリくっつくようになった。あれはなんだったのか。
まあ、俺としてもあの時期は地獄だったので俊平には是非気をつけてもらいたい。
でも、俺は気にしない。
だから、俺──ではなく月乃に勉強を教えさせる作戦だ。
麗奈は、俊平の妹というだけあって控えめに言っても可愛い。
麗奈が入学すれば、月乃ばりの扱いになるのは間違いないだろう。
そのことを伝えると、麗奈はすぐに話に乗ってきた。
『いつ!?早く助けて!!』
『こっちは休日ならいつでも』
『じゃあ今週から!マジで勉強わからないんだよね!』
謎のエッヘンスタンプ。
『自慢にならねえ。じゃあ今週からな。場所はカフェとか?』
『おっけー。てかさ、なんで急に教えてくれるん?前は断ったじゃん』
これは……
『麗奈が好きだからだよ』
言い訳を考えるのもめんどくさいので適当に返信してスマホを閉じる。
月乃にはこの後恒例のメッセージタイムの時に伝えればいいだろう。
その後、何件か麗奈からメッセージが届いていたが、無視してやった。
月乃は了承してくれた。




