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おまけ(月乃と弁当 4話 月乃視点)

おまけ話です。

需要があるようでしたら今後もちょいちょい入れていこうと思うので、感想か何かで良かったかどうか教えてください。

 

「お前……なんだその弁当は……」


 私の弁当を覗いた陸くんは、意識せずとも口から漏れたという感じでそう言った。


「頑張ったんだけど……」

「いや……もしかしてこのキャベツって味付けなし?」

「味付け?」


 炒めただけなのだが、なにかまずかったのだろうか?


「まじか……」


 あ、この反応はダメなやつだ。

 しかし、いったい野菜に何をかければいいのだろうか?


(野菜って生でも美味しいし、炒めるだけだと思ってた……)


 料理ってわからないなぁと思いながら、陸くんのお弁当を食べてみる。

 すると、いつも家で食べているお母さんの料理と変わらないレベルの味がした。


「陸くんのお弁当美味しいね」

「そりゃあ、お前のに比べりゃあなぁ……」


 酷い言われようだ。

 まあ、自分でも味見した瞬間に陸くんが気づかないうちにお弁当すり替えようって決めたけど。


「肉もなあ……せめて塩コショウか焼肉のタレかけるくらいしろよ……」

「焼くだけじゃダメなの?」

「いや、焼肉屋行ったらタレつけて食うだろ?」

「たしかに」


 漫画とかだと焼いて食べてるし、それでいいかなって思ったんだけどな。

 焼肉のタレ持ってくればよかった。


「料理は難しいね」

「お前のこれは料理ってレベルじゃねえ」

「えー」


 陸くんにバレないうちに、陸くんのお弁当を食べ進めていく。

 しかし、本当に陸くんのお弁当は美味しい。

 たしか料理部所属だって聞いたし、将来はシェフにでもなるつもりなんだろうか?


(いや、ないかな。陸くんめんどくさがりだし、適当な会社に就職しそう)


 なんとなく陸くんの将来を想像しながら、お弁当を食べ進めていく。


「味気ねえ」

「がんばれー」

「他人事みたいに言いやがって」


 嫌そうな顔をしながらも、私のお弁当を完食してくれた陸くん。優しいなぁ。


「よく食べ切れたね」

「そう思うなら持ってくんな」

「おかず交換の約束しちゃったから」

「おかずどころか弁当交換だったけどな」

「私のは味見で満足しちゃって」

「それは満足とは言わねえ」


 そこから会話を続けようとしたが、すぐに終わってしまう。


(陸くんが乗ってくる話題がわからない……)


 しかし、これ以上会話を続けても陸くんに嫌がられるだけだろうから、やめておく。

 私は引き際のわかる女なのだ。


 それからしばらくすると、急に知らない人が陸くんに声をかけた。


「ん?後藤じゃん」

「あ?──九条か」

「こんなところで──ってああ、五十嵐さんと」


 私の名前が出たので、その人の方を向く。


(うん。やっぱり知らない人だ)


 顔にも見覚えがなかったので、恐らく陸くんのクラスメイトだろう。


「九条さん、で合ってますか?」

「うん。五十嵐さんだよね?」

「はい」

「噂は聞いてるよー。でも二人って付き合いたてって感じしないよね。昔からの知り合い?」


 ぎくー。

 って、たしかにこの状況はカップルのものじゃないよね。


「いえ、高校で初めて会いました」

「ふーん。まあいいけど。じゃあねー」


 そう言って九条さんは本当に興味なさげにその場を去っていく。


「……今の、バレちゃったのかな?」

「バレたといえば、俺はもう既に一人にはバレた」


 陸くん……隠す気なさそうだ。


「えー……初日からボロボロだね」

「まあいいだろ。俺達が付き合ってるって言い張れば向こうはそれ以上何も言えないんだし」

「そうだね」


 それ以降は、予鈴がなるまで話しかけられなかった。

 陸くんはもう自分の世界に入っていたし、話題もないからだ。


(これでいいのかな……)


 風避けとして選んだ陸くん。

 陸くんにも言った通り、半分は本当に風避けのためだ。

 でも、残りの半分は本当に陸くんに興味があったからだ。いくら風避けなんていっても本当に興味のない人と付き合うのは嫌だし、失礼だろう。


(もっとお話したい……けど、嫌われたくもないしなぁ)


 しかし、焦っても仕方が無い。

 今は、陸くんに近づけただけでもよしとしておくべきだろう。これからもっと時間はあるのだから。

 そう自分に言い聞かせて、教室へと戻っていくのだった。


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