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月乃と弁当 4話

 

「お前……なんだその弁当は……」


 月乃の弁当の中身は、肉だけ焼いたもの。卵焼き。キャベツを炒めたもの。ブロッコリー。キュウリ。最後に米が詰められたものだった。


「頑張ったんだけど……」

「いや……もしかしてこのキャベツって味付けなし?」

「味付け?」

「まじか……」


 試しにキャベツを貰うと、本当にキャベツを炒めただけのものだった。


「陸くんのお弁当美味しいね」

「そりゃあ、お前のに比べりゃあなぁ……」


 別に不味いという訳では無いが、決して美味しくもない。火を通しただけのキャベツだ。

 俺はヤギか?


「肉もなあ……せめて塩コショウか焼肉のタレかけるくらいしろよ……」

「焼くだけじゃダメなの?」

「いや、焼肉屋行ったらタレつけて食うだろ?」

「たしかに」


 月乃って、頭良いんじゃなかったか?絶対何も考えてないだろ。


「料理は難しいね」

「お前のこれは料理ってレベルじゃねえ」

「えー」


 いつの間にかおかず交換どころか、弁当ごと交換させられていた。

 美味しい美味しいとか言って食うもんだから、止めるに止めれなかったのだ。

 普段から飯を作る身からしても残すのは申し訳ないし、食えないって程ではないからなんとか弁当を食べ進めていく。


「味気ねえ」

「がんばれー」

「他人事みたいに言いやがって……」


 なんとか食べ切ると、月乃が謎の拍手を送ってきた。


「よく食べ切れたね」

「そう思うなら持ってくんな」

「おかず交換の約束しちゃったから」

「おかずどころか弁当交換だったけどな」

「私のは味見で満足しちゃって」

「それは満足とは言わねえ」


 その後料理のコツを聞かれたが、教えなかった。

 というか、もうレシピ見て作れとしか言えないレベルだ。コツとかその後の話だろう。


 そこから会話もせずただ二人で中庭に座っていると、突然声をかけられた。


「ん?後藤じゃん」

「あ?──九条か」

「こんなところで──ってああ、五十嵐さんと」


 すると、月乃が弄っていたスマホから顔を上げて九条の方を向く。


「九条さん、で合ってますか?」

「うん。五十嵐さんだよね?」

「はい」

「噂は聞いてるよー。でも二人って付き合いたてって感じしないよね。昔からの知り合い?」


 ぎくー。

 って、そりゃ二人で並んで無言でスマホ弄ってるのが今日付き合った人達に見えるわけないわな。


「いえ、高校で初めて会いました」

「ふーん。まあいいけど。じゃあねー」


 そう言って九条は本当に興味なさげにその場を去っていく。


「……今の、バレちゃったのかな?」

「バレたといえば、俺はもう既に一人にはバレた」

「えー……初日からボロボロだね」

「まあいいだろ。俺達が付き合ってるって言い張れば向こうはそれ以上何も言えないんだし」

「そうだね」


 それ以降は、予鈴がなるまでお互いに喋ることは無かった。

 恐らく、静かにしていたい俺に気を使ってくれたのだろう。

 それか、ただただ俺に興味が無いだけか。

 どちらにせよ俺にとってありがたいことに変わりはないし、二人で無言でいるのは嫌な感じもしなかった。


(これなら、クラスメイトに絡まれるのさえ無くなれば悪くは無いな)


 昨日はどうなることかと思ったが、これならやっていける気がする。俺は、この先の学校生活に少し希望が湧いたのだった。


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