月乃と弁当 3話
食堂に辿り着くと、カウンターに並ぶ人達で溢れかえっていて中に入ることすら困難だった。
(すごいとは聞いていたがマジでやべーな……そういや月乃は……)
スマホを確認してみたが、通知は来ていない。
月乃も席を確保するのに失敗したようだった。
一応、合流だけはしておこうと邪魔にならないように端によってからメッセージを飛ばす。
『今どこ』
『今食堂に向かってるけど、ダメそう?』
『無理だな。混みすぎ。そっちも質問攻めにあってた感じか』
『うん。みんなすごいよね』
『そうだな。あの様子じゃ教室も無理そうだがどうするんだ』
しばらくして、月乃がうーん……と悩んでいるキャラクターのスタンプを送ってくる。
『諦めるか、どっかでおかずだけ交換して解散するか』
『それはないよ陸くん』
ないのか?
そう思ってると、月乃から更にメッセージが届く。
『今友達に聞いてみた。中庭は人が結構いるけど、カップルが多いから目立たないって。それか校舎裏なら人はいないけど……』
『校舎裏で飯はなんか嫌だな』
『だよね。じゃあ、中庭で』
スマホをしまって、中庭に向かう。
中庭は月乃の言う通り男女の二人組が多く
かった。
それも、一年生はいないようだ。
(まあ、この時期に既に付き合う一年って相当だもんな)
死角になっているところを探してみたが、かなりオープンなスペースなので隠れそうなところはなかった。
中庭を適当にぶらついていると、月乃が声をかけてきた。
「陸くん」
「おう、どこにする?」
「空いてるところでいいよ」
「ん」
言葉の通り、近くの空いたスペースに座る。
カップルだからなのか、月乃の顔が二三年生にはまだ割れてないのか、他の人からの視線は感じなかった。
「中庭結構いいね」
「そうだな」
「明日からも中庭にする?」
ん?明日から?
「何言ってんのみたいな顔しないでよ……明日からも一緒に食べるでしょ?」
「まじか」
「まじだよ」
それは面倒だなぁ。
まあ、拒否権はないんだろうが。
「じゃあ、そろそろ食べよっか」
「そうだな」
そう言って開かれた月乃の弁当には、単色のおかずがズラリと並んでいたのだった。




