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鉄道ジャック  作者: レッサーパンダ
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1章 新陽南-西田

「間もなく、1番乗り場から、10時24分発、普通、海南海岸かいなんかいがん常山幽下じょうざんゆうげ方面、十夜町とおやまち行き、間もなく発車致します。」

駅の自動放送に続いて、駅員の声が入る。

「間もなく~2…失礼しました1番乗り場から~、普通、海南海岸、常山幽下方面の十夜町行きが発車致します。閉まるドアにご注意下さい。次の停車駅は~馬場、馬場です。ドアー閉まりますご注意下さい。」

自動放送と違い、少し早口で駅員がアナウンスする。直後、黒のパーカーにジーパン姿の男が乗り込んだ。ドアが閉まり、電車が発車する。

「本日も、東部国有鉄道ご利用下さいましてありがとうございます。この列車は、普通、海南海岸、常山幽下方面、十夜町行きです。皆様に…」

列車の中では車掌の吉永(よしなが)がアナウンスしている。海南線ではワンマン運転は行われない為、いつもの事だ。あまり混む時間帯ではないので、2両編成でも空席がかなりある。朝の通勤通学ラッシュ帯だと5両でも満員の事もあるのだが。

列車には、ぐっすり寝ているサラリーマンもいれば、楽しく話している家族連れ、手を繋いで話しているカップル等がいる。特に変わり無い日常、その筈だった。

「切符のお買い求めなどございませんかー。」

吉永がそう良いながら車内巡回をする。1両目の後ろ側に差し掛かった時、先程のパーカーにジーパン姿の男が車掌の前に立った。

「何かご用でしょうか?」

切符を買ったりするときに車掌の目の前に立つ乗客はいないだろう。さすがに吉永も怪訝そうな顔をする。

「動くな。」

男がナイフを車掌の首に突き付ける。吉永は驚きと恐怖で固まってしまった。

「いや、あの、お、お客様、何をしているんですか…?」

「うるさい。黙ってこっちに来い。」

「お、お前何をしているんだ!」

異変に気付いたサラリーマンが男の元へ行く。その声に気付いて、更に車内から悲鳴があがる。

「なんだお前。」

「こっちのセリフだ!ナイフを下ろせ!」

サラリーマンは更に近づく。その瞬間、男が服のポケットから拳銃を取り出し、男に放った。一瞬の閃光と銃声が響き、サラリーマンが倒れる。

「外したか。まあいい。ナイフだけと思うなよ。」

「ううう…。」

サラリーマンは右肩を押さえて呻き声を上げている。直撃はしなかったが、右肩を掠めたようだ。

「変な口は利くなよ。できるだけ撃ちたくはないしな。」

男はそう言い、銃をしまった。



三石(みついし)は列車を運転しつつも、車内の異変に気が付いていた。拳銃の発砲音が聞こえたのだ。いや、三石は拳銃の音など聞いたことが無いので、『拳銃かもしれない』でしかない。

「おい。」

運転席後ろの扉が開く音が聞こえた、そう思った瞬間、頭にヒヤリとした感触が刺さる。それが拳銃の感触だろうというのは三石にも分かった。

「何用だ。」

三石は冷静を装って聞く。が、背中はもう冷や汗をかいている。

「この列車は俺がもらった。乗客は乗せるなよ。」

「もらった…?」

「なんだ?」

男は無言で拳銃を押し付ける

「…いや、何でもない。」

次の駅である馬場駅はもう目の前だ。拳銃を突き付けられているが、難なくいつも通り停車させる。

馬場(ばば)駅。海岸線は新陽南駅を始点とし、途中102駅を経由して終点美広海駅へと向かう総距離約400kmの大路線である。と言えば聞こえは良いが、沿線に都会らしき都会は無い。あるのは海と山と田、たまに町である。そんな海南線の2駅目、それがこの駅である。

ふと横を見ると、駅に居る客がドアが空ないことを不思議そうに眺める。

列車を止めた三石が吉永に連絡する。

「車掌、車掌。ドアを開けないようにお願いします。」

三石がそれだけ無線で伝えると、吉永は「はい。」とだけ返した。

三石が喋っているだけだと油断したのか、その時男が車内の方を向く。その隙に、三石はSOSボタンを押した。これを押すと、緊急信号が発信され、車外の行き先表示にSOSと表示される。本来なら脱線事故や踏切事故などが発生したときに使うものだが、緊急事態に変わりはない。三石は遠慮なく押した。

「…出るぞ。」

三石が一言男に声を掛ける。

「ああ。」

「…鉄道ジャックなんて何故するんだ。」

男はその質問には答えず、車内の乗客の方へ向かっていった。その際に、今度は運行管理センターへ繋がる電話の受話器を少しだけ上げて置いた。これで車内の音や声は聞こえるはずだ。そして、運行管理センターからの音で電話が使っているのがばれないよう、列車側の受信装置の電源を切った。これで列車からの音は聞こえるが、運行管理センターからの音で気付かれる事は無いだろう。問題は、どうやって列車がジャックされている事を伝えるか、ということなのだが…。

いずれ不審に思った駅の乗客か、通話先の運転指令所の所員が気付くだろう。

三石はそう思い、まずは落ち着いて運転するよう、努める事にした。



「もしもし、お電話ありがとうございます。東部国有鉄道お客様相談センターでございます。……はい……え?あ、失礼致しました。恐れ入りますが、何時何分発車の列車でしょうか?……はい、わかりました。お手数ですが、お客様のお電話番号とお名前をお願い致します……。ありがとうございます。確認しましたら折り返しご連絡致します……。大変申し訳ございませんでした。失礼致します……。」

駅の使用客から、電車に置いていかれたという内容を聞いた由宇ゆうは、すぐにお客様相談センターの部長である笠岡かさおかに報告に行った。

「部長。ちょっといいですか?」

「ああ由宇君。どうしたんだね。」

「それが、お客様が電車に置いていかれた、と……。」

「ん?どういうことだ?乗り遅れたのではなくて?」

「はい。ドアが開かず、十数秒停車したあとに発車したと……。」

笠岡は不思議そうな表情を浮かべつつ、

「なんだか良く分からんが、とりあえず運行管理センターに連絡するから、由宇君は仕事に戻っていいよ。ありがとう。」

「はい。」

由宇はそう言い、元の席に戻った。



「はいはい、こちら運行管理センターです……。ああ!笠岡部長!お久しぶりです。それで何か?……ええ、あ、遂にお客さんから連絡が……。はい、こちらでも当該列車は確認してるんですが、電話に応答しなくててですね……。ええ、何か分かったら連絡します。じゃあ、失礼します~……。」

そう言い、運行管理センターの副センター長、相生あいおいは電話を切った。

つい5分ほど前に、運行管理センターはSOS信号を発している列車の存在を確認した。連絡電話を使い連絡を取ろうとしているが、列車側が受信装置を切っている。当然、連絡が取れなくなるので、受信及び送信装置のスイッチは押すのは厳禁となっている。列車の運転士は車内規定を破った事になる。

しかし、相生は悪意をもって運転士が受信装置を切ったとは考えていない。むしろ、受信装置を切ったという事は、こちらの音を聞いてはいけない誰か……つまり犯罪者等が乗っているのでは?と相生は考えている。

「副センター長。緊急事態です。」

一人の運行管理員が相生に話しかけてきた。その例の列車の運行を管理している管理員だ。

「どうした?」

「列車が……ジャックされている、と……。」

運行管理員が額から汗を流しながら声を出す。

「そうか……。分かった。まだ通常通りの運行を指示して、何か変わった事があったら伝えてくれ。」

運行管理員がはい、と言い席に戻った。相生は警察に電話をかける。残念ながら、車内に犯罪者がいるという相生の予想は当たってしまった。



「はい、もしもし、県警緊急犯罪対策室です。…え?鉄道ジャック?」

県警緊急犯罪対策室、それはジャック事件や立て籠りなど、人質がおり、その人質に危険がある場合(大半はあるのだが)に対策、処理の指示にあたる部署だ。4年前のバスジャック事件で連携が上手くいかず、6人が死傷した事がきっかけで設立された、比較的新しい部署である。

「どうした、石原(いしばら)、何の連絡だ。」

パソコンを使っていた八橋(やばし)室長が石原に聞く。

「八橋部長、ジャック事件です。」

「バスか?飛行機か?」

「それが…電車です。」

「…電車?」

八橋は、電車ジャックなど聞いたことが無い、という風に石原を見た。が、もちろん石原も聞いたことがない。

「厄介そうだな…。みんなを呼んでくれ。」

「はい。」

電車ジャックとは…。面倒くさそうだ。八橋はそう思いつつ、窓の外を見つめた。これから忙しくなりそうだ。



「…これでいい。」

男は客全員と車掌の吉永を1両目に全員入れた。人数が少なかったので、1両目に全員座っても席にやや余裕があるくらいだ。

「…どうしてこんなことを?。」

運転席へやって来た男に、三石は聞いた。

「お前に言う必要はない。」

そう言い、しばらく前面から見える景色を眺めた後、男が車内の方へ帰っていった。車内では、多くの乗客が怯えた表情で男を見ている。小さい男の子が泣いているが、男は特に気にすること無く過ごしている。列車の奥側では、怪我をしたサラリーマンを吉永が応急処置キットを使い手当てをしている。車内には急患用に応急処置キットがあるのだが、あくまで応急的なものだけである。男はそれをちらりと見た後、右の窓を見た。線路に平行して通っている道路では、列車と並走してパトカーが3台追いかけてきている。

「どけ。」

ロングシートに座っている乗客にそう言うと、その後ろにあった窓を開けた。春の気持ちいい風が入ってくる。が、男は風を堪能するために窓を開けた訳ではない。その開けた窓から拳銃を出し、先頭のパトカーに向けて放った。閃光と音が響き、撃たれた先頭のパトカーがよろめきガードレールに突っ込む。2台目以降のパトカーは追跡は危険と判断したのか、ガードレールに突っ込んだパトカーの近くで止まった。

「パトカーはうるさいな。子どももうるさいがな。」

そう言い、男は泣きじゃくっている男の子の方を見た。母親の顔が真っ青になった。

「心配するな。何もしないヤツにそんな事はせん。」

男が母親にそう声を掛け、運転席へ向かった。

「何故警察が気付いてんだ?」

「それは…知らん。」

三石の背中がびっしょり濡れる。

「本当か?」

「ああ。」

「…そうか。」

男はそれ以上言わず、車内の椅子に腰かけた。三石はひやひやしたが、取り敢えず電話を繋げている事はバレてない事に安堵した。

パトカーが来たということは、今までの犯人との会話でジャックされたことに外の人間は気付いているはずだ……。

そう思うと、三石は少しばかり安心した。



車内の状況とは裏腹に列車は順調に進んでいき、北阿真きたあま駅を過ぎると左手側に海が見えてくる。今日は晴天で絶好のお出掛け日和だ。日が海に反射して輝いている。が、もちろん乗客に外の景色を見る余裕など無い。男の子も泣き止み、ぐっすり寝ている。男は特に何も言わず、海ばかり眺めて、時より運転席へ赴いては手摺に戻って腰掛ける。乗客も男が何も言わないので、小さい声で話していたりする。

「あの…」

乗客の男性が男に声を掛ける。

「なんだ。トイレか?」

「え、ええ。」

「別に聞かなくても行って良いぞ。漏らされても困るしな。」

男がそう言うと、男性はやや不思議そうな顔をしてトイレへ向かった。普通、ジャック犯は喋っていたり、トイレに行きたいと言えば怒るのでは…とでも思っているようだ。

「すまん、えーっと、犯人さん?」

運転席から大きめの声で三石が男に声を掛ける。

「犯人さんか。」

男が呟いた。

「まあいい。何の用だ。」

「警察からご連絡だ。どうするんだ?」

やはりSOSに気付いていたようだ。三石がそう思うと、男がニヤリと笑みを浮かべた。

「俺が話す。」

そう言うと、男は無線に手をかけた。



「もしもし、警察だ。犯人か?」

仙崎(せんざき)が自分の自動車の中から、ヘッドセットに付いているマイクを通してで問いかける。仙崎は、県警緊急犯罪対策室から連絡を受け、派遣されている県警凶悪事件部交渉班の人間である。今日は休暇であったのだが、こういう事件があるとすぐ駆けつけなければならない。今は家から、まず警察署に向かっている所である。

「聞こえてるか?」

ヘッドセットは先程警察を通して東鉄の運行管理センターに繋げたばかりだ。上手く繋がっているか、仙崎は不安になった。

「聞こえてる。」

犯人から返事があった。どうやら繋がっていたようだ。

「私は、県警凶悪事件部交渉班の仙崎っていうもんだ。」

仙崎は、声のトーンを少し明るめに話し出す。

「君、名前は?」

まず名前を聞かなければ始まらない。そう思い、仙崎は話を切り出す。

「別に必要無いだろ。」

大体の犯人はそう言う。ここはあまり攻めず、ゆっくり話を進める事にする。

「そうか~。じゃあ犯人さんでいいか?」

「…好きにしろ。」

運転士の三石も同じ事を言っているとは知らず、仙崎は続ける。

「どう?窓の外は?今は海じゃないか?綺麗だろ。」

話しやすい話題から振っていく。

「まあな。それよりお巡りさん、本題があるんじゃねえのか?」

「…ははっ、分かってるな君は。」

仙崎は犯人から話題を振ってきたことに少々驚きつつも、言われた通り本題に入る。

「君以外に人が居るだろ?解放してくれないか?」

「結構ガツンと言うんだな。」

「驚いたか?まあ、君と人質の命が重要だからな。」

「俺の命なんかどうでも良いんじゃないか?」

確かに、正直人質の方が大切ではあるが、犯人も人質も流血に至らず処理出来るのならそっちの方が良いに決まっている。

「そんな事はない。ついでに君も出てこないか?今からでも遅くはないよ。」

「俺は出ていくつもりは無いが、乗客は考えてやる。但し、俺の条件を飲むならな。」

犯人が条件を提示してきた。少しではあるが、交渉が進んでいると見ていいだろう。

「ほう。なら『俺の条件』とやらを聞かせてもらおうかな。」

「まず、腹が減った。コンビニのでも弁当屋のでも良いから弁当をくれ。人質の分もな。」

「アレルギーとかはあるかい?」

「随分丁寧なこったな。心配しなくても特にねえよ。」

「そうかそうか。分かった。ところで次の条件は?」

「今はそれだけで良い。弁当持ってくれば怪我してる奴と…もう三人くらい解放しても良いぞ。」

最初の要求としてはこんなものだろう。そう思い、仙崎は犯人に返事をする。

「分かったが、少し待っててくれ。また後で返事を出そう。」

「ああ。分かった。」

そう言うと仙崎は犯人との通話を切り、警察署の緊急犯罪対策室に繋げ直す。

「そろそろ警察署に着きます。それより、犯人の条件はどうします?八橋室長。」

「怪我人がいるというのが気になる……。とりあえず弁当だけなら要求を飲もう。準備に少し時間が掛かる。西田駅で弁当を渡す。犯人に伝えてくれ。」

「分かりました。」

仙崎は犯人にかけ直し、その旨を伝えた。

仙崎との通話を切ると、県警察本部長の太田(おおた)が八橋に話しかける。

「八橋君。西田駅で警官を突入させるべきだと思うが?」

「太田本部長。犯人は拳銃を持っています。普通の警官の装備では制圧しきれません。かといって特殊部隊を送ろうにも、西田駅にはもう間に合いませんよ。取り敢えず様子を見ましょう。」

「…そうか。まあ、君に任せるよ。」

電車が西田駅に着くまで、あと15分程だった。



「……で、犯人さん。警察とのお話はどうだった?」

三石が明るめの声で男に呼び掛ける。

「弁当くれるってさ。西田駅でな。」

「へぇそうか。そりゃあ良かった。」

「……それよりお前、電話繋げてんだろ。」

「……。」

「とりあえず切れ。今回は良いが、次変なことやったらピストルぶっぱなすからな。」

「あ、ああ、悪かったよ……。」

三石は上げていた受話器を元に戻し電話を切った。男はそれを見ると、客室側の方に戻っていった。また三石は冷や汗で背中が濡れてしまった。

「おい。」

男が乗客に向けて大きめの声で呼び掛けた。

「西田駅でそこの怪我してるおっさんと、そっちの母親と赤ん坊、あとこっちのじいさんばあさんを次の駅で解放する。今回はこっちが決めたが、次回からは車掌、お前が決めろ。」

「え……あ、はい。」

吉永は突然呼ばれて少し驚いたが、今言われた5人をドアの付近の座席に連れてくる。

「あと12分くらいで西田駅に着きますからね。」

吉永は、次に解放される乗客たちにそう言った。

「車掌さんは大丈夫ですか?」

突然、解放される予定のおばあさんから話しかけられた。

「えぇ、大丈夫です。降りられてからもお気をつけてくださいね。」

吉永は笑顔で返した。本当は吉永自身も今すぐにこの列車を降りたい。だが、それは皆同じだ。それに、吉永は車掌として乗客の安全を守る義務がある。

車掌の私がうろたえてはならない…。

吉永はそう思い、自分を落ち着かせた。


運転席から西田駅が見えてきた。そして、線路から見える道路沿いだけで、何台ものパトカーと救急車、そして警官、救急隊員、マスコミがいるのが見える。三石は驚きつつも、冷静にホームに止めた。さすがにホームにはマスコミはいないが、警官と救急隊員はいる。しかも警官は盾を持っている。

ホームに列車を止めると同時に、三石は左を向いた。ホーム上には、人の他に弁当と思わしき荷物も置いてある。

「犯人につぐ。弁当は用意した。人質を解放してくれ!」

駅のホームから拡声器を使って警官が呼び掛ける。西田駅はホームが広いため、電車とホーム上の人との間は4mほどあるが、窮屈さはない。

正直拡声器はいらない気がするが…。

三石がその場に似合わないまぬけな事を考えていると、男が返事を返した。

「良いだろう。先に人質を解放する。」

男がそう言うと、吉永は前よりのドアを手動で開けた。解放予定だった五人が降りていく。男は近くにいた適当な数人を指名して弁当を取りに行かせた。

弁当を全て入れ終えると、男が警官達に話しかけ始めた。

「悪いがお巡りさん。俺には目的がない。だから今次の人質解放条件はない。また後で連絡する。変な真似すんじゃねえぞ。」

「……わかった。」

警官がそう返事をすると、男はドアを閉めるように吉永に促し、三石に出発するように言った。

本来ならこの駅で乗務員が交代するのだが、この状況下ではそんなわけにはいかないだろう。少し疲れが出てきたが、事故を起こすわけにはいかない。三石は、運転席に置いていたお茶を一口飲み、吉永がドアを閉め、信号が青になったのを確認して電車を発車させた。

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