正確な前世
「鳥を見ると、
特にあのクチバシを見ると、
虫酸が走るんです。
近頃はお菓子のコ-ンを
見ても鳥肌が立つぐらいで、
鳥嫌いが、鳥のことで、
鳥肌が立つなんて、
ほんとに笑い話にも
なりませんよね。
それで、先日、テレビにも
よく出てらっしゃる、
占い師のH先生に
見ていただいたんです。
そしたら、前世がお魚で、
最後は大きな鳥に食べられて
死んだらしくて。
その記憶がクチバシを恐ろしく
させるんだそうです。
解決方法も一応、教わりました。
ショック療法って言うんですか?
動物園に行って、
自分の手でつかんだお魚を
フラミンゴに食べさせて
きなさいって。
それぐらい乗り越えなくて
どうするんですって、
すごく怒られて。
でもほんとにそれで
解決するんでしょうか?
どうも納得できないっていうのか。
なにか、違うような気がして、
今日はそれを確かめたくて
こちらに伺いました」
「なるほど、そうでしたか」
S教授は徐に頷き、
引き出しから
銀色の装置を取り出した。
S教授……
彼は中途半端な占いで
戸惑う人々を助けるために、
人の前世を正確に再現する
装置を開発していたのだった。
スイッチが入れられる……
すると、立体映像が
ぼんやり現れた。
なにやら、細いものが
くねくねしている。
二人は息をのみ、
くねくねを見つめた。
「ミミズだ……」