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TORU 史上最強の悪ガキ  作者: 神村 律子
史上最強の悪ガキ誕生編
8/28

第八章 別れの時

 アタシは何となく寂しくなっていた。

「どうしたんだよ?」

と通君が声をかけてくれた。

 アタシはハッとして、

「ううん、別に。どうもしてないよ」

 アタシは通君と美津子ちゃんを伴い、三次元世界の通君の家の前に戻ったところだった。

 夜も更けていたので、誰も外にいなかった。

「何か今思い出してみると、夢みたいな日だったなァ」

「ホントね」

 通君と美津子ちゃんのツーショットがあまりにも絵になっているのを見て、アタシは何とはなしに嫉妬してしまった。

「やっぱり2人は相思相愛なんじゃないの」

 アタシは嫌味を込めて言った。

 すると通君と美津子ちゃんはキッとアタシを睨み、

「こんな奴、そんな関係じゃないってば!」

と見事にハモって言った。

 アタシは大笑いして、

「そこまで気が合えば、大したものよ」

そんなアタシ達の声を聞きつけて、久美子ちゃん達が外に出て来た。

「お兄ちゃん! 美津子さん! エンジェルさん! 無事だったのね」

「よォ、今帰ったぜ。晩飯、遅くなったけど、大丈夫か?」

「うん!」

 久美子ちゃんは涙を拭いながら応えた。

 通君は恥ずかしそうに美津子ちゃんを見て、

「飯食ってけよ。いろいろあって、腹減ったろ?」

と声をかけた。

 美津子ちゃんは素直に頷いて、

「久美子ちゃんの料理、おいしいからね。頂くわ」

「エンジェルさんもどうぞ」

と久美子ちゃんが言ってくれた。

 アタシはヘラヘラして、

「そ、そう。ありがとう」

と応えた。

 実はもう倒れそうなくらいお腹がすいていたのだ。


 久美子ちゃんと香ちゃんは協力して、たくさん料理を作ってくれた。

 美津子ちゃんは参加していなかったが、深く追求するのは彼女の名誉にも関わるので、何も尋ねなかった。

 みんなは楽しそうに食事していたが、アタシだけが気分が乗らず、沈んでいた。

 通君達と別れるのが、何となく悲しかったから。

「さてと」

 アタシはこれ以上長居をしてますます寂しくなるのも嫌なので、立ち上がった。

 みんながアタシを見た。

「おいしかったよ、久美子ちゃん」

「ありがとう、エンジェルさん」

 アタシは通君を見て、

「いろいろ迷惑かけたね」

「そうかな? 俺は楽しかったぜ。ま、死にかけた時は焦ったけどな」

「ハハハ」

 アタシ達は外に出た。

 星がいっぱい輝いていて、綺麗な夜空だった。

「じゃあね、みんな。もう会う事もないかも知れないけど、元気でね」

「ああ。お前もな」

と通君はニッコリして言った。

 美津子ちゃんはグッと涙をこらえているが、香ちゃんと久美子ちゃんはすっかりヒクヒクしている。

「まァ、会う事もないなんて言わずに、たまには遊びに来て下さいよ。いつでも大歓迎ですよ」

とお調子者の信一君が言ってくれた。

 アタシは苦笑いをして信一君を見た。

「それじゃ」

 アタシは翼を広げた。

「あれ?」

 アタシは知らないうちに泣いていた。

 頬を伝わる涙を感じて、やっとそれがわかった。

( ダメだ、アタシ…。ダメだ… )

 アタシは心のわだかまりを振り払うように首を横に振り、通君を見た。

 美津子ちゃんはハッとしてアタシを見た。

「大好きだよ、通」

「えっ?」

 アタシは通のほっぺにキスをして、バッと飛び立った。そして、

「美津子ちゃん、今度会う時までに通とくっついてないと、アタシが通をとっちゃうぞ!」

と言った。

 すると美津子ちゃんはフフンと笑って、

「どうぞご勝手に。こんな男、いつでも連れてっちゃってよ。せいせいするわ」

「素直じゃないわね」

「大きなお世話」

 美津子ちゃんはニッコリしてアタシを見上げた。

 通君はやっと我に返って、

「こ、このヤロウ! 俺は物じゃねェんだぞ! とるとかとらねェとか、勝手に決めるな!」

と叫んだ。アタシは通君を見て、

「バーイ、通。またね」

と言うと、上空へ飛翔した。

 そんなアタシを見上げている通君を見て、

「もう、デレーッとしちゃって。嫌らしいんだから」

と美津子ちゃんが言った。

 通君はムッとして、

「何が嫌らしいだ! お前なんかより、エンジェルの方がずっといい女だぜ。あいつについて行きゃよかったよ」

「何よ、その言い草は!?」

「何だよ!?」

「やる気!?」

「まァまァ、二人共」

 香ちゃんと久美子ちゃんが美津子ちゃんを、信一君が通君を止めた。

 この2人、しばらくはこんな具合に続いて行くんだろうな。

 ま、いっか。

 とにかくアタシは、アークツールス軍に勝って、もう一度あの子達に会いに来よう。

 今はそれだけを考える事にする。

 じゃあね。

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