4日目 肝試し
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大学の、同じサークル仲間であり同級生のトモヤ、カイト、ユウの、男3人と、メイ(本名サツキ)、レイの、女2人で、海の波の音が聞こえてくる程海沿いに有る、とある廃墟に肝試しに来ていた。
小3から今までずっと同じクラスで友達である腐れ縁なトモヤと、幼馴染みのレイを、くっつけ様と言う魂胆で、初めからトモヤとレイがペアになるように仕込まれているクジ引きを、何も知らないレイに引かせた。
「レイ~くじ引き何を引いたの~?」
「3だね。誰とペアになるんだろう~メイと一緒がいいな~!」
「私もレイと一緒がいいよぉ~!」
俺とカイトとグルであるメイに、レイの引いた紙の番号をさり気なく聞いてもらい、2人が話に夢中になっている間に、トモヤに「3」と書かれている紙を渡す。
「あ……!俺も3だ!!」
トモヤの言った言葉に、レイが目を大きく開かせる。
「え?トモヤ君が?」
「あぁ。よろしくな。」
頬を赤らませながら、口元に手をそえながら驚くレイ。嬉しそうに笑を浮かべ、頭を掻きながらレイのもとに歩いていくトモヤの背中を見送り、俺は心の中で「上手くやれよ」と、応援してやった。
トモヤとレイが楽しそうに話をしている間に、素早く集まってきたメイとカイトに「1」と書かれた紙を渡す。
無事にペアが決まり早速、「1」の紙を持ったメイとカイトは廃墟に入って行った。
……ちなみに、初めから俺は1人になると決まっていた。
くじ引きなんて、最初から関係なかったのだ。
この肝試しが終わった暁には、トモヤから焼肉を奢って貰える約束をしているので、普段手が出せない、高い和牛の肉を食べまくってやる予定だ。
「……さて、では行ってくる。」
「いってら~」
トモヤが(邪魔者は早く行った行った。)という感じに、しっしっと払うように手を振っていた。
「ユウちゃん足元くらいから気をつけてね。」
しかし、レイが心配そうに俺の方に近づいてきた時
「そういえばオマエ大丈夫なん?お化け屋敷でおむら「小学生の頃の話だ!」」
トモヤは焦ったのか顔色を変えて、小学生時代の赤恥を掘り起こしてきやがった。そんなトモヤに一発、尻に蹴りを入れ、俺は廃墟に向かって走っていったが……。
絶対アイツの事だから、俺の恥ずかしい話をネタにしている事だろう。よし、ビールも3杯飲んでやる事に決めた。今日はとことん飲み食いして、レイをデートに誘えなくしてやる。
そんな事を考えながら、扉を開く。
長年潮風に触れ続けて錆びてしまっている廃墟の扉が、女性の悲鳴にも似た嫌な音を立てながらゆっくり開いた。
中に入ると、鉄の錆びた匂いとカビの臭いが鼻に霞む。すきま風すら感じない、肌に生ぬるくてジメジメしている空気が触れる。外は青白い月明かりで明るかったが、室内は重々しい闇が広がっていた。
……雰囲気ありすぎだろ。
この場所を提案してきた、トモヤのレイをおとしたいと言う本気が分かるほど、いかにも何かが潜んでいそうな場所だった。
廃墟の奥に向かって歩き出した時
「あ!ユウじゃん。」
先に入っていたカイトとメイが歩いてきた。
「お?カイトとメイか。」
俺が片手を上げて歩いていくと、カイトの腕に抱きついているメイが、何かを思い出したようで、神妙な面持ちになり口を開いた。
「そういえばユウ君、トモヤ君から聞いたんだけど……」
……ん?この話の流れ、デジャヴ。嫌な予感がする……。
「小学生の時お化け屋敷で……」
「トモヤめ!!」
カイトも頷きながら聞いていたので、どうやら俺の恥ずかしい話はトモヤによって暴露されており、学校中の皆知っているらしい。
カイトとメイと別れてからは、小走で廃墟をまわりトモヤとレイが入る時間になる前に、廃墟を出た。
「お!もらさなかったか?」
俺の顔を見て、呑気にからかい初めたトモヤの尻に蹴りを入れ
「レイ、こいつ嫌いだ。金欠になるくらい食いあさろうぜ。」
「ユウちゃん、いい子いい子。」
レイに慰めてもらった。
レイは昔から良く食べる子なので、遠慮しなかったら余裕でトモヤを金欠にしてくれるだろう。トモヤは、「よく食べる元気なところも素敵だ」と言っていたので問題ないだろうし。
尻に蹴られてからも、変態ドM野郎みたいに嬉しそうに顔をにやけさせている程浮かれたトモヤが、レイと一緒に廃墟に入って行った。
「……なぁ、カイトどこに行った?」
カイトの姿が何処にもなかったのでメイに尋ねた。
「え?そういえば居ないわね。……脅かしに行ったんじゃない?」
……脅かしに行ったのか。
「俺も行ってくる!!」
「へ?ちょっ…アタシを1人にするの!?」
「行ってくる!!」
走って廃墟に向かう中、溜息が聞こえてきた気がしたが気にしない。小学生の頃の汚点を暴露されていた事を知った俺は、恋するトモヤに応援していた気持ちなんかとっくに無くなり、トモヤに同じ恥をかかせようという考えで頭がいっぱいだった。
俺の人生の汚点を広げたトモヤには、レイの目の前で恥をかいてもらおう。とりあえず俺と同じくらい恥ずかしみ苦しむが良い!目には目を、歯には歯で…ハンニバル法典でな。
なんて考えて黒い笑みを浮かべながら。
魚の腐った臭いにも似た悪臭を感じながら、息を潜め廃墟を歩く。
二度目なので、道に迷うことなく真っ直ぐ歩く事ができ、予想していたよりも早く、トモヤとレイの背後を見付けた。
それと同時に、奥の方に人影を見つけた。
真っ黒で分からないが、そいつがカイトだろうと想像しながら、トモヤの方に石を投げたりして脅かしてやる。
(あ……やべ…)投げた石が、勢い良くトモヤの靴向かって飛んでいった。
予想していた通り、石はトモヤの靴に軽い音を立ててぶつかった。先程から聞こえてくる規格外の小石の転がる音に怯え、心配しているレイにしがみつき
「うぅ…わっ……ひっ…」
トモヤは情けない声を出していた。
(……。)
トモヤの悲鳴を押し殺した声を聞いて、やる気が萎えた俺は
「トモヤ君大丈夫?……もう戻ろうか?」
と、めんどくさそうに眉を顰めながら尋ねるレイに「あとは任せた」と心の中で呟き、物陰に隠れた。
レイに支えられながら、廃墟を出て行ったのを確認してから、カイトがまだ奥の方で隠れているのを横目で認識しながら、故意に、出口の扉に鍵をかけた。
トモヤが調子乗っていたら閉じ込めてやろうと考えてて持ってきた鍵が無駄にならなくてよかった。出れないと気付いたカイトは、どう動ごくだろうか?
正直言って、2人は男女ペアでノロケやがって。と、気に入らなかった。正直今考えるとガキみたいな嫌がらせだと呆れてくるが
(ふはは!!せいぜいパニックになればいい!!10分後くらいたったら開けてやるよ。ざまぁ!!)
俺なりに考えた嫌がらせなので、何も言わないでおくれ。凹むから。
鼻歌を歌いながら車の方へ向かうと、四人が遅いぞ。置いてくぞ。と、こっちに声を掛けていた。
俺が戸惑いながら、メイにカイトの事を尋ねると、カイトは俺がそっちに行ってすぐ帰ってきていた事が判明した。
確かに少しの間、2人を脅かしに行っていたらしいが、直ぐにトイレに行きたくなって、廃墟を出て用を済ましたら、メイのところへ帰ってきていたらしい。
……じゃあ、あの人影はいったい誰のものだったのだろうか?気のせいだったのだろうか?
そう思って廃墟の方に振り返ったとき、廃墟にいた時には全く聞こえなかった波の音がする中、……ドンドンッドン…と、鉄で出来ていた扉を叩く音が鳴り響いた。
俺達は不気味に感じ、急いで車に乗り込んでその場を離れた。
そしてその日は約束通り焼肉を楽しみ、ほろ酔いの中ふと思い出したのだが、窓らしきものを見かけなかった。だから、空気が澱んで匂いがこもっていても変じゃないし、暗かったのも頷ける。
あれが本当に人間で、俺が鍵を閉めたせいで出れなくなっているとしたらどうしよう。そう思って背筋が冷えたが、今日は酒が入っているので、明日行って鍵を開けて帰ろうと考えた。
そして次の日(土曜日)昼頃、鍵を開けてから、どんな人が入っていたのか気になったので、忍び足しながら廃墟を歩いてみた。
人が出る事が出来ないであろう、人の頭くらいの大きさのかすかに汚れた窓から差し込む光で、薄暗いが足元から壁の隅まで見渡せる。
自分の足音が反響しているが、廃墟の目の前にあるはずの海の波の音すら聞こえない。
相変わらず一定の温度を保ってジメジメした室内。悪臭がひどいが、人の気配もしない……静かだ。
そして、昨日トモヤに向かって石を投げていたポジションがある部屋に入ったとき、黒っぽく変色している縄がかかっているのが目に入った。カイトが居ると思っていた所だ。
天井にある木に括られていた縄で出来た影が、人の顔の部分と勘違いしただけのようだ。
「んわっ!?ととと…………」
奥に進もうと歩き出した時、何かに躓いて転びそうになった。そして、何気なく足元を見て、息が詰まる。
そこには骨格標本の頭蓋骨に似た白ではなく黒っぽい骨があった。その骨の斜め奥の上には、さっきのロープが有り、ロープの下には……頭のない体が無造作に横たわっていた。
それから俺は、ゴミとかに足を引っ掛け転んで転がったりしながら、何とか廃墟を抜け出し、車の中で息を整えながら警察に通報した。
遺体のが身に付けてた装飾品や、近くに落ちてた物等で個人が特定され、見つけた俺は、遺族の人に感謝されたりしたが。
遺体が見つかったと知ったトモヤが、重々しく口を開いた。
「おまえ、あの時「連れてけ」と言ってた?」
「……は?なんの事だ?」
身の覚えのない事を聞かれ眉を顰めると、トモヤの顔がみるみる白くなっていく。
「廃墟のおくに着いたとき、ずっと「連れてけ」と聞こえてきていたんだよ。
レイに聞いても「聞こえないよ。何のこと?」と言ってるし
本物かと思って怯えていたら、足元に何かがぶつかってきてビビっていたが
廃墟を出たあとにおまえが出てきたから、レイとグルになって俺を脅かしたんだと思って安心したんだ。」
「……まじか。」
「お前じゃないと言ったら……誰なんだ?」
……そんな感じで俺達は数日間怯えていたが、それから何の呪いやらは何もなく、結局トモヤとレイは付き合うことなかったが、卒業し、就職し、現在も俺達は、平和な日々を送っている。
少し変わった事と言ったら、先週に俺が結婚した事くらいかな。ざまぁみろ。
……なんて、子供っぽいこと言ってられないか。
フィクションです。




