表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/45

37日目 ひとりかくれんぼやってみました。

3,341文字

皆は、一人かくれんほというものを知っているだろうか?

知らない人のために簡単に説明しよう。一人かくれんぼと言うのは、名前の通り1人でやらなきゃいけない遊びだ。一番身近で簡単な交霊術と言えるものだと、俺は思ってる。



包丁と、汚らしくなった使用済みの人形を、お風呂場から回収しながら俺は


「何も起こんねぇ……つまんねぇな。」


大きな溜息を吐き捨てながら、そう言った。

撮影途中、米の落ちるような固くて小さな物が落ちる音は聞こえてきたりしたので、少々期待していたのだが、結果は惨敗。その音以外は聞こえて来なかったし、人形が俺を殺しに来たりとかは無かった。


他の人が撮影したのと同じような事しか映せなかったと思うので、もう少しホラーゲームのような展開を期待していた俺は、正直ガッカリしていた。


(こんなつまらない動画を投稿しても、期待には応えられて無いと思うし、再生数は上がらないだろう。)そう思って気乗りしないのだが、次回投稿する企画は【一人かくれんぼ】と、皆に伝えてしまっていたので、撮影したものは取り敢えず消さず、後で編集したら投稿しようと考えた。


しかし現時刻は、良い子は眠る丑満時。テンションが下がっていて、なおかつ眠くて身体がだるい俺は、今すぐ編集しようなんて考える気力すら無かった。


なので、包丁を棚にしまってから、ベットは企画書で埋もれてて汚いのでソファーに寝転んで寝たのでした。


しかし、それから暫くすると、机の上でうるさく鳴っているスマホの呼び出し音で目が覚める。スマホの画面に【赤坂あかさか】と表示されてるのを見て、つい舌打ちをしてしまう。


何とも最悪な寝覚めだ。どうせ起きるんだったら、可愛い女の子のお膝もととか、裸エプロンで起こしてくれるとかの方が良いのに、何故男から掛けられた電話によって起きなきゃならないのだ。なんて、内心文句言いまくりながら、電話に出る。


「はぁ……はい、なんか用?」

『もしもし?今お前ん家にいんだけど、開けろよ。編集すんぞ。』

「はあ、もうそんな時間なのか……?」


そう言って、俺は目をこすりながら、スマホに表示されてる時間を確認する。


『え?6:30だけど?』


動画を撮り終わって、寝た時間から3時間しか経ってなかった。……つまり、AM6:30だった。

(失礼だろ、こんな早くに家に来るなんて。てか、お前早起きだな!)と、心の中でツッコミを入れてると


『てか、早く開けろよ。開けてくれなきゃ合鍵作るんぞ?』


なんて、気持ち悪い脅しが聞こえてきたので、無理やり起こされて、虫の居所が悪い俺は「……お前に合鍵なんて有り得ない。キモイ、〇ね。」と、言ってから電話を切って、再び寝ようとこころみた。



「よし、じゃあ今から編集すっか!」

「はいはい」


あの気色悪い電話を切ってから、30分が経っていた。

あれから赤坂は、玄関の前でずっとスタンバってて、低い声で「ケ〜ンジ君、やりま〜しょうー」と何度も言ってくるもんだから、早起きのオバチャンに不審者だと勘違いされて通報されたら困ると思った俺は、仕方(・・・)なく(・・)家に入れてやったのだ。



「おいケンジ(主人公)、突っ立ってないで早く来いよ!」

「はいはい」


赤坂と俺は、撮った動画を編集する為に観はじめる。

カップラーメンとポテチ食べながら観ていると、やっぱり起こったのは良くある現象の1つ、米の音がするだけ。それ以外は本当に何も無かった。


「やっぱ何もねぇし、つまらないな。」

「あぁケンジ、お前のリアクションもな。」


時間になるまで、タンスの中で座ってボケーッとしていた俺に赤坂は指摘してきたが、俺は事実なので否定出来ず無視をした。



編集された動画は結局何も起こらなかった。

投稿を終え、2人でゲーム等で遊んでいたら、お昼になったので昼食を食べ始める。

黙々と昼食を食べるだけだとつまんないので、投稿した動画を見た人達のコメントを確認する事にした。


はじめの辺りは皆、『パチパチって言ってる』『米の音か?』とか、普通のコメントだった。しかし、時間が進むにつれて皆のコメントがおかしくなっている。


『いま、男の声聞こえたよな?』『ちょ、これグロくね?』『やめろよな〜風呂場に血糊とか、ケンケンとリュウリュウ本気出しすぎだろwww』


全く身に覚えのないコメントに、俺と赤坂は戸惑った。


「血糊?血糊ってなんで?」

「グロシーンって、ケンジが人形さす所かね?」


俺は皆のコメントに少し寒気を感じ「と、取り敢えず、動画再生してみるか。」と、言いながら、再生ボタンを押した。


すると、『はいどうも〜。今回は罰ゲームとして、ひとりかく……』と、やる気の無さそうな俺が、人形を右手に持って説明している姿が映った。編集時と同じように、淡々と作業を説明しながらこなす姿が映っている。


「まず、タンスに隠れて、普通に米の音がするシーンにとばすぞ。」

「おう、頼む。」



『はぁ……俺、こう言うの苦手なんだよな……めんどくせぇ。』

そう、面倒くさそうに言っている俺の姿が映った。表情には恐怖というものは無く、ただただ眠そうだった。そこに、固くて軽くて小さいものが沢山落ちてるような音が聞こえてくる。


『あぁ、はいはい。米の音ね。お疲れ様です。』

そう言って、それ以外は何も言わず、ただ大きな欠伸をしたのでした。

そこで場面が変わる。今回はカメラを4つ使用した。リビング、風呂場、廊下、と同時撮影していたので、場面は4つある。編集によって、今回はその中の1つ、リビングが映し出された。しかし、米が落ちてるようなものは一切映ってない。様に音だけだ。


その時のコメントの中に、『いま、男の声聞こえたよな?』と書かれているのだが……


「とくに変わったのは聞こえんな。」

「俺の声しか聞こえねぇな。次頼む」

「ほいほい」


次は『ちょ、これグロくね?』と、書かれたところで再生してみる。すると、そこには飽きて寝てしまってた俺の姿が映し出されていた。


「……これのどこがグロい?」

「もしかしたら、過ぎてんのかね?少し戻してみるわ」


そう言って、赤坂が5分前に戻して再び再生した。すると、そこには廊下のシーンが映し出されていた。


「……なんだ?コレ」


映し出されたのは、ただの何の変哲のないはずの廊下。しかし、場面が俺の顔に変わる直前、編集作業中にも確認されていなかった物が、そこには映し出されていた。


「赤坂、ちょっと速度落としてくれ。」

「スローモーションだな?ほれ」


俺の顔に変わる直前、2秒前くらいの時に肌色の何かが落ちてくるのが見えてたのだが、早すぎてさっきまでは分からなかった。

赤坂がスローモーションにしてもらったので、先ほど一瞬しか見えなかった物が、ゆっくり見えるようになった。


「あ、あたま?」


人の頭くらいの大きさのものが落ちてるのだが、相変わらず米の音しか聞こえてなかった。


次はお風呂のシーンにとばして再生し始めた。

『やめろよな〜風呂場に血糊とか、ケンケンとリュウリュウ本気出しすぎだろwww』と、コメントで来ていた所だ。


塩水を人形に掛けている俺の顔が移されているのだが、背後に映る天井から徐々に黒い液体が染み出てきて、壁を伝ってるのが見えた。


「俺の勝ち」と3回言って作業が終わったあと、俺は道具を片付けるため、電気をつける。

すると、真っ赤な液体で壁が赤く染まっていた。


包丁と、汚らしくなった使用済みの人形を、お風呂場から出ていったシーンで、今回の動画は終了したのを見て、俺と赤坂は顔を見合わす。


編集した時もなかった映像。誰かが勝手に改造したんじゃないか?と、疑っていると、いつの間にかキッチンに行っていた赤坂が、顔面蒼白で俺に声を掛けてきた。


「おい、ケンジ……」

「……なんだよ」


ホラーが得意。とか普段言っていて、ホラー映画を良く見てる赤坂が戸惑っている姿を見て、俺の不安は増していく。


「人形燃やせよ……。」

「あ……忘れてた。」


通販で安く仕入れた、現在は使用済みで汚くなってる不気味な人形。燃やさなくても、特に何もないと思うが、赤坂がうるさいので、後日ちゃんと燃やして捨てた。


それからも、たまに俺がやった一人かくれんぼの動画に、コメントが来るのだが、身に覚えのないものが写っていたり、謎の声が聞こえてくる時があるらしい。

フィクションです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ